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米輸入制限で貿易戦争勃発、日本が得られるかもしれない「漁夫の利」
http://diamond.jp/articles/-/163647
2018.3.16 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
3月8日、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を課す大統領令に署名したトランプ大統領 Photo by Kevin Dietsch/UPI
米国のトランプ大統領は3月8日、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を課す大統領令に署名、実質的な「輸入制限」を決定した。それに対し、各国は報復関税などを検討しており、「貿易戦争」が勃発しそうな気配である。
これに対し、識者からは「世界貿易が縮小するのは世界経済にとって好ましくない」「輸入制限は米国自身のためにならない」といった批判的なコメントが発せられている。確かにそうした議論も必要だが、今回はあえて利己的に、日本経済と日本人への影響に限定して考えてみたい。
米が輸入制限を実施しても
日本の受ける被害は限定的
日本は、かなり昔から対米貿易摩擦に悩まされてきたこともあって、十分な“免疫力”を備えており、かつては日本の主要輸出品であった鉄鋼も、対米輸出は昨年1年間でわずか2000億円にとどまっている。アルミニウムも、幸か不幸か日本の比較劣位な産業なので、ほとんど輸出されていない。そういう意味で、輸入制限の直接の影響はあまりないといえる。
多数の現地生産工場を持っている自動車メーカーなど、日本企業の在米子会社を持っている企業はどうだろうか。そうした在米子会社はあくまで米国企業であり、失業するとしても米国人労働者なので、これも日本経済にはあまり影響がないと言える。
もし影響があるととしても、せいぜい海外から得られる配当収入が減少する程度だ。たとえそうなったとしても、日本国内の雇用や設備投資を減らしたり、賃上げを見送ったりといったことにまでは発展しないだろう。したがって、日本の景気には全く影響がないと言っても過言ではない。
一部のマスコミは、「現地子会社が困っている」などと報道するかもしれないが、一般の日本人は、心配する必要はないのである。
一方で、もしも在米の日系自動車メーカーが生産を減らしたとして、その一部が日本にある工場での生産に回れば、対米輸出が増えることになる。これは、日本人労働者の雇用にも繋がるからことになるのだから素晴らしいことだ。
余談だが、マスコミは困った事を報道するのが好きなので、情報の受け手はその分を割り引いて理解する必要がある。例えば、グローバリゼーションで企業が相互進出する際、日本企業が海外に工場を作ると「雇用が流出する」と報道し、外国企業が日本に進出すると「日本経済が外資に乗っ取られる」と報道する。
そういう意味で、今回の自動車の件も、「日系自動車メーカーが打撃を受けた」とは報じるかもしれないが、「その分の穴埋めをしたのは日本からの対米自動車輸出であり、差し引きして日本の自動車産業は潤った」というのが正しいはず。だが、そうは報じないのである。
諸外国の対米報復措置で
日本製品の輸出が増えると期待
今回の件が「米中貿易戦争」に発展すれば、中国の対米輸入品にも関税がかかることになるだろう。そうなれば、米国が輸出していた品目の一部が、日本からの輸出品に振り替えられることが期待される。
中国が、米国から輸入している物は、「中国国内で生産できないものだから、給料の高い米国で作ったものをわざわざ輸入している」。だから、中国が対米輸入を制限したら、日本を含む他の先進国から輸入せざるを得ないとなるからだ。
中国以外の国も対米報復関税を課せば、これまた日本の輸出がさらに増えることが期待される。もっともEUは、ハーレーダビッドソンやバーボンウイスキーなどへの関税を検討しているもよう。だとすれば、日本の“漁夫の利”は、あまりないかもしれないが。
中国が米国債を
売る可能性は小さい
少し視点を変えて、「中国が、報復手段として米国債を売却し、米国の金融市場が混乱することで、日本にも不利益が生じる」と案ずる市場関係者もいるようだが、それは杞憂だろう。可能性がゼロとは言わないが、中国自身が被る打撃が大きすぎるからだ。
中国政府が保有する米国の長期国債を売却し、売却代金のドルを米国内で短期運用するのであれば、米国の被害は大きくないので報復の意味がない。となると中国は、保有する短期の米国債を売却し、それに伴って値下がりした長期の米国債を買うことになるだろう。
それでも足りなければ、長期国債ではなく、短期国債にすればいいだけの話だ。ただ、そうなると中国政府は、長期でリターンを得る機会を放棄するのみならず、長期国債を大量に売却したときに値下がりしてしまい、損を被る可能性もある。
また、中国政府が、米国債を売却した代金であるドルを、人民元に替えて自国に持ち帰るのであれば、それは自殺行為だ。人民元相場が急騰し、中国の対米輸出が格段に困難になってしまうからだ。
米国が対中国の外交カードを
持つことになる可能性も
仮に、米中が全面的な貿易戦争を始めたとすると、米国も被害を被るであろうが、中国の被害はそれをはるかに上回るものとなるだろう。
というのも、米国の対中輸入額の方が圧倒的に大きい上に、GDPは米国の方が大きいのだから、相手国向け輸出のGDP比は中国の方が圧倒的に大きくなるからだ。
米国が、中国から輸入している商品は、「国内でも作ることができるが、中国の方が人件費安いから輸入している」というものなので、対中輸入を制限しても、多少のコスト高さえ覚悟すれば、国内で作ることができる。それに対し中国は、対米輸入を制限しても国内では作れないため、他の先進国から輸入せざるを得ない。
つまり、米国は、「俺は1痛むかもしれないが、お前は10痛むぞ」という戦いを挑むことができるわけだ。これは、対中の“外交カード”として利用できそう。例えば、「北朝鮮への制裁に協力しないなら、対中貿易戦争を開始するぞ」などと言って、中国の協力を強要することもできそうだし、「尖閣諸島に攻めてきたら、米中貿易戦争を開始するぞ」と言っておけば、中国は自制するかもしれない。
外交においては、相手に“出方”を読まれないことも重要だ。その点、トランプ大統領であれば、「彼は何をしでかすか分からない」という恐怖心を中国に与えることができる可能性もある。
こうした戦略によって、北朝鮮や尖閣諸島をめぐる状況が少しでも改善すれば、それは日本にとって大きな“漁夫の利”となる可能性を秘めているといえる。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
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