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トランプショック 歴史の必然に希望的観測の能天気<上>
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198099
2017年1月23日 日刊ゲンダイ 文字お越し タイトルは紙面による
常識は通用しない(C)AP
■TPPより恐ろしいNAFTA離脱示唆の衝撃度とグローバリズムの恩恵を受けてきた企業の行く末
就任演説でも「米国第一」の考えは1ミリたりともブレなかった。トランプ新大統領(70)は、失業や貿易赤字に米国民が苦しむ現状を「アメリカの殺戮」というドギツイ言葉で表現し、「保護こそが偉大な繁栄と力につながる」と言い切った。
そして公約通り、就任初日にTPP離脱とNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを表明。日本の経済界に衝撃をもたらしたのは、メキシコとカナダに交渉を拒まれた場合、トランプが「NAFTAを離脱する」と踏み込んだことだ。
1994年のNAFTA発効で米加両国間との関税が撤廃されたメキシコには、北米や欧州向けの重要な輸出拠点として日系企業も数多く進出。その数は昨年1000社を突破した。特に多いのが自動車関連で、大手4社の2015年の合計生産台数は132万台、うち56万台が米国に輸出された(みずほ銀調べ)。
日本貿易振興機構によると、日本企業の対メキシコ投資額は15年までの5年間で約73・5億ドル(約8379億円)。
約10億ドルを投じて19年に新工場を稼働させるトヨタをはじめ、今後も日本の名だたる企業がメキシコに上陸する予定だったが、米国がNAFTAを離脱すればメリットは完全喪失。1兆円に迫る巨額投資が焦げ付きかねない。
「トランプ新政権が保護貿易策を緩める可能性が低い限り、グローバリズムの恩恵を甘受できる時代は終わったのです。日本の経営者もそう割り切った方がいい。ヒト、モノ、カネが自由に行き交う時代で儲かるのは企業だけの論理。労働者は常に途上国の安い賃金と競わされ、生産拠点の海外移転で産業は空洞化し、雇用は奪われた。国全体の消費が冷え込み、米国経済は衰退したというのがトランプ流の見立てで、就任演説でも『中間層の富が世界中に再分配された』と断言しました。この見立ては米国に限らず、日本にも当てはまります。つまり世界の潮流なのです」(経済アナリスト・菊池英博氏)
自由貿易の恩恵を最大に享受してきた英米が内向きにならざるを得ないほど、先進国の格差拡大や雇用問題は深刻化している。“グローバル神話”が行き詰まった時代に、反グローバル大統領の誕生は歴史の必然なのかも知れない。
トヨタも標的に(C)AP
■凋落の覇権国家に「ないものねだり」の大メディアと政権の勘違い
「この日からアメリカ第一のみになる。貿易、税金、移民、外交についてのすべての決定は、アメリカの労働者と家族の利益のために下される」――。
就任演説でそう宣言したトランプの念頭にあるのは、従来の米国が「覇権国家」としての体面を重んじ過ぎてきたとの強烈な思いだ。その結果、他国にあまりにも寛容になり、貿易不均衡や、雇用流出、犯罪増を招いたという理屈である。
演説では「他国の暴挙から国境を守らなければならない。彼らは私たちの商品を生産し、私たちの会社を盗み、私たちの仕事を破壊している」とまで言ってのけた。トランプがグローバリズムとともに一掃しようとしているのが、日本も享受してきたアメリカ頼みの既得権益そのものだ。
朝日の米総局長は就任翌日のコラムで〈自国の国益を追求する姿は露骨であり、世界をリードするという役割は放棄したかにみえる〉と書いたが、その姿こそトランプの本質である。今さら何を言っているのか。米国第一大統領に従来通りの“大国の理念”を求める論調は、それこそ既得権益にしがみつく「ないものねだり」に過ぎない。
「大メディアにはこの期に及んでも『トランプもいずれ分かる』といった調子の楽観論が目立ちますが、単なる希望的観測です。トランプ大統領は選挙中から『米国は債務残高20兆ドルに迫る貧困国』という現状認識で、自国を窮乏化させてまで他国を潤す余裕はないとの考えを貫いています。一国のトップが覇権衰退国家だと自ら認めているのに、これまでのような覇権国家の姿を押し付けるのはばかげた話なのです」(菊池英博氏=前出)
もっともずぬけた能天気は安倍首相その人で、施政方針演説でも相変わらず、TPPを「今後の経済連携の礎」と位置づけ、トランプにあくまで「自由貿易」への転換を求める。
世まい言を繰り返すウラには後ろ暗い野望すら感じる。
■イスラム国との戦闘が始まれば、自衛隊は後方支援を余儀なくされる
トランプは外交の最優先課題に「イスラムテロの壊滅」を挙げ、各国と協力して軍事作戦に当たると明言した。大統領選中から、「アメリカが攻撃されても日本は何もしないが、日本が攻撃されたらアメリカは駆けつけなければならない」と日本を名指しで批判してきた男だ。日本に軍事協力を求める可能性は高い。軍事ジャーナリストの世良光弘氏が言う。
「昨年、安倍政権が安全保障関連法を施行したことで、自衛隊は世界中のどこででも米軍を後方支援できるようになりました。当然、トランプ大統領は日本が集団的自衛権を使えるようになったことを知っている。イスラム国(IS)掃討への自衛隊参加を要請してくるでしょう。安倍政権が拒否すれば、トランプ大統領は『米軍を日本から撤退させる』と恫喝してくる。脅しに屈してIS掃討に協力すれば、日本はアフガニスタンで国際治安支援部隊(ISAF)の任務に当たったドイツと同じ道をたどることになるかもしれません」
ドイツは戦後に制定した憲法で侵略戦争を禁じ、長らく専守防衛に徹してきた。しかし、01年に復興支援を掲げ、後方支援に限定する形でアフガンに派兵。その結果、13年間で55人もの死者を出した。そもそも米国追従の安倍政権は、トランプの命令をはねつけるなんて無理だろう。
「今のシリア周辺はさまざまな武装勢力が混在しており、アフガン同様、戦闘の前線と後方の区別がつかない状態です。自衛隊が後方支援のつもりで米軍の補給作戦に向かったら、実はそこが前線で、戦闘に巻き込まれる事態が十分に考えられる。IS壊滅には少なくとも2年以上かかるとみられ、泥沼のIS掃討に協力すれば、自衛隊が死者を出すのは間違いありません」(世良光弘氏=前出)
平和外交を進めてきた日本は今、破滅に向かって進んでいる。
トランプショック 歴史の必然に希望的観測の能天気<下>
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198101
2017年1月23日 日刊ゲンダイ 文字お越し
安保関連法で加わった新任務「駆けつけ警護」で自衛隊員の命の危険が高まった南スーダンPKO(C)AP
■改めて問われる集団的自衛権行使に踏み切った無定見政権の滞在
これまで日本は、米国から派兵要請があっても、憲法9条が海外での武力行使を認めていないことを根拠に断ることができた。しかし、今後はそうはいかない。安倍政権が憲法解釈を変え、拙速に集団的自衛権の行使容認に踏み切ったからだ。
自民党の閣僚経験者が、「日本はこれから、必然的に米国の戦争に巻き込まれることになるだろう。国民の命と安全を守るのが政府の役目なのに、危険にさらすことになる。安倍政権も無定見なことをしてくれたものだ」と嘆いていたが、まったくだ。
政治学者の五十嵐仁氏が言う。
「安倍政権は最悪のタイミングで安保関連法を施行しました。選挙戦で日米安保条約の不公正さを訴えていたトランプ大統領は、日本が自ら集団的自衛権の行使に踏み切ったのを知り、“飛んで火に入る夏の虫”と喜んだはずです。安倍政権はヒラリー政権になれば、派兵要請を拒否しても許してもらえると甘い見通しでいたのでしょうが、完全に見誤りました。せめて安保関連法の施行延期や廃止に向けて舵を切っていれば、最悪の事態を避けられたかもしれないのに、今となっては後の祭りです」
安倍政権は実際の武力行使について、「状況に応じて総合的に判断する」とあいまいな答弁で終わらせた。戦争ができる「普通の国」になることが悲願の安倍にとっては渡りに船の展開かもしれないが、国民はたまったもんじゃない。
■米中ロが手を結び、ニクソン・ショック再来危機の現実味
米ロ関係も大きく変化する。オバマ政権下ではシリアやクリミアをめぐって米ロが激しく対立してきた。だが、トランプは核削減交渉と引き換えに制裁解除を示唆するなど、プーチン大統領に友好的ともいえる姿勢を示している。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「ロシアはハッキングで米大統領選に介入したといわれ、トランプ氏は“プーチン大統領は尊敬できる”とも発言しています。老獪なプーチン氏はトランプ氏を取り込み、EUを分断するような行為に出ようとするでしょう。問題は安倍政権。米ロが仲良くなれば、プーチン氏は日本に気を使う必要はない。北方領土返還を含めた日ロ交渉が難しくなると思います」
米中関係も気になる。外交評論家の小山貴氏は「米国が対中貿易で莫大な赤字を被っているため、トランプ氏はこれから中国への圧力を強める」と分析する。
その一方で、トランプが中国に対して融和策を打ち出すとの見方もある。トランプは親中派のヘンリー・キッシンジャー氏の側近キャスリーン・マクファーランド氏を大統領副補佐官に任命した。中国大使に指名すると発表したアイオワ州のテリー・ブランスタッド知事は習近平主席を「旧友」と呼ぶほど近い関係だ。
「ビジネスマンのトランプは利益優先です。中国から譲歩を引き出し、中国の国営企業を買いたいとも考えている。1971年のニクソン・ショックのように、トランプが日本の頭越しに中国と手を結ぶ可能性もなくはないのです」(政府関係者)
どちらにしても日本は追い詰められる。
足元を見られている(C)AP
■これを奇貨とし、日米外交の新たな展開を模索する発想がない“能なし”たち
世界秩序は大きく変わろうとしている。明日は我が身で、日本も今後の対応を考える必要があるのに、従来の秩序にしがみつき、「トランプは何も分かってないから自由貿易や日米安保の重要性を教えてやらねば」みたいな寝言をほざいているのが、この国の政府やメディアなのである。
「これまでは、日米同盟を堅持してさえいれば万事OKという方針でやってきましたが、トランプ大統領には従来の常識が通用しそうにない。これは大きな転換点で、米国べったりでやってきた属国外交を再考する、願ってもないチャンスでもあるということです。トランプ氏は実利主義者だからこそ、交渉の余地があり、条件次第で基地問題を解決できる可能性だってある。ところが、今の安倍政権は対米追従の姿勢を改めるどころか、真っ先に馳せ参じて忠誠心を見せることしか考えていない。せっかくのチャンスを生かす知恵がないとすれば、本当にもったいないことだと思います。安倍首相の念頭には常に中国への敵対心があるから、米国という虎の威を借りるために日米同盟の強固さをアピールする。トランプ氏の腹の底が見えない不安から、なおさら追従に走る。この調子では、どんなムチャな要求をされても、言いなりになるだけなのは目に見えています」(元外交官の天木直人氏)
これまで自民党がパイプにしてきた米国の“知日派”は、ほとんどがジャパンハンドラーとも呼ばれる共和党系のネオコンだ。彼らはトランプ政権で脇に追いやられている。
それなのに、既存のパイプに頼るしかない安倍政権は、目の前の現実に対処できず、これまで通りのやり方を続けようとしているわけだ。
トランプ・ショックを奇貨として、新たな展開を模索する発想も出てこないようでは、先が思いやられる。
■早期の日米首脳会談なんてできるのか すり寄るだけでは飛んで火に入る夏の虫
昨年11月、大統領選にトランプが勝利するや、イの一番に駆けつけて黄金のゴルフクラブを贈呈した安倍。「就任後もG7首脳で一番最初に会談したい」と外務省に指示し、日本側は1月27日の会談を打診してきた。
「ところが、就任当日になっても米国側から明確な返事がなく、仕切り直しになった。2月上旬で調整していますが、それもどうなるか分からない。『早く決めろ』とせっつかれていますが、先方の都合もあるので、返事を待つしかありません」(外務省関係者)
ヤキモキする安倍を尻目に、トランプは27日、ホワイトハウスで英国のメイ首相と会談すると発表。“G7で一番乗り”はメイに取られた。
次いで31日には、メキシコのペニャニエト大統領と会談する予定だという。
「新大統領にとってどの国と一番に会うかは、国際的なポジションを固めるための重要なトピックです。米英は歴史的に特別な関係だから、最初の会談には収まりがいい。メキシコとは、国境に壁を建設する構想について話し合う必要があります。安倍首相のように『とにかく一番になりたい』では、つけ込まれるだけです。貿易や安保関係で具体的な要求があったら、その段階で慎重に対応し、会談すればいい。ましてや、今は世界中がトランプ政権を警戒し、様子見をしている最中なのです。就任に当たって、手放しで持ち上げるオベンチャラ祝辞を出したのは、日本の首相くらいです」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)
NAFTA加盟国のカナダとも早期に会談する必要があるだろうし、安倍にお声が掛かるのはいつになるか分からないが、どうせ言うことを聞く日本は、待たせておいて問題ないと足元を見られていることは間違いない。もみ手でスリ寄るから、そうなる。
甘い見通しで、トランプの“君子豹変”に期待するだけのトンチンカン外交では、したたかなトランプにいいようにやられるだけだ。
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