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ダーイッシュを使ったシリアの体制転覆計画の障害になる戦闘沈静化地域を米国が無視するのは必然
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201705080000/
2017.05.08 03:57:49 櫻井ジャーナル
ロシア、トルコ、イランはシリアに戦闘鎮静化地域を設定、航空機の飛行は禁止された。ロシア政府はアメリカが主導する国々も航空機を飛ばすことは許されないと説明している。アメリカのドナルド・トランプ大統領はロシアのウラジミル・プーチン大統領に対し、このプランに賛意を示していたが、5月4日に3カ国が覚書へ署名した直後にアメリカ政府は態度を変え、この取り決めを無視するようだ。シリア政府軍と戦っている戦闘集団もロシア、トルコ、イランの取り決めに従う意思はない。
このシリア政府軍と戦っている戦闘集団をシリアの蜂起軍であるかのように言う人が今でもいるようだが、事実上、アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国々に雇われた傭兵で編成された侵略軍。この事実をアメリカ政府が知らないはずはない。
本ブログでは何度も指摘しているように、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月に作成、ホワイトハウスに提出された報告書によると、シリアで政府軍と戦っているのはサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだとしている。当時、シリアのアル・カイダ系武装集団はアル・ヌスラというタグが付けられていたが、AQIもアル・ヌスラも実態は同じだとしている。これは正しい指摘だ。
バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援すると称して武器/兵器を提供、戦闘員を訓練していた。2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ政権がアル・カイダ系武装集団LIFGとNATOの連携で倒された後、CIAは国務省の協力を得て戦闘員と武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運んでいる。運ばれた兵器の中には毒ガスも含まれていたと言われている。
そうした工作の拠点がベンガジにあったCIAの施設で、クリストファー・スティーブンス大使も工作に参加していた。2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、大使も殺されているが、その前日にスティーブンスは武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていたという。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官はヒラリー・クリントンだ。
シリア政府軍と戦わせる目的で戦闘員をヨルダンで訓練、その工作をアメリカやイギリス助けているとする報道がアメリカ領事館襲撃の後に流れた。10月にアメリカ、イギリス、ヨルダンが反シリア政府軍を訓練、11月には対戦車兵器であるTOW、あるいは携帯型地対空ミサイルのスティンガーの扱い方を教えていたという。こうした戦闘員もアル・カイダ系武装集団へ参加することになる。
2012年8月のDIA報告は、オバマ政権の政策によって東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されていたが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。
ダーイッシュは2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧しているが、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねたパレード、その様子を撮影した写真が伝えられて有名になった。アメリカの軍や情報機関は偵察衛星、ドローン、通信傍受、人間による情報活動などでダーイッシュの動きを把握していたはずだが、動いていない。
2012年8月当時、DIA局長だったマイケル・フリン中将はサラフィ主義者やムスリム同胞団を危険だと考えていた人物で、ダーイッシュが売り出された頃にCIAの幹部などと対立が激しくなり、14年8月に解任された。
アメリカやアメリカの同盟国がダーイッシュと結びついていることはアメリカ側でも認められている。例えば、トーマス・マッキナニー中将は2014年9月にFoxニュースでアメリカがダーイッシュを創設する手助けをしたと発言、統合参謀本部議長だったマーチン・デンプシー大将は同じ月に、ダーイッシュへ「資金提供している主要なアラブ同盟国を知っている」と証言、同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で、中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると発言、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官がアメリカの友好国と同盟国によってダーイッシュは作られたと語っている。
クラークによると、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツは国防次官だった1991年にシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。それだけでなく、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたてから10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国のリストが作成され、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたという。
ネオコンやイスラエルは1980年代にイラクのサダム・フセイン体制を倒したがっていた。それが原因で、フセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤だと考えていたジョージ・H・W・ブッシュやジェームズ・ベイカーと対立する。ネオコンたちのプランは、イラクに親イスラエル派の傀儡政権を樹立、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯を作ってシリアとイランを分断、弱体化させるというものだった。イラクに傀儡政権を樹立することに失敗した後は、破壊と殺戮で破綻国家にしてシリアとイランを分断しようとする。
シリアの東部からイラクの西部にかけてダーイッシュが支配するようになってもシリアとイランを分断できるわけで、ネオコンの影響下にあったオバマ政権、あるいはヒラリー・クリントンなどはダーイッシュを打倒する気はない。
ダーイッシュの打倒を第一に考えたフリンやデンプシーはネオコンにとって排除されるべき人物であり、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を倒しつつあるロシアは許すことのできない敵。ダーイッシュへの支援を妨害することになる戦闘鎮静化地域をアメリカ政府が無視するのは必然だ。当然、そうした動きをロシア、トルコ、イランは織り込み済みだろう。
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