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スルガ銀行、「地銀の優等生」の化けの皮…高利ローン貸付頼み、かぼちゃの馬車融資で不正疑惑
http://biz-journal.jp/2018/04/post_23028.html
2018.04.18 文=編集部 Business Journal
スルガ銀行(「wikipedia」より)
金融庁は銀行法に基づき、スルガ銀行への緊急の立ち入り検査を始めた。今年3月、シェアハウスへの投資をめぐる融資トラブルで、報告徴求命令を出しているが、立ち入り検査の結果次第では行政処分を検討する。金融庁は、スルガ銀行の役員が、融資の審査を通りやすくするために書類の改竄など不正行為に関与していた可能性があるとみている。
首都圏で女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社スマートデイズ(旧スマートライフ)は、1月から物件所有者への賃料の支払いを突然停止し、オーナーのうちで資金繰りがつかなくなる人が続出した。大地則幸・元社長時代にトラブルの種は蒔かれていた。
スマート社は4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、今年3月末時点の負債総額は約60億円という。
オーナーはシェアハウスをスルガ銀行からの融資を受けて建設。スマート社が一括借り上げをしたうえで女子学生らに転貸し、一定の家賃を保証する「サブリース」と呼ばれる方式を採用している。副収入を得たい30〜50歳の会社員ら700人が事業に参画した。
同社は「頭金なしで投資ができ、30年間家賃収入を保証する」ことをセールストークに、創業から5年余りで管理棟数は845棟、1万1259部屋にまで拡大した。未完成のものを含めると1000棟規模に達するという。
オーナーたちのほとんど(一部では8割超との報道もある)は、スルガ銀行横浜東口支店から、使途自由の「フリーローン」を借りていた。金利は7.5%程度と高く、1000万円借りると年75万円の利息がかかる。1棟で1億円前後する土地・建物の資金を融資しており、借入金が1億円の場合、年間の支払い利息だけで750万円に達する。賃料がストップしたことで、オーナーたちは困窮した。2億円以上借りている人もいるという。
オーナーらで構成する「スマートデイズ被害者の会」は、スルガ銀行に一時返済猶予を求めた。スルガ銀行の“貸し手責任”を追及する構えを見せている。
オーナーらはスルガ銀行から融資を受ける際、スマート社に預金通帳の写しなどを渡し、銀行との手続きを一任。ところが、一部の融資では通帳の写しを偽造したり、ゼロを増やしたりしていた。3月末には一部のオーナーがスマート社と同社役員らを相手取り、損害賠償訴訟を起こした。
過剰融資はスルガ銀行横浜東口支店の独自の判断なのか、それともスルガ銀行の組織ぐるみだったのかが焦点となる。スルガ銀行のかぼちゃの馬車関連の融資額は1000億円規模に上るとみられている。
■社長の首を切り、創業家・会長の責任は不問か
スルガ銀行は、地銀のなかでは数が極めて少なくなった同族経営の銀行だ。岡野一族の同族経営で、現在は5代目の岡野光喜氏が会長兼CEO(最高経営責任者)として君臨している。同氏が社長から会長になり、非同族の米山明光社長が誕生したのは2016年6月のことだ。
昨年5月、金融庁の森信親長官が講演で、「地銀の(新しい)ビジネスモデル」として、カードローンや住宅ローンなど個人向け商品に特化したスルガ銀行の積極的な経営姿勢を高く評価した。とはいえ、「地銀の消費者金融シフト」と他の有力地銀の頭取から揶揄されるゆえんともなった。
かぼちゃの馬車のオーナーに、高利のフリーローンを貸し付けて収益を上げてきたのは、「岡野路線の一断面」(スルガ銀行関係者)との厳しい指摘もある。
スルガ銀行は18年3月期決算予想で、融資など本業で得るコア業務純益を650億円としている。規模では地銀中20位以下だが、収益力は地銀トップクラスだ。ところが、収益の柱であるフリーローンでつまずいた。「今年3月期決算は業績の大幅な下方修正が避けられない」と金融アナリストは見ている。
昨年の大納会(12月29日)で2417円をつけていた株価は、事件の発覚後、下落の一途を辿る。4月3日には1431円と年初来安値を更新した。4割強の値下がりである。
「スルガ銀行は、同族経営で決断が早く、大胆な行動が取れるという特性をうまく生かして、高い収益を上げてきた。森長官自身が“地銀の優等生”とのお墨付きを与えた銀行であるため、金融庁としては組織ぐるみの問題にしたくないとの思惑がある」(前出の金融アナリスト)
企業向け融資を極力抑え個人ローンに特化するなど、他の地銀の“サラリーマン頭取”では、とうていマネのできないハイリスク・ハイリターン経営を実行してきた。そのビジネスモデルが落とし穴にはまったかたちだ。
「今後、経営責任をどう取るかが問われる。金融庁も株主も、岡野氏には残ってほしいと考えている。米山氏に責任を取らせ、会長はCEOを外れて残る、というシナリオになるのではないか」(同)
創業者は岡野喜太郎氏。3代目頭取の岡野喜一郎氏の時に飛躍した。岡野光喜氏は、1985年に父・喜一郎氏の指名を受けて、創業90周年の節目に40歳の若さで5代目頭取となった。頭取から社長と呼び方を変えたのは、「『普通の会社は社長なのに、どうして銀行だけ違うの?』と子供に聞かれても返答に困る。銀行はサービス業なのだから社長でいい」と即決した。社長になった光喜氏は2016年まで、実に31年間、社長の椅子に座り続けてきた。
米山氏は明治大学工学部卒で、17人抜きの大抜擢で社長になったばかりだ。「ICT(情報通信技術)に詳しいということで白羽の矢が立った」(スルガ銀行の元幹部)といわれるが、“傀儡社長”との低い評価しかない。
自己破産は避けられないとされる、かぼちゃの馬車のオーナーたちは、スルガ銀行で“岡野商店”が続くことを許さないのではないだろうか。
静岡県は静岡銀行、スルガ銀行、清水銀行と、3つも地銀がある“オーバーバンキング地帯”だ。かぼちゃの馬車事件の余波を受けて、中部地区の地銀・第二地銀の再編の起爆剤になる可能性もある。
(文=編集部)
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