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理研で365人が雇い止め 改正労働契約法の“抜け道”が生んだ悲劇
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180222-00000067-sasahi-soci
AERA 2018年2月26日号より抜粋
ある事務業務員の給与明細。研究アシスタントも年収300万〜400万円程度だという。正規職員にある賞与や手当などはない(撮影/写真部・片山菜緒子)
日本の科学技術研究をリードする理化学研究所で、大規模な雇い止めが迫る。研究アシスタント、事務業務員ら365人が雇い止めの対象となる。2013年4月に施行される改正労働契約法の影響で、同法では、有期雇用が5年を超えれば労働者が無期雇用に転換できる「5年ルール」が適用されるのだ。不当労働行為の救済を申し立てたが、契約満了には間に合いそうにない。対象者の怒りの矛先は、使用者だけではなく、法律にも向かった。
研究員のイイダさん(男性・51)は理研の正規職員だ。自身の研究室でも研究アシスタントが3月で雇い止めになる。
「アシスタントは研究室を支える仕事で業務は多岐にわたる。外部との連絡調整もあり、蓄積された経験や人脈は大切で、簡単に代替えがきくものではない。人事部に辞めさせられると困ると伝えたが、駄目だった」
イイダさんだけの意見ではない。記者は今回、3月で雇い止めになる有期雇用職員9人に話を聞いた。8人が、自身、または近い知人が「6カ月たったら戻ってきてほしい」などと上司から言われたと明かした。(編集部・澤田晃宏)
13年の改正労働契約法には抜け道がある。有期労働契約の間に6カ月の空白があれば、その前後の契約期間は通算しない。
つまり、半年たてばまた、理研と上限5年の有期雇用契約を結ぶことができるのだ。
研究アシスタントのトガワさん(女性・40)は、理研内のこんな現状も記者に明かした。
「4月に一気にいなくなると現場が混乱するのは目に見えている。先に何人かの秘書が順番に退職し、6カ月空けて戻って、誰かは残るようにしている」
雇い止めに遭うにもかかわらず、組織を思ってこうした行動をとる職員がいることを理研は知っているのだろうか。昨年12月、理研労は雇い止めの撤回を求め理研と交渉するも話が折り合わず、東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。
だが、命令発令までに早くとも1年はかかり、3月の雇い止めには間に合わない。申し立てに関わった菅俊治(しゅんじ)弁護士は、
「理研が16年に改正した就業規程は一方的な不利益変更で、法的には無効だ。今回、雇い止めを許すと、有期雇用の研究者にも影響が出る。日本を代表する研究機関がそれでいいのか」
改正労働契約法では研究者や教員などについては無期転換申込権発生までの期間を10年とする特例を認めている。このままいけば有期雇用の研究者は23年3月で雇い止めになるのだ。
理研の雇い止め問題を国会で取り上げた共産党の田村智子参院議員は、こう語気を荒らげる。
「民間企業とは違い、政府は独立行政法人には直接モノを言えるし、予算もつけられる。大量の雇い止めを生むようなら、働き方改革を語る資格はない」
事務業務員のサナダさん(女性・52)は取材中、涙を隠さなかった。理研で働いて17年。所内に知った顔がたくさんいる。
「労働契約法の改正がなければ、今も1年契約を繰り返し、働き続けられたと思います」
サナダさんは幼いころ、東京・上野の国立科学博物館に足しげく通った。科学の先端を走る理研に入ってからは、書類を見るだけでドキドキした。
まだ、転職活動はしていない。
「後任者が困らないように3月末までは仕事を全うしたい」と話す。記者が最後に理研に言いたいことはないかと尋ねると、
「また、よろしくお願いします」
半年間アルバイトでつなぎ、理研でまた働きたいという。(文中カタカナ名は仮名)
(編集部・澤田晃宏)
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