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年収350万円、子どもができて慌てる契約ライターの「マイルド貧困」
https://diamond.jp/articles/-/174992
2018.7.18 黒田透:ライター ダイヤモンド・オンライン
格差や貧困問題の是正が放置されているうちに、「アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)」が900万人を突破、日本は「階級社会」への道を突き進んでいる。中でも「中間階級」が崩壊、「新たな貧困層」が生まれてきた。それは、生活に困窮するほどではなく、好きなことに多少のお金を掛けることはできるものの、上の階級へ這い上がることができず、将来に希望が持てない「マイルド貧困」とも呼べる新たな階級だ。そこでDOL特集「『マイルド貧困』の絶望」第2回は、結婚して子どもができたために、今後の人生を迷っている契約ライターを追った。(ライター 黒田透)
今のままでいいのか悩む
出版社の契約ライター
国末融さん(36歳、仮名)は、都内の出版社で雑誌の契約ライターとして勤務する。既に5年近く、契約ライターとして仕事をしているが、この1年で取り巻く環境が大きく変わり、今のままでいいのか悩んでいる。
「仕事内容は、自分で提案した企画記事を執筆したり、担当の編集者から依頼のあったテーマを取材して記事にしたりします。また、不定期発行のムック本も年間数冊関わっています」(国末さん)
そんな国末さんの収入はこんな感じだという。
年収は350万〜400万円
業務委託で定職に就けたと喜ぶ
「現在は、年収ベースでいうと350万〜400万円。業務委託契約なので、残業代やボーナスなどは出ません。ここから、国民年金、社会保険料、住民税など税金が引かれるので、月単位でいうと実質手取り22万〜23万円くらいでしょうか。業務委託契約なので、他の媒体の仕事も受けることはできるのですが、仕事が忙しくてそんな余裕はないですね」
31歳の時、知人の紹介で、ある出版社の雑誌編集部に関わり始めた。当初は、提案したテーマで記事を書き、採用された場合だけお金を受け取る形だった。1本当たり1万6000円で、週に2〜3本書くことこともあれば、採用されず全く書けない週もあったという。収入の浮き沈みが激しい厳しい世界だ。
国末さんは、1年間こんな形で働いた後、業務委託契約の提案を受け、受け入れた。
「編集部から、ムック本の制作で人が足りなくなったので手伝ってほしいと言われ、契約しました。こちらも“定職”に就けたと、願ったり叶ったりだと思いました。また、政治、経済、事件、スポーツ、芸能、生活とあらゆる取材をする機会がありますし、有名な方とお会いする機会もあるので、仕事自体は楽しいです」
業務委託契約となれば、書いた記事の本数で給料が左右されるわけではなく、会社と取り決めた年間の固定給が月割りで銀行口座に振り込まれる。一見、会社の給与を受け取っている感覚に近い。だから国末さんが“定職”と感じるのは無理もない。
だが、現実には業務委託契約なので、ボーナスが出るわけでもない。毎年契約を更新し、その都度、年棒を交渉する。編集部の責任者が、1年間の働きぶりがよかったと判断すれば年棒は上がるし、期待に沿えていないと判断されれば年棒は下がってしまう。
さらに大変なのは、評価基準がそこまで明確ではないこと。つまり、気に入られるかどうかも重要な要素だということだ。となると、たとえどんな無茶な依頼でも断りにくい。
本来、国末さんのような契約ライターは正社員ではないので、自分が持つ人脈や知識の中で記事化するのが難しいと思った場合は断ることができる。しかし、1回でも断ってしまうと、次の仕事の依頼がこなくなるのではないかと不安に感じ、結局は受けざるを得ないのが実態だ。その結果、それなりの記事はできるかもしれないが、浅く薄っぺらいものになってしまう可能性も高く、最終的には誰も得しないにもかかわらずだ。
実家暮らしで甘えて
30歳で貯金も人生設計もなし
ライターになるまで、国末さんはどんな道を歩んできたのか。
国末さんは都内の大学を卒業後、地方にあるメーカーの工場に就職した。ただ、仕事環境がブラックすぎて1年で退職。その後、実家のある都内に戻り、バイト生活を始めた。なぜバイト生活を選んだかというと、大学時代から一緒にやっていたバンド仲間たちと、プロのミュージシャンを目指そうという話になったからだ。バイトをしながら、日々スタジオを借りて練習し、ライブをするという生活を続けていた。
「苦しいとか考えてなかったですね。それにバイトは、保険会社のテレフォンオペレーターだったんですが、夜勤だったこともあって時給が高く、週3〜4日ペースで月に25万円以上は稼いでいました。稼ぎの大半はスタジオ代で消えていきましたが。ただ、年数を重ねていくにつれ、仲間内で『本気でプロになりたい派』と、『趣味で楽しむ程度でいい派』に分かれてしまい、結局自然消滅してしまいました。そんなフラフラした生活を見かねて、知人がライターとして声をかけてくれたのです。確かに30歳にもなって貯金はなく、人生設計も特になかった。実家暮らしということもあって、親に甘えていたんです」
業務委託で契約ライターとして働き始めた国末さんだが、仕事の面白さを感じる半面、正社員たちとの格差や壁を感じることもあった。
「編集部に自分の席があり、正社員と肩を並べて仕事をしていますが、同じ仕事をしていても収入が倍以上違うことを知りました。残業することも多いのに、残業代が出るわけでもありませんし。また、出版社のデータベースや資料を調べる時など、正社員は自由にアクセスできても、私のような立場だとアクセス制限されます。初めてそれを知った時は悲しくなりました」
待遇や職場環境が悪いとわかれば、その職場を離れてもいいと思うのだが、続けてきてしまったのには国末さんの育った環境もある。
「自分で言うのもなんですが、父親が大企業で働いていたこともあって、中流家庭で育ちました。小学校から大学までずっと私立でしたし。だからなのか、ハングリー精神があまりないんです。出世したいという欲も、お金を稼ぎたいという欲も、いい女を抱きたいという欲もなかった」
年齢に対しての収入の低さや、契約ライターという不安定な立場を考えると、貧困層に足を踏み入れつつあると言わざるを得ないが、実家暮らしであったため危機感はあまり感じなかったという。
半年前に結婚して子どももでき
今の状況を変えたいと考え始める
しかし、そんな国末さんも変わらざるを得ない状況になった。半年ほど前に結婚し、さらに奥さんが妊娠中なのだ。それまでは自分1人が生きていければよかったが、これからは家族3人の生活になる。
「守るべきものができて、さすがに意識が変わりました。これまでは、収入が少なくてもどうにかなるという楽観的な考えを持っていましたが、子どもができるとなると、少しでも収入があった方がいいし、会社が半分払ってくれる厚生年金に加入できるなど、さまざまな保証で守られている正社員の方がいいと考えるようになりました。もっといえば、妻も実は契約社員でして、育休や産休が取れないことも初めて知りました」
国末さんが指摘するように、正社員と契約ライター(契約社員)では、例え毎日同じ職場で同じ時間働こうが、会社から受けられる保証が違う。例えば、国末さんが契約している出版社の正社員は、健康診断を年間2回受けることができる。しかし、国末さんは受けることができない。自分で予約し、1万円以上支払わないと健康診断さえ受けられないのだ。
「結婚し、生まれてくる子どものためにも、今のような状況を変えたいと思い始めています」
こうした状況は、なにも契約ライターだけではない。派遣社員や契約社員に加え、パートやアルバイトといった非正規労働者は、2017年、2133万人となり過去最多を更新している。人手不足の折、非正規とはいえ仕事はあるため、生活自体は困らない。だが、結婚や子どもが生まれるといったライフイベントに遭ったとき、それまでの収入では到底足りない現状が待ち受けている。そうした「マイルド貧困」たちの将来は視界不良と言える。
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