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北朝鮮独裁者、「身内殺し」の系譜
2017年2月15日(水)10時54分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
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金正男殺害を伝える韓国のニュース番組(2017年2月14日) Lim Se-young/News1 via REUTERS
<北朝鮮の金正恩党委員長の異母兄、金正男がマレーシアで死亡した。北朝鮮の工作員により暗殺されたとみられているが、北の独裁者による「身内殺し」は今に始まったことではない>
北朝鮮の故金正日総書記の長男、すなわち金正恩党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏が暗殺されたとの情報に、各方面が衝撃を受けている。そして、奇しくも今日からちょうど20年前の1997年2月15日、韓国・ソウル市郊外のアパートで、ひとりの男性が凶弾に倒れた。男性の名前は李韓永(イ・ハニョン)。1960年に平壌で生まれた李氏は、正日氏の2番目の妻ソン・ヘリム氏の姉であるソン・ヘラン氏の息子だった。
韓国当局は李氏が射殺された事件を、北朝鮮の南派工作員による最初の脱北者殺害と見ている。そして刺客を放ったのは、外ならぬ正日氏だった。
李氏は、北朝鮮にいたときの本名を李一男(リ・イルナム)といった。平壌では、正日氏夫妻とその息子・正男(ジョンナム)氏と生活をともにし、金王朝の深奥の秘密に通じていた。
同氏はモスクワ留学1期生に選抜され、1978年にモスクワ外国語大学文学部に入学する。フランス語研修のためにスイスのジュネーブに渡るが、1982年、現地の韓国公館を通じて韓国に亡命した。
その後、1987年12月にロシア語放送のプロデューサーとしてKBSに入社。ソウル五輪では通訳兼記者として活動した。
この頃、韓国人女性と結婚して家庭を築き、1990年にKBSを退社し事業家に転身。だが、苦労を知らずに育った上、韓国のビジネス事情に疎いこともあって、商売はまったく上手くいかなかった。
李氏は1996年、金正日氏とロイヤルファミリーの私生活を赤裸々に綴った手記『大同江ロイヤルファミリー・ソウル潜行14年』を出版。それ以降も各種メディアを通じ、「喜び組」や「秘密パーティー」など、体制の恥部とも言える秘話を暴露していく。
(参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖)
正恩氏の私生活も
これに、正日氏は激怒したという。
李氏は1997年2月15日、京畿道城南市盆唐区ソヒョン洞のアパート14階のエレベータ前で、2人組の男に銃撃された。ただちに病院へ搬送されたが、10日後に死亡する。
本人は襲撃を受けた直後、意識を失うまで「スパイ」にやられたと話していたという。現場には北朝鮮の工作員が用いる拳銃の薬きょうが残されていた。また李氏は以前から、北朝鮮からテロ予告を受けていたし、韓国の情報機関も危険情報を入手していた。状況証拠は、北朝鮮工作員による犯行を強く示唆していたが、犯人を特定するには至らなかった。
しかし8か月後、事態が動く。
1997年10月、韓国に夫婦として潜入していた2人の工作員――チェ・ジョンナム(当時35歳・男性)とカン・ヨンジョン(同28歳・女性)が摘発された。いわゆる「夫婦スパイ団事件」である。
2人は韓国当局による取り調べに対し、「李氏殺害は金正日総書記の命により、北の社会文化部所属のテロ要員、チェ・スンホと氏名不詳の20代の男の2人で構成された特殊工作チームが実行した」と供述。殺害実行の1カ月余り前に韓国に潜入していた彼らは、事件後には北に戻って英雄称号を授与され、新たな任務のために整形手術を受けたとも説明したという。
1997年2月は、正日氏の父である故金日成主席の元側近、黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記が中国の韓国大使館に駆け込み、北朝鮮の工作員が周囲を取り巻く中、韓国入りの機会をうかがっていた時期だ。
黄氏は李氏殺害を知り、「亡命直前の私に対する警告だ」ととらえたという。実際、2010年4月20日には、黄氏の暗殺を企てた北朝鮮の工作員2人が韓国当局により検挙されている。
そして今、韓国には最近脱北した北朝鮮エリートたちが様々な情報をもたらし、金正恩党委員長の私生活がまるごと暴かれそうな勢いでもある。
(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳)
この状況下、正恩氏は強力なけん制手段を必要としているはずだ。彼が父親と同じ「選択」をしないとは限らないのである。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
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2017 年 2 月 14 日 18:11 JST
不動産は立地が全てだが、地政学的な挑発行為はタイミングが全てだ。
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2017年2月14日 朝刊
ロイター通信によると、米ハワイでのテニスの女子国別対抗戦フェド杯で十一日、ドイツ−米国戦の試合前に、ナチス時代に歌われたドイツの旧国歌が誤って独唱され、ドイツチームが憤りをあらわにする場面があった。他国の事情に構わない「米国第一」主義などと揶揄(やゆ)されかねないハプニング。ドイツのテニス協会は、全米テニス協会が謝罪してきたとしている。
試合前に男性歌手が歌ったのは「ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ」という一節で始まる旧国歌。一八四一年に歌詞が書かれ、第二次大戦中はナチスの国家主義的なプロパガンダとして使われた。
第一試合に登場したドイツのアンドレア・ペトコビッチ選手は、試合にも敗れ「無知の典型だ。二〇一七年の今、こんな恐ろしいことが起きて当惑している」と語った。ドイツは全試合に敗れ、ベスト4に進めなかった。 (奥田哲平)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201702/CK2017021402000117.html
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