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フランス大統領選挙から見えてきたもの。EUとユーロは残るが、いずれ性格は変わる。
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/228.html
投稿者 晴れ間 日時 2017 年 4 月 23 日 01:56:39: FhUYgDFvAt2/E kLCC6orU
 

フランス大統領選挙での全候補者の主張を整理した。その結果から見えてきたことを書く。

フランス大統領選挙の争点は、「テロとムスリム系移民」を巡る問題ではない。「クローバル化の下での新自由主義」(の推進) に賛同するか否かである。

EUもユーロも残るだろう。しかし、いずれ性格を変える。
EU(ブリュッセル) はこれ以上「通貨」で各国の財政主権を統制することはできない。EUは「平和とヨーロッパ文明」の守護者としてしか存在理由がなくなった。欧州中央銀行は各国国家とは切り離され、通貨「ユーロ」は単なる交易通貨としてしか存続できないだろう。
大統領選挙の結果の如何にかかわらず、それが「民意」である。「民主主義」は「民意」を押し通す。

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立候補者11名のうち、無条件に今のEUを支持しているのは、マクロンとフィヨンくらいなものだ。
マクロンは新自由主義の立場から。フィヨンは古めかしい「サッチャー主義」の立場から。
フランスは「革命」と「社会闘争」の国。フランスの資本家や経営者層や富裕層は、そうしたフランスの「革命伝統」に絶えず脅かされてきた。いくら投資しても国有化/公有化されてしまうのでは意味がない、増税も怖い、という感情が投資意欲を殺いできた。
この不安をなくし、労働組合の力を弱め、グローバル化の中でフランス経済(資本主義)の強化を図ろうとするのが、フィヨンとマクロンの立場だ。
フィヨンは、伝統的なフランスの有産者・保守層の立場なので分かりやすい。

マクロンは、左右に翼を広げてどちらにもいい顔をしているが、これはオバマ流のマーケティングの手法だと言われている。誰にでもいい顔をしたいから、フィヨンよりも公務員削減幅等についてはトーンを弱めている。全ての集団に対して「自分は味方だ」という芝居を打つ。アルジェリアに行っては「植民地主義は人道に反する罪だ!」とぶつ。女性とフェミニストに対しても、同性愛者に対しても、味方であることを強調する。(マクロンの妻が20才年上の女性[高校時代の恩師=国語教師で演劇部の顧問だった]である点は、実際女性受けする。) (マクロンが男性と手をつないでいる動画と「マクロンは同性愛者だ」という噂もネット上で流れている。)
若者には、自分を選べば起業が容易になり、誰でも億万長者になれるような幻想を振りまいている。(フランスではユーバー・モデルは失望しかもたらさなかったが、産業活性化の可能性の方が大きいと思わせる。)

しかしマクロンは、一部の人からは「人形」のように見える。誰かが背後にいる。(ジャック・アタリやオランドが背後にいることは明らかだ。) 身振り手振りや言葉使いまで「演出」されているようにも見える。(彼自身が青年期には作家や演劇家になりたいと思っていたくらいだから、本人自身の「振り付け」かもしれない。)
昨年の「労働法改悪法」を背後で立案していたのもマクロンだ。
マクロンの政策と政治は、そっくりオランド政治(弱者切り捨ての新自由主義) の延長であることは (多少思考力のある人から見れば)明らかだが、それをどのくらい(割合)の有権者が自覚しているか......?

極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペンが大統領になることを何としても妨げたい、と考える人たちは、自分の票が死票にならないようマクロンに投票することはあろう。


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しかし、立候補者11人のうち、現在のEU維持に賛同しているのはマクロンとフイヨンだけで、残り9人は全員が「脱退」か「内部改革」の立場だ。(このうち1人は必ずしも明確ではないが、アサド支持。)
面白いことに、この9名の候補者の中に「元高級官僚」が3名いるのだが、3人とも「今のEU」を否定している。

※この3名の「元高級官僚」のうち、2人は保守派=ドゴール派の流れをくむ。
そのうち Asselineau は、EUもNATOも脱退; 公共部門の公有化を主張。/
Dupont-Aignanは、EUと再交渉し、内部変革することを主張するが、それが不可能なら脱退。同時に今の「マスメディア=カネの力」を強く批判。EU改革ではスペイン・イタリア・ギリシャとの共闘を主張。/
Cheminade は左派系の人物だが、今の「フィナンス」(金融界、金融制度) を強く批判。(欧州中央銀行ではなく)「各国の中央銀行」の設立を主張。

※その他に、トロツキスト系の2つの政党(LOとNPA) から2人が立候補しているが、反EUの立場であることに変わりはない。(この「極左」2政党は、選挙を「自党の主張の宣伝」のために利用しており、次の時代に向けての具体的なブログラムがあるわけではない。)

※残りの1人については、省略。

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こうしてみると、メランションの立場が「何ら特殊なもの」ではないことは容易に理解できる。
それを隠して、メランションを「極左だ!」「急進左派だ!」とか言って騒いでいるのは、金融界の利益と一体化したロイターなどの「既存大手マスコミ」に過ぎないことがわかる。

フランスの大手メディアでは、フィガロ(保守系紙) がこの立場だ。『リベラシヨン』(社会党系) も社会党支持層を(社会党の予備選を制したアモン票を→) マクロンに誘導しようと必死だ。
他方、「クオリティペーパー」の面目にかけてか、『ルモンド』は米国のサンダース支持派から寄せられた「メランション支持をよびかける書簡」を紙上に掲載した。(掲載しただけであって、支持したわけではない。)

なお、メランションが率いる「服従しないフランス」の運動を中心的に担っているのは、スペイン・ポデモスの運動と、米サンダース支持派の運動に続こうとする新世代の運動家たちだ。
2012年の大統領選挙以来、メランションは「第6共和政」(の樹立に向けての憲法改正) を訴えている。現在の第5共和政憲法は、アルジェリア戦争終結のために大統領の権限を異常に強化したものになっている。
(オランドはこれを悪用して、労働法改悪等の新自由主義政策を強行した。その結果、自身は再出馬もできないほど人気凋落し、有権者の政治不信も蔓延させた。その「替え玉」として立候補しているのがマクロンである。背後にそれを操っている勢力がいる。)
メランション支持勢力には、旧左翼党と、党政衰退した共産党と、改悪労働法(エル-コムリ法=別称エル-マクロン法) の廃止を目指す労働組合CGT、その他のオルタナティヴ運動の担い手たちがいる。

社会党は、アモン(ベーシックインカムの導入を主張) を支持する左派と、新自由主義路線の勢力(オランド、セゴレーヌ・ロワイヤル、ヴァルスら) との間で、股裂き状態に陥っている。
政策に共通点が多いアモン支持派とメランション支持派の間で候補者を一本化できなかったのは、エル-コムリ法の撤回・廃止で、社会党がまとまれないからである。社会党は分裂し、消滅する以外にないだろう。

社会党は、すでに半世紀前に「社会主義」を捨てたが、その後も「非共産党左翼」の家(隠れ家) でもありつづけた。党内には、単なる「中央派=(右でも左でもない)中間派」と、「左翼」とが同居していた。しかし経済政策(+弱者保護政策) を巡って両者はしばしば対立した。
メランションも30年間社会党にいたが、かつて最左派だったシュヴェヌマンに続いて、彼も離党して別の党を創った。
オランド政権下、前者(新自由主義派) が党を牛耳る中で、両派の「共存」が難しくなった。金融と資本の力を最大化する「新自由主義」の立場を取るか否かが、両者の分岐点である。


 

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