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日系企業も被弾する米中貿易戦争の実態は「ハイテク覇権争奪戦」
https://diamond.jp/articles/-/173722
2018.7.2 週刊ダイヤモンド編集部
Photo:REUTERS/アフロ、iStock/gettyimages
米中の報復合戦の内実は、貿易戦争にとどまらず、超大国としての威信を懸けた「ハイテク覇権争い」である。保護主義を強める米国と世界一の製造強国を目指す中国。両国のはざまで、日系企業は難しい決断を迫られている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平、浅島亮子)
「かつての日米貿易摩擦で繰り広げられた米国の“手の内”と重なる」──。中国経済に詳しい大和総研の齋藤尚登主席研究員は、貿易制裁などで日に日に激しい報復合戦を繰り広げる米国と中国の応酬に関して、このように分析する。
どういうことか。1980年代ごろに日米で貿易摩擦が生じた当時は、一見通商戦争のようでありながら、米国は次第に日本のマクロ政策や産業政策にまで口を出すようになり、台頭著しかった日本の経済力の弱体化を画策。貿易不均衡を理由とした鉄鋼やカラーテレビ、自動車などの対米輸出規制にとどまらず、半導体やコンピューターといったハイテク分野で米国市場から日系企業を締め出す「ハイテク摩擦」に発展した。
世界第2位の経済大国となり米国を猛追するまでになった中国は、まさにかつての日本がたどった道を進もうとしている。米中の報復合戦の内実は、貿易戦争にとどまらず、長きにわたる超大国としての威信を懸けた「ハイテク覇権争い」に他ならない──。そんな両国の開戦の火ぶたがついに、切られたのである。
貿易戦争ならば、貿易不均衡は対米投資の拡大によって、何とかつじつまを合わせることもできよう。だが今の米中で起きているのは、最先端テクノロジーや安全保障という、将来の国力を左右する根幹部分を賭した覇権争いだ。このため、米国は中国資本の入った企業の対米投資にまで制限を加えようとしている。
足元の米中摩擦の背景を、「11月の米中間選挙をにらんだトランプ米大統領の一時的な暴走」とみる向きも少なくない。ただ、さらに巨視的にこの対立を捉えなければ、本質を見誤りかねない。
トランプ氏のちゃぶ台返し
下図は米国が通商法301条に基づく500億ドル相当の追加関税リストを公表した4月以降、米側からの先制攻撃を皮切りに、中国が強烈なカウンターで応じる“殴り合い”の様相を時系列で示したものだ。
互いに経済依存度を深める両国にとって、報復合戦は米中経済の逆風となりかねない。それだけに、両国の交渉チームは水面下で落としどころを探りながら議論を重ね、5月19日に共同声明を発表、一時は殴り合いを休止する“クリンチ(抱き付き)”状態に至った。
そんなつかの間の静謐を打ち破ったのは、他でもないトランプ氏だ。わずか10日後の29日、“休戦協定”のちゃぶ台返しで追加関税リスト公表を米通商代表部(USTR)に指示すると、対立局面は一気にエスカレートした。
そんな対中制裁をめぐる米側の行動は、主な目的別に二つに分けられる。貿易不均衡是正を理由に追加関税を迫る「保護貿易」と、知財侵害が疑われる行為に関連し中国ハイテク企業へ制裁を行う「ハイテク排除」だ。
実は、前者の保護貿易の中にもハイテク排除の狙いは潜んでいる。6月半ばに公表された追加関税の品目リストでは、4月時点の素案から新たに半導体や半導体製造機器が対象に加わり、中国のハイテク分野に照準を合わせる様が浮き彫りとなった(下表参照)。
そうした中で専門家らが気にしているのは、6月末ごろに公表予定の中国企業への「対米投資制限案」の中身だ。トランプ氏は26日、中国企業の投資に関し、外国企業の対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)を活用する考えを示唆。CFIUSは日本を含む外資全体が対象のため、市場では米国の強硬姿勢がやや和らいだと受け止められたが、この暗黙のターゲットが中国であることに変わりはない。
米国株は米中摩擦の動きを受け、その時々で売りを浴びてはいるものの、本格的な急落局面にまでは至っていない。「結局のところ“プロレス”だろう」と、米中が協議の末に軟着陸するとの楽観的なシナリオを描く市場関係者は多い。
だが、現実はどうか。「トランプ氏が投げた高い球を受け取る人が誰もいない」(みずほ総合研究所の安井明彦欧米調査部長)、「もはや米国は自制機能を失った」(丸紅の今村卓経済研究所長)、「トランプ氏はやる気満々で先はかなり読みづらい」(三井物産戦略研究所の山田良平北米・中南米室長)──。
専門家からは、以前より厳しい先行きとみる声が続々と聞こえてくる。5月末にトランプ氏が“休戦協定”を袖にして以降は着地点が見通しづらくなっており、市場の期待値と実態との間に乖離がある可能性も捨て切れない。米中摩擦の激化の果てには、今のところ堅調な世界経済への大逆風となることも考えられる。
安全保障を名目に狙い撃ち
トランプ氏の強権発動は止まらない。最近、安全保障の脅威を理由に、中国のハイテク企業を狙い撃ちにする事例が目立っている。
そのいけにえとなったのが、通信機器のZTE(中興通信)だ。4月に、イランや北朝鮮と違法取引をした疑いで、米商務省から米国企業との取引を禁じる制裁を科され、壊滅的なダメージを被った。
次の標的はどの企業か──。そのヒントになり得るのが、米中経済安全保障調査委員会(USCC)が技術系コンサルティング会社、インテロス・ソリューションズに作成させたレポートだ。それには、「米国の安全保障を脅かす中国ICT企業リスト」が掲載されている(下表参照)。
企業リストには、米当局がイランとの取引の疑いで捜査に入ったと報じられているファーウェイやZTEの他、液晶大手のBOE、パソコンメーカーのレノボといった企業も含まれている。
IBM、デル、マイクロソフトなど、中国企業と提携・取引関係がある米国企業を通じて、最先端技術や機密情報が中国へ流れることに、米国が強烈な危機感を持っていることが読み取れる。
それだけではない。USCCは、ICTに製造技術、医療・ヘルスケア、輸送を加えた「科学技術11分野」のうち10分野について、将来、米国の産業競争力が中国のそれに劣後するという衝撃的な結論を導いている(下右表参照)。電気自動車では「現状でも劣後」としており、実際に、電気自動車関連パテントの「世界の国別出願件数」では中国が独走している。
最先端のハイテク分野では、民生用技術と安全保障に関わる軍事技術がリンクすることがもっぱらだ。自動運転しかり、AI(人工知能)しかりである。安全保障を脅かすことを“名目上の理由”として、米国による中国企業狩りは加速するかもしれない。
そして、中国は、米国制裁に対して拱手傍観し続けるようなつつましやかな国ではないだろう。
日系自動車メーカーの焦り
米中で勃発したハイテク覇権争奪戦は、日本にとっても対岸の火事ではない。特に、自動車など製造業へのインパクトは甚大だ。
ある自動車メーカー幹部は、「最初は、よくぞトランプが『中国の技術盗用を許さない』と言ってくれたとすがすがしく感じた。でも、実際に日系メーカーが被る負のリスクを考えれば複雑だ」と言う。
まず、米中の制裁品目に関わるサプライチェーンを見直さなければならない。米国と取引のある中国企業へ部品を納入するあるメーカー社員は、「まるで流れ弾に当たったようなもの」とため息をつく。
そして、自動車業界にとって最大の関心事は、米国による自動車関税賦課である。仮に2.5%から25%へ引き上げられると、業界全体で1兆円の負担増になる(販売価格が据え置かれた場合)。大打撃を受けるのは、SUBARUやマツダといった国内生産偏重組に限定されてはいる。
だが、それも北米自由貿易協定(NAFTA)が成立していることが前提だ。米国の再交渉が不調に終われば、メキシコ生産を前提に将来の計画を立てているトヨタ自動車、日産自動車、ホンダといった大手メーカーも、戦略修正が不可避となる。
保護主義を強める米国。市場開放という大義名分をよりどころに、世界一の製造強国を目指す中国。そのはざまで、日系企業は難しい決断を迫られている。
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