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2019年運転開始へ クリーンな国産エネルギーに期待高まる Jパワー参画「山葵沢地熱発電所」の建設着々!
http://www.sankei.com/life/news/180219/lif1802190001-n1.html
天候や昼夜に関係なく安定的に発電する純国産のクリーンエネルギーとして注目されている「地熱」。国も規制緩和などで利用を後押ししている。そんな中、秋田県湯沢市で今、「山葵沢(わさびざわ)地熱発電所」(4万2000キロワット)の建設工事が2019年5月の営業運転開始を目指し着々と進められている。Jパワー(電源開発)などが出資する湯沢地熱(同市)が事業を手掛けており、予定通りいけば、東京五輪・パラリンピックの前年に、国内23年ぶりの1万キロワット超の大規模地熱発電所が稼働することになる。
23年ぶりの大規模地熱発電所
日本の地熱資源量は2300万キロワットで、米国(3900万キロワット)、インドネシア(2700万キロワット)に次ぐ世界第3位の地熱資源大国となっている。ただ、その豊富な資源ほどは利用が進んでおらず、地熱発電の設備容量(計約52万キロワット)は世界第10位に甘んじており、今後の利用拡大が期待されている。
そんな中、Jパワーは現在、三菱マテリアルと三菱ガス化学と共同で設立した湯沢地熱を通じて山葵沢地熱発電所の建設を進めている。建設場所は、岩手、宮城、山形3県の県境からほど近い秋田県湯沢市の山間部。総面積約16万平方メートルにわたり、蒸気を取り出す井戸(生産井)、熱水を地下に戻す井戸(還元井)の掘削や発電所本館、タービン・発電機据付、配管・蒸気処理装置などの工事等が行われている。Jパワーは宮城県の大崎市の鬼首地熱発電所(出力1万5000キロワット)の運転・保守を、1975年から40年以上にわたり行ってきた。同発電所は2017年3月に運転を停止し、最新設備への更新を計画している。この長年の地熱発電の経験と知見が、今回の山葵沢地熱発電所の開発にも活かされている。
山葵沢地熱発電所の出力4万2000キロワットは、地熱発電所として国内5番目の大きさ。出力1万キロワット超の地熱発電所は、96年11月に営業運転を始めた九州電力の滝上発電所(2万7500キロワット、大分県九重町)以来で、予定通りいけば実に23年ぶりの大規模地熱発電所が稼働する。
地熱発電の仕組み
地熱の“正体”や地熱発電の仕組みを説明してから、山葵沢地熱発電所の建設工事の進捗状況に触れることにしよう。
日本は110もの活火山がある世界有数の“火山国家”。火山地域の地下数キロメートル〜十数キロメートルには、地下深くから上昇してきたマグマが溜まっている場所があり、約1000度で周囲の岩石や地表から浸透してきた水を熱している。加熱された水は高温の蒸気や熱水となって、水を通しにくい岩盤の下などに溜まる。その蒸気や熱水が溜まっている場所を地熱貯留層(地下約1000〜3000メートル)という。
地表から地熱貯留層まで井戸を掘って、高温・高圧の蒸気や熱水を取り出してタービンを回し、発電するのが地熱発電だ。蒸気による発電には2つの方式がある。1つは、蒸気と熱水が混ざった地熱流体から気水分離器を使って蒸気を取り出し、その蒸気でタービンを回し発電するシングルフラッシュ方式。もう1つは、気水分離器で分離したまだ温度の高い熱水からさらに低圧の蒸気をつくり、2種類の蒸気でタービンを回して発電するダブルフラッシュ方式である。
山葵沢地熱発電所は後者を採用した。Jパワー火力建設部地熱室の赤坂千寿室長によると、「地下の地熱資源が豊富で、かつ温度・圧力が高い状態にあり、長期運用する場合はダブルフラッシュ方式に優位性がある。シングルフラッシュ方式に比べて追加設備が必要となるものの、同じ資源から得られる出力は15〜20%程度増える見込みで、発電効率も良くなる」という。
タービンを回した後の蒸気は復水器や冷却塔を通って水となり、冷却水として再利用される。余った冷却水は蒸気と分離した熱水とともに、輸送管で約2キロメートル離れた還元基地まで運び、還元井を通じて地下に戻す。
わざわざ約2キロメートル離れた場所まで運んで地下に戻すのには理由がある。発電用の蒸気や熱水は地下で約280〜290度あるが、発電に利用された後は最終的に100度近くまで下がる。「近くで地下に戻した場合、発電用の蒸気や熱水の温度を下げてしまう恐れがあるため、熱水輸送管で影響が出ない距離まで運んで地下に戻している」(赤坂室長)という。
建設工事の進捗状況
2015年5月に始まった建設工事では、敷地が山間部にあるため、まず発電所用地などの造成を実施。造成後は、発電用の生産井や還元井の掘削を計11本行った。現在は発電所本館や発電所と各井戸を結ぶ輸送管などの工事が着々と進められている。18年中にはいよいよ発電設備を据付けて19年1月からは試運転に入り、同年5月には営業運転を始める予定だ。
こうした大規模な地熱発電所建設ではどのような苦労があるのか。「出力が大きいということは、それだけ多くの生産井・還元井が必要。しかし、井戸は実際に掘ってみないと十分な生産・還元能力があるかは分からない。新しい井戸を掘りながら地下のデータを確認していく必要がある。」と赤坂室長は話す。また、発電所本館他の工事で、地下に多くの転石が見つかり、基礎杭を打ち込む前に岩を粉砕する予期せぬ作業が発生したり、約2キロメートルにわたる熱水輸送管の敷設で、県道の下を横断させるためにトンネルを掘るなど、課題を解決しながら工事を進めてきた。現場で工事に携わったJパワー火力建設部地熱室佐々木憲司総括マネージャーによると、「この地域は豪雪地帯であり、11月から5月まで現場は雪に閉ざされ工事を休止せざるをえない。そうした制約の下、複数の作業が同時に進行する中で工事を着実に進めるためには、ハイレベルな調整能力と、関係者一体となったコミュニケーションが欠かせない」という。
山葵沢地熱発電所の開発の歴史
山葵沢地熱発電所の開発は、1993年から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が地熱開発促進を目的として実施した山葵沢調査、秋ノ宮調査から始まった。
山葵沢調査を引き継いでJパワーと三菱マテリアルが、秋ノ宮調査を引き継いで三菱マテリアルがそれぞれ事業化に向けて調査を行っていたが、地熱資源の有効利用とスケールメリットを考慮して2つの調査地域に1つの発電所を建設することになり、両社に三菱ガス化学を加えた3社が2010年4月、地熱事業会社「湯沢地熱株式会社」を設立した。同社は11年11月、環境影響評価(環境アセスメント)の手続きを開始し、14年10月同手続きが完了した。
湯沢地熱では、生息する動植物など周辺環境に配慮して工事を進めるのはもちろん、地元の方への説明会を実施したり、周辺源泉の状況変化の有無を把握するためのモニタリングを行い、源泉所有者にデータを共有するなど、地元との密接なコミュニケーションで良好な関係を築いている。
低炭素化社会に向けて地熱発電の果たす役割
地熱発電は、発電所の建設から運転、発電所解体までのライフサイクルにおけるCO2の総排出量が極めて少なく、地球温暖化対策として効果的な電源といわれている。加えて、昼夜、天候を問わず24時間、安定的に発電でき、設備利用率が平均約70%と極めて高いことから、地熱には純国産エネルギーによる基幹電源としての期待も大きい。
ただ、国内の地熱資源の8割は、規制が厳しい国立・国定公園内にあるとされ、地熱利用が進まない要因になっていた。国は、自然環境に影響を与えないことを条件に、国立・国定公園内での規制を緩和し、地熱発電開発を後押ししている。
エネルギー自給率が約8%と低い日本で、環境や地域と共生した山葵沢地熱発電所が稼働することの意味は大きい。
提供:J−POWER(電源開発株式会社)
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