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家主の不在は1時間まで 民泊、ビックリ規制で激減 15日解禁も届け出低調
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO31215790R30C18A5000000?channel=DF220420167277
2018/6/7 NIKKEI STYLE
民泊解禁を境に民泊をやめるという家主は多い(写真は宿泊客のエスタジェさん、東京都杉並区)
住宅に旅行者などを有料で泊める民泊が6月15日に解禁されるが、事業者の登録届け出が低調だ。1カ月前の時点でも全国で約720件にとどまり、ゼロという地域さえある。数万件以上が営業していた従来とは様変わりだ。解禁を機に民泊をやめるという人たちに理由を聞いたところ、厳しい規制と煩雑な手続きが浮き彫りになった。きちんとルールを守ろうとする「真面目な人」ほど継続をあきらめる矛盾も垣間見える。
■「真面目な人」ほど民泊やめる?
「観光庁に問い合わせたら、自宅を不在にしていいのは1時間までと言われた。きちんと守れる自信がない」。そう話すのは東京都杉並区で自宅の一室を民泊に提供しているAさん(33)。フリーのシステムエンジニアとして自宅で仕事をすることもあれば、発注元の企業に出向くこともあり、自宅にいられる時間はまちまちだ。
「これまでは民泊について明確に定めた法律がなかったので、友人を自宅に泊める感覚で気軽に部屋を貸していた」というAさんだが、「法律ができた以上は違反したくない」と考えており、6月15日の解禁と同時に民泊をやめるつもりという。
壁となったのが、自宅を不在にしていい時間だ。住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行規則には「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内」とある。観光庁などによるガイドラインは「一概に定めることは適当ではない」としたうえで、原則1時間、生活必需品を購入する店が遠いなど特殊な事情がある場合でも2時間程度までの範囲と記す。
もっとも、これは家主同居型の民泊の話。Aさんも家主不在型として届け出れば民泊を続けられる。ただし、その場合は手続きが格段に面倒になり、新たなコストも発生する。
まず苦情対応などの管理業務を外部に委託しなければならない。ほかの部屋と無線で連動する火災報知設備のほか、避難経路を示すための非常用照明器具も必要だ。さらに建物が安全であることを証明するため、建築士に家まで来てもらって詳細な書類を作らなければならない。
「宿泊費を今より上げなければならないなら、民泊を続ける意味がない」とAさん。もともと4畳半の部屋で1泊25ドル(約2700円)という格安の料金で、外国人旅行者から高い人気を得ていた。「お金もうけが目的じゃない。彼らに喜んでもらって、交流したかっただけなのに……」と残念がる。
民泊の届け出が低調な2つ目の理由は、営業日数の規制だ。新法のもとで認められているのは年間180日まで。自治体によっては住居専用地域などでさらに制限を加えており、事実上民泊ができなくなっているケースがある。
Bさんが民泊を営んでいる部屋。商店街の活性化を狙ったが…
新宿駅から西へ電車で十数分。Bさん(60)が民泊を営んでいるのは、商店街の一角にあるビルの2階だ。「1階の直営カフェと合わせて、いろいろな人が出入りする場にして、街のにぎわいを取り戻したかった」。3つある部屋は約90%の稼働率を保ってきたが、民泊解禁とともに営業をやめるという。
別の場所にある自宅から仕事のため毎日そのビルに通っているBさんは、家主不在型の民泊として届け出るつもりだった。誤算だったのは、ビルが住居専用地域に立っていたことだ。「商店会の会費をずっと払っていたので、商業地域とばかり思っていた」
ビルのある区は条例で、住居専用地域の民泊を週末だけに制限している。「休暇をとって日本を訪れる外国人に、そんな短い期間で利用してもらえるわけがない」。1階のカフェをフロント替わりにして旅館業法上の簡易宿所にすることも考えたが、これも住居専用地域では認められない。
昨年7月に民泊を始めるにあたって、Bさんがビルの改修に投じたお金は約2000万円。通常の賃貸住宅に切り替えることで回収はできるというが、にぎわい創出という本来の目的からは外れる。「こんなちぐはぐなことをしていたら、商店街はどんどん廃れてしまう」と危機感を募らせる。
■個人情報を周辺にポスティング
3つ目の壁はプライバシーだ。「なぜ、こんなものを配らなければならないのか」。港区の自宅で民泊を営むCさん(42)は憤まんやるかたないといった表情で語る。
手元にあるのは、自らの名前と住所、電話番号を詳細に記したチラシ。「皆様の暮らしの迷惑とならぬよう、十分に配慮して実施いたします。ご不明点等ありましたら、ご連絡をお願いします」とある。周辺10メートルにある全戸にポスティングするよう、区から求められたという。
東京都港区が民泊事業者に示しているポスティングのひな型
近所には賃貸アパートがあり、だれが住んでいるかも分からない。「民泊の利用者は荷物を部屋に置いて外出することも多いのに、泥棒に入ってくださいとアピールしているようなものだ」とCさん。周辺住民の不安に応えるためという区の説明にも、「民泊する人の安全を考えてくれているのか」と疑問を投げかける。
Cさんは民泊を続けるため「ポスティングはする」というが、妻(42)は自分名義で持っているマンションでの民泊をやめるという。「同じようにプライバシーの問題で断念する人は多いはず」とCさんは話す。
ここで紹介した3人の家主は、いずれも法に基づかないヤミ民泊を営んできた。民泊新法の施行にともない、正式に届け出て民泊を続けるか、やめるかの判断を迫られた。寺本振透・九州大教授は「人はみなお金、手間、時間といったコストとパフォーマンスを比べて、見合わないことは避ける。民泊についての煩雑な手続きや細かな規制が、家主に民泊を断念させる方向に働いている」と話す。
特に寺本教授が問題視しているのは、自治体による上乗せ規制だ。たとえば条例で民泊利用を週末だけに制限したり近所へのポスティングを求めたりするのは、民泊を促進する民泊新法の趣旨に外れる恐れがあるという。家主が自宅を不在にしていい時間についても、「観光庁などが法律に合わせて作ったガイドラインでしかなく、絶対的な基準ではない。それを理由に自治体が届け出を受け取らないことは本来あってはならない」。
こうした民泊の規制は、外国人の利用者の目にも奇異に映るようだ。通訳の仕事のため約3カ月おきに来日するというフランス人のオレリアン・エスタジェさん(38)は、民泊を週末に限定する地域が多いことについて「長く滞在してこそ地元に溶け込めるのに」と心外な様子。家主が不在にできる時間が決まっていることについても、「旅行者はたいてい朝から晩まで外出しているので、家主がずっと自宅にいる必要はないはず」と首をひねっていた。
■厳しすぎる規制、軌道修正も
民泊解禁を目前に控えて、家主の間でささやかれているのは「真面目な人ほど民泊をやめる」という実態だ。ガイドラインなどに書かれているルールを額面通りに受け取って、厳格に守ろうとすると、個人では続けにくい。結果的に「従業員を抱えていて資金力があり、弁護士にも随時相談できる企業ばかりになる」。
あまりに届け出が低調なためか、霞ケ関のスタンスも揺れている。同居の家主が自宅を不在にできる時間について、観光庁は当初「チェックインからチェックアウトまでが対象で、宿泊者が外出している間も原則として自宅にいなければならない」としていたが、解禁直前になって「宿泊者が外出している間は家主は自宅にいる必要はない」と軌道修正し始めた。
せっかく民泊新法が施行されても、使われないのでは意味がない。2020年東京五輪・パラリンピックが近づくにしたがって、民泊のニーズは一段と高まる。観光庁などは運用状況をみながら、施行規則やガイドラインを随時見直していくことが必要になりそうだ。
(オリパラ編集長 高橋圭介)
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