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なぜ正社員化を進める企業はダメなのか 社員を抱え込むと会社は変われない
http://president.jp/articles/-/24622
2018.4.2 ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前 研一 BBT大学総研 PRESIDENT Online
いま政府の方針に沿って、非正規社員の「正社員化」を進める企業が目立っている。だがビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏は「『今会社にいる人間に何をやらせるか』という考え方ではもう絶対に駄目。正社員を抱えると、会社は変われなくなる」と警鐘を鳴らす――。
※本稿は、大前研一『勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全』(KADOKAWA)Part1「大前式『21世紀のビジネスモデル』の描き方」を再編集したものです。
時代の変化に追いつけなかった家電メーカー
かつての大量生産、大量消費時代の日本のメーカーは、設計から製造、販売に至るまで、全ての機能と設備をワンセットで自分たちの会社の中に持っていました。ところが、こういうやり方でいこうとすると、だんだん需要が陰ってきたり、世の中が大きく変わってきたりした時に会社がうまく回らなくなってしまいます。
実際にデジタル・ディスラプションの時代=デジタルテクノロジーによる破壊的イノベーションの時代が到来した時、まず製造設備をたくさん持っていた会社からさまざまなトラブルが発生し始めました。
日本の家電メーカーがほぼ全て崩壊した理由というのは、スマートフォン1台の中にビデオもカメラもオーディオも全部入ってしまったという時にまだビデオを作る会社を持っている、オーディオ機器の製造工場を持ち続けるという発想の遅れにあったわけです。
日本のメーカーは、デジタルカメラ隆盛の時代あたりまでは世界をリードしていましたが、それがスマホのアイコン1つで全てがこと足りる時代になった時に、時代の変化に追いつくことができなかったのです。
抱えない勝ち組の代表格「キーエンス」
デジタル・ディスラプションの時代における勝ち組企業のビジネスモデルとは何か? この問いに対する答えを最初に言ってしまうならば、「抱えない」こと=「ソリューションファースト」であることです。
この“抱えない”“ソリューションファースト”という勝ち組のビジネスモデルを実現し躍進している日本企業の代表格が、大阪に本社を置くキーエンスというセンサーのメーカーです。センサーとは、今注目されているIoTにおいて非常に重要な技術でありアイテムです。
キーエンスは昔から収益性が非常に高い会社として知られていますが、その大きな要因の1つが、「社内に製造部門を持っていない」ということです。所有をせずに空いているものを有効活用する「アイドルエコノミー」をいち早く実践してきたのです。
こういうセンサーを作るのであればこの技術者、この会社に頼めばいい、ということを熟知していて、外部の彼らに作ってもらい、納品する。つまりお客さんのニーズと、それを作れる人が分かっていて、お客さんと作り手を的確に結び付けるのです。
抱えないアイドルエコノミーの先駆者「ラクスル」
ネットを活用した印刷サービスを提供しているラクスルもアイドルエコノミーの先駆的な会社であり、“抱えない勝ち組企業”のいい例です。彼らも自社内に製造施設、つまり印刷工場を抱えていません。
そもそも印刷会社は、必要な印刷量の倍を印刷できるような印刷機械を確保しています。なぜかというと、印刷機械は壊れやすいものなので、故障時にも必要な印刷量を担保するためです。ラクスルはこの通常は使っていない印刷性能を活用することで、低コストを実現しています。
印刷サービスを提供する会社が印刷機を持たないというのは、考えてみればすごいことですが、ラクスルは空いている、つまり稼働していない全国の印刷工場の印刷機を有効活用しているのです。
これまでは、企業がDMやチラシ、カタログなどの印刷を発注する時、数社から見積もりをとって彼らの言い値で頼むという方法をとってきました。対してラクスルは、全国にある数万社の印刷会社と連携し、発注者の要望にマッチする印刷会社に印刷を依頼する、という仕組みです。
こうしたビジネスモデルによって、お客さん側は安く早く印刷物を納品してもらうことができ、印刷会社も印刷機械の稼働率が上がってWin−Winというわけです。最近ラクスルと同じような印刷サービスを提供する会社もいくつか出てきていますが、みな共通しているパターンとしては、自分たちで印刷機を抱えていないという点です。
「ソリューションファースト」という発想
今、日本企業、とくに多くのメーカーが陥っている根本的な問題は、自分たちで抱えてしまった製造設備と人間をできるだけ稼働させなければならない、作ってしまったものはどうにかして売らなければならない、ということです。これは、お客さん、市場のニーズよりも企業側の意向を優先したプロダクトアウトの発想です。
自分たちで生産施設を抱えてしまうと操業度重視になり、お客さんのニーズがよく見えない状態になってしまいます。お客さん側は「こういう商品がほしい」と言っているのに、メーカー側はひたすら「私たちが作ったものを買ってください」と言い続け、売りたい人と買いたい人がマッチしなくなり、商品も売れない。これは当然といえば当然です。
勝ち組企業のビジネスモデルとは何か? を考える時、こうした生産設備を抱えてしまうというやり方、プロダクトアウトの発想は、大きく時代からずれてしまっている、言い換えれば負け組のビジネスモデルといってもいいかもしれません。
21世紀は、作ったものをひたすら売るという発想ではなく、「お客さんが今、何を欲しているのか」という発想で考えることが重要です。そして、お客さんが求めるものを作ってくれる人は、世界中にいくらでもいます。アップルでさえ設計やデザインはしても、製造はホンハイにほぼ一任しています。しかしアップルのスマホを使っている人は、それをアップルの製造委託先ホンハイの子会社フォックスコン(中国・成都)が作っていることなどほとんど知らないでしょう。
これからの勝ち組企業の必須条件は製造設備や人材を社内に抱え込まないのと同時に、「お客さんのことが分かっていて、お客さんの意見を聞いて、それを実現するためのソリューションが作り出せる」ということです。ソリューションが何かを最初に考えて、それを実現してくれる人、会社を世界中から探し出してくる「ソリューションファースト」の発想を持っていないと勝ち組企業にはなれないのです。
会社を変えたければ正規社員を抱えてはいけない
今は社内に人を抱えなくてもクラウドソーシングで外にいる人間に仕事を依頼できます。政府は「正規社員を増やします」などと言っていますが、そんな話をまともに聞いていては駄目です。正規社員を抱えるというのは、会社が変われなくなる最大の原因なのですから。
製造システムも人材も、クラウドコンピューティングやクラウドソーシングを使っていくらでも外から引っ張ってくればいい。そうした発想でゼロから会社を組み立てるとすれば、「うちの会社にとって、実はこんなものは要らないのだ」というものが機能別、事業別に山のように出てくるはずです。
「今会社にいる人間に何をやらせるか」という考え方ではもう絶対に駄目です。「今、自分の会社がやるべき目的というものを明確にして、それに対して何をやるのか?」。こういう発想で考えないと勝ち組企業にはなれません。
大前研一(おおまえ・けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長
1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。
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