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都市での「脱・クルマ依存」が世界で加速、自動車産業は曲がり角
https://diamond.jp/articles/-/170775
2018.5.24 桃田健史:ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
ITSアジアパシフィックフォーラムで展示された、コネクテッドカーに関するレクサスの展示 Photo by Kenji Momota
車の数を減らして都市構造を変革することで、社会を大きく変えること。
それが、「Less Car (レスカー)」という概念だ。
この「レスカー」を推進する動きが世界各地で始まっている。
ITSアジアパシフィックフォーラム (2018年5月8日〜10日:福岡国際会議場)でも、「レスカー」に関する発表が数多くあった。
同フォーラム開催期間中の3日間、各種講演を聴講し、技術展示会やパーティなどで自動車メーカー、自動車部品メーカー、電子機器メーカー、道路事業者、バス事業者、大学関係者、そして各国の政府関係者らと意見交換する中で、「レスカー」が及ぼす大きな影響について再認識した。
日本でレスカーは、自動車産業の発展を阻害する恐れがあり、導入にはかなり高いハードルがある。
カーナビ・ETC普及期から新時代へ
日本のお家芸「ITS」の主役が変わる?
22年ぶりに日本で開催されたITSの国際カンファレンス。今回の会場は福岡国際会議場 Photo by Kenji Momota
ITSとは、インテリジェント・トランスポート・システム(高度交通システム)の略称で、自動車を主体とした道路交通での次世代技術を示す。学術的な観点からは、オイルショック以降の70年代に欧州や日本で議論が始まり、その後はカーナビゲーションの普及が進み始めた90年半ば以降に産学官連携による協議が活発化した。
そうした中、日本はカーナビの新車標準装備やアフターマーケットでの量産化が世界市場の中で最も早いペースで普及。さらに、高速道路の交通状況をより早く知らせるVICSの実用化や、ETC(電子料金徴収システム)の整備を一気に進めるなど、ITS先進国として世界から認識されるようになった。
また、近年のITSとしては、道路インフラと自動車をつなぐ路車間通信(V2I)、走行中の自動車同士をつなぐ車車間通信(V2V)、そして歩行者と自動車をつなぐ(P2V)といった、コネクテッドカー分野での量産化が進んでいる。
こうした技術領域では、国や地域で使用する電波の周波数帯域に違いがある。発信と受信の位置が100メートル前後といった近い距離では、狭域通信(DSRC)と呼ばれる方式が一般的だが、その周波数帯域は欧米と中国が5.9GHzなのに対して、日本や東南アジアの一部で5.8GHzを使う。日本は2000年代にDSRCでの5.8GHzを事実上の世界標準化とするための各国への働きかけを強化したが、その想いは実らなかった。
また、交差点付近などの通信環境を重視する、700MHzについてトヨタを中心とした普及活動があるが、日本国内メーカーの間でも未だに足並みが揃っていないのが実情だ。
その他、最近では日本国内向けの歩車間通信で海外通信関連事業者を巻き込んで、新しい周波数帯域の獲得に乗り出す動きもあるなど、コネクテッドカー関連で日本企業の今後の対応が問われている。
交通領域から都市開発の議論へ発展
ITS先進国・日本の行方は?
こうしたコネクテッドカー技術の一部を応用する形で、ITSの主要課題として急浮上しているのが自動運転だ。
相次いで発生したアメリカでのウーバーテクノロジーズの実証試験での死亡事故、そしてテスラ量産車による死亡事故などによって、自動運転の安全性と社会受容性に対する世間の目は厳しさを増している。
日本は警察庁の自動運転ガイドラインによって、自動車業界関係者からは「自動運転の公道実験がやりやすい国のひとつ」と表現されることが多く、自動車メーカー、大学、またITベンチャーなどが全国各地で自動運転実証試験を続けている。日本は自動運転技術については、欧米やイスラエルなどの企業と連携する形で、自動運転量産化での先進国を目指そうとしている。
シンガポールのカーライト政策に関する資料。社会における車への依存度を軽くするという意味 Photo by Kenji Momota
一方、東南アジア各国で、最もホットなITS関連の話題が「レスカー」だ。
要するに、これは公共交通再編を主軸とした新しい都市計画によって、都市部で走行する自動車の数を減らすという政策である。各国の政策には当然、若干の違いはあるが、俯瞰すると各国が目指す方向はかなり近い。
都市部での渋滞緩和、交通事業でのCO2削減、そして事故軽減という「交通政策の主要3課題」を解決するには、端的に「自動車の数を減らすべき」という発想だ。
では、どうして今レスカーを含めた公共交通再編の動きが加速しているのか?
理由は、スマートフォンの普及とビックデータ解析技術の発展だ。今回のフォーラムでも長年に渡りマレーシアのITS政策に関わってきた関係者が講演で、こうした点を指摘したうえで「ITSは新たなる時代へと突入した」と、マレーシアにとっても大きなチャンスが到来したことを強調した。
ただし、東南アジア各国の間で、レスカーへの移行に対する本気度には温度差がある。それは自動車メーカーへの配慮だ。経済成長を支える基幹産業である自動車産業で、国内に大規模な生産拠点や開発拠点がある場合、レスカー政策に対して慎重な対応が求められる。
その点について、世界第3位の自動車大国(2017年:製造969万台、国内販売524万台)である日本としても、国によるレスカー政策、または自動車工業会や自動車メーカーそれぞれによるレスカー戦略を描くための本格的な議論が進んでいないのが実情だ。
モビリティサービス先進国はどこに?
公共交通再編だけではない新なる変革
東南アジアでのレスカーのみならず、新しいモビリティ政策を進めている国や地域は世界各国に存在する。
中でも最近目立つのが、北欧フィンランドだ。
フィンランドは今年1月、「トランスポート・コード(交通に関する法律)」を施行。これによって、公共交通機関の走行データのオープンデータ化が義務化され、そのデータを活用するベンチャー企業の育成をフィンランド政府がバックアップしていく。
ITSアジアパシフィックフォーラムでのビジネスフィンランドの発表の様子。同国にはモビリティサービス関連の企業が各種存在する Photo by Kenji Momota
福岡でのITSアジアパシフィックフォーラムの翌週、都内ではフィンランド大使館商務部とあずさ監査法人が共同主催した「日本・フィンランド モビリティサービスセミナー」が行われた。
講演では、フィンランド大使館商務部・商務参事官 ペッカ・ライティネン氏、経済産業省 製造産業局 自動車課 大臣官房参事官 小林大和氏、日本のジェトロに近い存在「ビジネスフィンランド」のプログラムディレクター、ミッコ・コスクエ氏、そしてフィンランドのモビリティサービス事業者MaaSグローバルなどと事業連携しているデンソーの常務役員 欧州技術担当 松ケ谷和沖氏らが登壇し、モビリティサービスに興味を持つ産学官関係者百数名に対して、フィンランドでの実例を紹介しながらビックデータを活用したモビリティサービスの可能性について熱く語った。
100年に1度の大変革期。
自動車産業界はいま、明らかに大きな曲がり角に立っている。
レスカーを含めた新たなるモビリティサービスや政策について、今後もさらなる深堀り取材を続けていく。
(ジャーナリスト 桃田健史)
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