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「定年後に終わる人」と「定年後から始まる人」の、ほんの少しの差 「薄く広い人脈」を作れますか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56369
2018.07.10 清水 計宏 清水メディア戦略研究所 代表取締役 現代ビジネス
定年後に「終わる人」と「始まる人」
同窓会などで何十年ぶりに学生時代の知人・友人に会うと、その老け方の違いにびっくりすることがある。
充実して恵まれた生活を楽しんでいる人は至って若く見えるが、仕事や家庭に不満を抱き不遇な時代を過ごした人はすっかり老け込んでしまって痛々しくさえある。
多くの会社・団体勤めをしてきた人にとって、定年後の生活も人によって明暗を分ける。会社員であれば定年は避けて通れない。それは第二、第三の人生への関門であり、通過儀礼でもある。
オランダの保険大手のエイゴン(AEGN.AS)が2017年7月に発表した「定年退職に関する意識調査」(SuccessfulRetirement-HealthyAgingandFinancialSecurity)によると、定年退職準備指標が日本は15カ国中で4.7(世界平均5.92)と最下位となり、定年に向けた準備が最も整っていない国であることが分かった。
ちなみに、首位はインド、2位は米国、3位はブラジルだった。
日本は、老後の準備をする気持ちが他国よりも薄いということになる。これには、「嫌なことを先送りしたい」「お茶を濁したい」という気持ちが働いているのかもしれない。
定年後(約60歳)から75歳までは「黄金の15年」ともいわれる。こうした日々を豊かで有意義に過ごすか、それとも退屈で寂しく迎えるかは、定年を迎えるずっと前からの覚悟と準備が必要だということになる。
その明暗を分けるものは何か? 当然のことながら、在職中の仕事の仕方や人間関係の在り方が大きく作用する。何十年間の社会人として生きざまが反映することになる。
個人的な話で恐縮だが、私は海外の企業視察や国際見本市の調査を長年にわたって実施し、3000人を超すビジネスパーソンと1カ月のうち1週間から12日間ほど行動をともにしてきた。
その人とのつながりをもとに、ITやIoT、AI(人工知能)、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)といった先端テクノロジー関係のセミナーを月例で約200回実施しており、すでに17年目になる。その中で、多くの企業人と付き合い、定年前後の人生もあまた見てきた。
内館牧子のベストセラー小説を映画化した『終わった人』が話題となったが、私が知り合った企業人でも、まさに茫然自失して「終わる人」もいるが、夢の実現に向けて新しい歩を進める「始める人」もいる。
定年を機に第二の職場で、心機一転“新しい自分”となり活躍を期する人も多い。過去の自分は、現在の自分からすればいわば"別人"のようでもある。
ただし、世間はそうは見てくれない。これまで関係を持った企業や人は、あなたがどんな人なのかを見定めてしまっていたりする。
全く新しい職に就くにしても、それまでの仕事に対する取り組み方や態度が出てしまう。いったんポストから離れたり、退職して裁量や人事権がなくなったりすると、手のひらを返すように態度を一変させる相手先は少なくなく愕然とすることがある。
具体的なケースを紹介しよう。
悲しき中小いじめ
某大手電機メーカー系のシステム会社に勤めるM氏は、大手企業や公共機関向けに、各種Webサイトの構築のほか、予約・決済、受発注・顧客管理、決済といった業務系システム開発を担う仕事に就いてきた。
現場のリーダーをしていたとき、能力のある部下に恵まれ、納品したシステムが"ベストイノベーション賞"を受賞するなどして、手腕を認められたりした。
だが、得意先企業とサポート体制でトラブルを起こしたことがきっかけで、いったん地方に左遷された後、何年かぶりで本社に戻った。その頃から下請けや仕入れ先をいびるようになった。
課長や担当部長をしていたとき、ソフト開発の不具合や仕様書の難点を見つけては、下請け企業の責任者を呼びだし、
「お前の給料はどこから出ているのか分かるだろう。こりゃあ賠償ものだよ。しっかり納期までに言った通りにやらないと支払いはできないよ」
などと脅すようにいびった。
部下が仮発注した金額に不満があると、自ら値切り交渉をして、利益が出るか出ないくらいのギリギリの金額で発注することもよくあった。
下請け企業は、取引の維持と売上目標達成のため、赤字覚悟で仕事を受けることもあった。弱い立場の企業に手厳しくても、親会社や大手企業との取引にはおおかた甘かった。
販促やイベント関連のカタログ、パンフレットを発注する小規模の印刷業者にも難癖をつけて値引きを迫った。
M氏は55歳で管理職定年を迎えて、主査という部下のない閑職に就いた後、定年を間近にして再就職先を見つけることに駆けずり回るようになった。
下請け企業の中で中堅の企業から順に打診していったが、「いまはリストラをしていて、そんな余裕はありませんよ」などと、体よく断られた。
どうにか小規模のソフト会社1社が引っかかった。給料を打診されたとき、「50万円といいたいが、40万円以上であれば…」と要望して苦笑された。
「ウチのようなところは、大手から手厳しく値切られますからね。月に13万円以上は出せませんよ。それからトイレ掃除はできますか?」などと意趣返しされて絶句した。
結局、就職情報サイトで見つけた企業になんとか採用されたものの、1年もしないうちに解雇された。前職で働いていた頃に部門として受賞した盾やトロフィーを一人で手にした写真を持ち歩き、人に自慢げに見せながら愚痴を語ることが多くなった。
発注金額の値引き要求は、担当者の給料と評価が下がらない大企業の責任者に対してすべきであり、中小零細には気をかけてやるべきである。
低すぎるときは、「これで大丈夫か」と声をかけてやるくらいの気配りがあってもいい。仕入れや資材調達で下請け業者をいじめ続けると因果応報が待っている。
別のF氏は、大手旅行会社で、官公庁や議員、公共企業向けに海外ツアーを企画・立案・実施していた。担当課長で定年を迎えた。
現場の責任者のとき、目標を達成しない部下の帰社を許さず、訪問件数とテレコールが足りないからだと叱り、スパルタ営業術を徹底した。
弱い立場の人との約束はよくドタキャンもした。セクハラの傾向があり、すれ違いざまに女性の尻や胸にさわることもあった。
気に入らない部下にはパワハラを繰りかえし、なかには失踪した人までいる。退職後は、小さな旅行会社を起業したものの軌道に乗らず、保険や羽毛布団のセールスをしたあとに、妻と離婚して独居生活に入った。
逆にこれは成功したケース。
生活雑貨用品メーカーで執行役員まで上り詰めて定年退職したE氏は、在職時代に「あなたが失敗したら私が責任を取るから、とにかく思い切りやってください」と部下を守り、ちょっと他の人と色合いの違う意見を言う人に対して
「あなたの考え方はいつも面白いなぁ。次は、それをどうやって実現させるかを考えてくれますか。まず十の方法を一週間で検討してください」
と励ました。
イベントの受付をした女性社員にも「ご苦労さま。受付の応対がいいって褒められたよ。ありがとう」などとこまめに声をかけた。任せられた組織内ではコミュニケーションが促され、とても風通しがよかった。
下請けに対しても、「これでは利益が出ないでしょ。ちゃんとあなたの給料が出る金額でかまわないですよ」と中小零細には配慮した。
その一方で大手取引先の責任者に対しては粘り強く価格交渉をした。他の部門でくすぶっていた人でもしっかり使いものになる人材にするので、「育てのE」といわれるほどだった。定年退職後は起業して、管理職の教育を請け負うビジネスを軌道に乗せた。
テクロノジーの時代でも変わらず大切なこと
江戸時代に『折たく柴の記』を著した新井白石は、「才あるものは徳あらず。徳あるものは才あらず。真材誠に得がたし」としみじみ記している。
頭のいい人は案外と多いものだが、人間的魅力で人を引きつけられる徳のある人は意外と少ない。テクノロジーが発達していくと、単に頭がいい(インテリジェント)だけなら、AI(人工知能)で十分ということになりかねない。
某企業の管理職がキックオフの挨拶に立ち、「企業幹部から女子社員まで全社一丸となって目標を達成しよう」とシュプレヒコールを上げて、女性社員からは顰蹙をかった。
女子を最下位に見ている心理が表れていたからだ。上から目線でいると、下の立場にいる人の気持ちを察し損ねることがある。
また、とかく巨大な本社ビルが完成した後に入社した社員は小粒になりがちだといわれる。企業で人が着実に成長するときには企業も成長しているが、逆に企業が安定すると社員の発想も小さくなりがちだ。
S字曲線を繰り返しながら成長を続ければ、0から1を生み出せる人たちを輩出する。1から5、10、20へとする術も体得することになる。
会社の規模が大きくなり、その看板やブランド、ポストを背にしながら小さな歯車として仕事をするようになると、0から1を生み出すクリエイティビティや発想力、奮発力が不足しがちになる。
大企業になると、企業戦略や経営手法がシステム化され、100を103、105、110に増やすことは、さほど難しいことではなくなる。これを自分の実力だと勘違いする人もいる。
それに加えて、企業の中で代わり映えのしないルーティーンワークや忙しいばかりの業務に長く携わっていると、精神的に磨り減ってきて、しだいに楽に生きようと思いがちになる。
そうなると人間的に成長することが難しくなり、周りの人たちに生気を伝えられなくなり、機運も衰えがちになる。
大企業のポストや有名ブランドを後ろ盾に、権限・権威を笠に着て生きて来た人は、組織から見放されると無力になりがちである。というのも、自己のブランディングはほぼゼロに等しいからだ。
自立・起業したければ「薄く広い人脈」の方が役立つ
さて、定年を迎えて、どのような人脈作りをした方がいいのか。
勤務していた会社内の人間関係はいったん退職したら、しばらく余韻は残るものの、あまり使いものにはならない。また、親しくしている友人を当てにすると、一緒に仕事をするうちに友人との間が険悪になり袂を分かつことにもなりかねない。
親しい間柄は意外と利害関係には向かないのだ。かえって薄く広い人間関係がものをいったりする。自営や起業で再出発しようと思っている人は、業界を超えて薄く人脈を広げておいた方がいいかもしれない。
最近では、副業を容認し、さらに奨励する企業も増えている。企業人として成功を諦めた人は、しだいに愚痴が増え、自立・自発性も失われがちになる。
副業は、自らの実力を試し、情熱を取り戻し、人間関係を広げる上でも歓迎すべきだろう。ただし、金儲けを優先して疲労を貯めていけば、体調を崩すこともなりかねない。
副業は、自らのブランディングを図る「自業」ととらえた方がいい。
夢の実現に近づいたり、社会とのつながりを太くして自らの存在と価値を見直したりすることは、本業にもプラスになるはずである。多くの人に自らを知ってもらう機会にもなり、そんな自立心や対外的な関係が定年後にも役立つはずである。
総務省や国立社会保障・人口問題研究所の調査を元にすると、国内では役員を除く雇用者では毎年60歳代で定年を迎える人は約70万人いる。定年後も約8割は就業を希望しており、働けるうち働く傾向が強い。
定年後に、思い描いていたことを一つひとつ実現していき順風に恵まれる人もいれば、長く連れ添った女房にも愛想を尽かされ、コミュニティから離れて居場所がなくなって孤独の中で寂しく過ごす人もいる。
人の価値を貶めても、自身を偉く見せることにはならない。逆に自らの価値も貶めることになる。互いに価値を認め合ってこそ、人とのつながりは落ち着く。
部下を守らずに、上の言いなりになり、職務上の地位や立場を背景に弱い取引先を値切り倒したり、嫌がらせをしてきた人には暗澹とした定年後が待っているかもしれない。
自立・自活できるかどうかの判断も、最後は自身が信じられるかにかかっている。逆に言えば、それは人から信頼されてきたかの裏返しでもある。
人は与えた分しか、得ることはできない。在職中にいかに人に多くを与えてきたか、どれだけの人を育ててきたかが問われる。
まさに"Give&Take"であり、決して"Take&Give"ではない。仕事のできる人とは人の力を集められ、それを自らの力にもできる人である。
人から奪ってきた人は奪い返されると覚悟しておいた方がいい。定年後の明暗を分けるのは、アナログな人間関係をいかに大事にしたかにかかっているといって過言ではない。
【定年後を豊かに生きるための7カ条】
1.中小零細業者の取引先は値切り倒さない。値切るのであれば大手企業に対してすること。
2.セクハラ、女性蔑視は禁物。下を守り、上には是々非々で望む。
3.人の価値を貶めない。他の人を価値ある人と認める。
4.多くの人に与え、人を育てる。与えるものは親切や声かけでもいい。
5.対外的な人間関係は薄く広げながら、自身のブランディングを図っておくこと。
6.副業は自己ブランディングを図る「自業」と心得る。
7.信頼を損ねることはしない。自営・自立・起業ができるかは、自分自身が信じられるかにかかっている。それは信頼されているかの裏返し。
◎参考:
オランダの保険大手のエイゴン(AEGN.AS)の「定年退職に関する意識調査」
(SuccessfulRetirement-HealthyAgingandFinancialSecurity):
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