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日本のインフレ率が世界で段違いに低い5つの理由
https://diamond.jp/articles/-/174379
2018.7.12 加藤 出:東短リサーチ代表取締役社長 ダイヤモンド・オンライン
インフレ率を高めるために導入した超金融緩和策だが、低金利環境で住宅が増加。家賃が上がりにくくなって物価上昇にブレーキをかけるという皮肉な結果を生んでいる(写真はイメージ) Photo:DW
米国2.2%、ドイツ1.5%、日本0.1%。これらは5月のコアインフレ率(食料とエネルギーを除いた消費者物価指数の前年同月比)を主要国で比較したものである。
日本だけでなく多くの先進国で、景気が良い割に物価が過熱しない状況が続いている。以前なら失業率がこんなに低下すれば、インフレ率は高騰していた。グローバリゼーションやデジタル革命がそれを抑制している面がある。
とはいえ、冒頭で見たように日本のインフレ率は海外より一段と低い。過去5年以上の間、世界で最も大胆な超金融緩和策を実施してきたのは日本銀行だ。それなのになぜなのだろうか。推察される要因を五つ挙げてみよう。
第一に、物価統計に非常に大きな影響を与える家賃が、米国.欧州と日本とで大きく異なっている。5月の前年同月比を見ると、米国は3.6%上昇、ドイツは1.6%上昇だが、日本は0.2%の下落だ。この値が弱いと、持ち家の人も家賃を払っていると見なす計算上の家賃(帰属家賃)も弱くなってしまう。
それも含めた家賃全体は、冒頭で見た「食料とエネルギーを除いた消費者物価指数」において、日本では27%もの比率を占める。実は米国の同インフレ率から家賃関連を除くと、5月の上昇率は1.3%に低下する。つまり、実は家賃の顕著な上昇がなければ、米国でもインフレ率は低いのである。
集計方法が日本の家賃を弱く見せている面もややある。しかし、根本的には超低金利環境によって、人口は減少しているのに住宅が増加している点が家賃を上がりにくくしている。ドイツは難民・移民の流入等もあって、2035年まで人口は増加するようだ。英ナイトフランク社の集計では、昨年世界で一番住宅価格が上昇した都市はドイツのベルリンで、トップ10にドイツの3都市が入っていた。
第二に、欧米では公共料金が毎年しっかりと値上げされる。日本では水道事業など公共サービスが赤字でも地方交付税交付金で事実上補填されるが、米国やドイツの地方政府は安易に赤字を出せない。
鉄道など公共交通機関の料金も、5月の前年同月比は米国で2.5%上昇、ドイツで2.6%上昇だが、日本はゼロ%。日本と違って海外では交通機関のストライキが多く、それで賃上げが決まるとやがて料金に転嫁されることが背景にある。
第三に、超金融緩和策の影響で日本の銀行の貸出金利は非常に低いが、それが小売店や飲食店の厳しい価格競争を持続させている。借り入れコストが低ければ損益分岐点も下がり、収益性が低くても出店攻勢を掛けてくるライバルが後を絶たない。
第四に、イノベーションで収益性を高めるよりも、競争激烈な「レッドオーシャン」でコストカットにまい進する企業が多いことも、物価を上がりにくくしている。
第五に、特に欧州では物価が上がると、労働組合の交渉によって翌年の賃金は最低でもインフレ率より上昇する。そういった慣行があれば、インフレをさほど恐れないでも済む。しかし、今の日本では持続的な賃金上昇に自信を持てる人は少ない。インフレ率が一時的にでも上昇すると、それは将来不安を強め、消費を慎重化させてしまう。
日銀は7月末に公表予定のインフレ率予想を下方修正するもようだが、今後噴き出す恐れがある超金融緩和策の副作用とのバランスの取り方が大きな課題となる。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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