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日英軍事協力強化の戦略的ねらい
タグ:テリーザ 防衛相 横須賀基地
発信時間:2017-10-28 09:23:47 | チャイナネット
8月30日、テリーザ・メイ英首相が日本に到着し、3日にわたる訪問を開始した。メイ首相は到着したその日に、安倍晋三首相と京都で伝統的な茶会に参加した。翌日は、小野寺五典防衛相に付き添われ、日本海上自衛隊横須賀基地を訪れ、海自最大の排水量を誇り、「準空母」と呼ばれる護衛艦「いずも」を見学した。現代の「いずも」は日本が建造したものだが、歴史上の戦艦「出雲」は英国による建造で、日露戦争での日本の勝利にも大きく貢献した。
第2次安倍政権発足後、米国の「アジア太平洋へのリバランス戦略」に日本が積極的に加担するようになると、日英の軍事協力もより頻繁に行われるようになった。2013年6月、北アイルランドでのG8サミット期間中、安倍首相はキャメロン英首相と会談し、双方は「情報保護協定」に調印し、防衛と安全保障での協力を強化することで合意した。2015年1月23日、英国のフィリップ・ハモンド外相とマイケル・ファロン国防相は、日本の岸田文雄外相と中谷元防衛相とロンドンで会談した。両国は、軍事訓練や武器開発、サイバーセキュリティーなどの分野での協力強化に合意した。
2016年10月22日、英空軍の戦闘機「タイフーン」4機が日本の青森県に飛来し、日本航空自衛隊のF-15戦闘機4機とF-2戦闘機4機と付近の空域で「ガーディアン・ノース」と名付けられた共同訓練を行った。主な訓練項目には、仮想領空防衛や空中戦、艦船攻撃などが挙げられる。日本自衛隊が、米国以外の安全保障パートナーと、共同軍事演習を日本で行ったのは、これが初めてだった。
今年1月26日、日英両政府は、日本自衛隊と英国軍が物資を相互に提供する「物品役務相互提供協定」に調印した。英国は、米国とオーストラリアに続き、日本とこの種の協定を結んだ3番目の国となった。さらにメディア報道によると、日本政府はすでに、英国政府との「地位協定」締結に向けた準備も始めている。こうしたことからは、日英の軍事協力が、技術協力から戦略協力へ、個別案件での協力から全面的協力へとさらなる発展を遂げつつあることがうかがえる。
両国の軍事協力には日英それぞれのねらいがある。冷戦期には、NATOの一員となることで、英国の衰退の状況は見えなくなっていた。冷戦が終わって実力がわかり始めると、英国は、「虎の威を借る狐」作戦を取るようになった。湾岸戦争とイラク戦争では、米国の忠実な同盟国として米軍と一緒に戦い、莫大な戦費を支払った。だがその効果はいまいちで、ブレア政権は国内世論から激しい反発を受けることとなった。
湾岸戦争からコソボ戦争、アフガン戦争、イラク戦争に至るまで頻繁に続けられてきた戦争は、米国が冷戦時代にためた力をまたたくまに使い果たし、オバマ政権は戦略の縮小を世界規模で行い、英国軍は脇役さえ演じる機会がなくなった。トランプ大統領が「米国優先」で就任すると、米国政府は、国内の問題と経済振興をより重視するようになり、急速に台頭する中国を抑制する「アジア太平洋へのリバランス戦略」には手が回らなくなった。アジア太平洋の同盟国である日本とオーストラリアへの依存度は強まり、日本に軍事力を強化させることをある程度許さざるを得なくなった。
英国は一方、EU離脱の手続きの最中だ。EUを離脱すれば別のところから友を探さなければならず、米国に近づくことは必然的な選択となる。また経済や科学技術の面で大国である日本とも協力を強化し、交流を拡大することも考えられる。
今年7月27日、英国のマイケル・ファロン国防相は、英国が来年、南中国海に空母を派遣して巡航を行い、英国の海上の地位を強める計画であることを明らかにした。これは、米国の「南中国海巡航計画」の脇役を務めることになると同時に、存在感を高めるものともなる。英国はこの付近に、停泊や補給のための港や基地を持っていない。技術や装備、物資供給などで日本と合意を達成しておけば、後々生かすことができる。
日本政府が英国と軍事協力を強化しようとしているのは、遠い国との関係を通じて、近い国との関係に影響を与えるためである。歴史認識の間違いから、日本はしばしば、「慰安婦」や「靖国神社」などの問題をめぐり、中国や韓国から厳しい批判を浴びている。周辺国家との関係を見渡すと、中国とは釣魚島、韓国とは独島、ロシアとは北方四島をめぐる争いがある。これら一連の矛盾によって、日本は、周辺地域での孤立を深めている。域外の国と関係を発展させれば、孤立を和らげることができるし、必要なら意見や道義の上での支持も求められる。
没落した帝国の英国だが、科学技術や経済、教育などではまだまだ国際的に高い地位にある。核大国の一つで、国連安保理常任理事国の一つでもあり、世界的に重要な発言権を持っている。日本が安保理常任理事国入りの夢をかなえるには英国の支持が要る。西太平洋と南中国海に介入する英国の画策も、同地域で発言権を強めたい日本の思惑にかなっている。
こうして中国の台頭に対する複雑な感情と利益の動機づけの下、軍事協力を強化したい日英の足並みはすぐにそろった。
だが日本はもう過去の日本ではないし、中国もすでに過去の中国ではない。10月3日に開かれた2017年英国保守党の年次党大会で、マイケル・ファロン国防相はメディア取材に対し、「英国の戦闘機『タイフーン』は昨年、南中国海の上空を越えて飛行した。今後もそうすることはあるだろう。だが演習はしない。中国への直接的な挑発となるからだ」と語った。「我々は、我々の通航権を行使する。米国人は意見の食い違いのある島嶼の周辺海域で演習を続けているが、我々にはそのような計画はない」
これについて元保守党議員のジェラルド・ハワース氏は、英国は中国による投資と貿易を奨励したいのだと解説する。この発言の意味するところは十分に明確ではなく、ある面では前後で矛盾さえしているが、筆者は、これが前向きな進展であり、古き帝国の実務的な「利益観」と柔軟な知恵を示しているのだと考えたい。
日本と英国はいずれも米国の同盟だが、日英同盟が昔、米国の極東における利益を深刻に脅かすようになると、米国は断固としてこれに反対した。国際情勢は当時とはまったく変わっているが、日英の軍事協力強化を米国が良しと見るかは、英国がもう一度考えるべき問題だろう。(文:呉敏文、国防科技大学情報通信学院勤務)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年10月28日
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