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日経ビジネスオンライン
「少年王・トランプ」は1950年代の米国を目指す
インタビュー
ピュリツァー賞受賞の米フリージャーナリストが解説
2017年1月17日(火)
飯塚 真紀子
「新政権で米国はこう変わる! トランプ解体新書」
2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。トランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。
日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回のインタビューは「トランプ解体新書」にも収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。
「トランプ本」が出版ラッシュとなっている。中でも注目すべきなのは、ピュリツァー賞受賞ジャーナリストらが手がけた書籍だ。昨日は、米ワシントン・ポスト紙のシニアエディターであるマーク・フィッシャー氏のインタビューを掲載した(詳細は「トランプの素顔『本当は孤独に過ごしたい』)。フィッシャー氏は新大統領について、メディア向けの顔と隠された素顔には大きなギャップがあると指摘した。
今回話を聞いたのは、新聞記者時代にピュリツァー賞を受賞し、10冊以上の本を上梓したマイケル・ダントニオ氏。ダントニオ氏は、数年にわたるリサーチとトランプ氏への5時間に及ぶインタビューをベースに、『熱狂の王ドナルド・トランプ』を上梓。その邦訳版が2016年10月に、日本でも出版された。ダントニオ氏は、フィッシャー氏とは異なる視点でトランプ氏を評価する。ダントニオ氏に話を聞いた。
日本では2016年10月に発売された書籍『熱狂の王 ドナルド・トランプ』(クロスメディア・パブリッシング、税込み1922円)。
トランプ氏にインタビューし、どのような印象を持ちましたか。
ダントニオ氏(以下、ダントニオ):トランプ氏について数年間調査し、彼本人にも5時間、インタビューをしました。その中で気づいたのは、彼があまりにも成熟していない人間だということです。子供時代で成長が止まっているように感じられました。
マイケル・ダントニオ氏。フリージャーナリスト、ライター。プルトニウム汚染の脅威を追及した『アトミック・ハーベスト』(小学館)、感染症の恐怖を描いた『蚊・ウイルスの運び屋』(共著、ヴィレッジブックス)をはじめ、これまで10冊以上の本を上梓。米紙Newsdayの記者時代にピュリツァー賞を受賞。
それは感情的な発言を繰り返す彼のツイートからも見て取れます。彼は常に威厳を感じたがっており、人に寛容ではありませんでした。
どんな子供だったのでしょう。
ダントニオ:友達をいじめるような、とてもひどい少年でした。
見るに見かねた父・フレッド氏は、彼を軍隊式学校に入れたのですが、攻撃的な態度は変わるどころか、強化されてしまいました。軍隊式学校では、軍隊的なヒエラルキーを重視する人物がリーダーになります。与えられる特権も、地位によって異なります。彼はそんな環境の中で、権力を持たなければならないという考え方や、自分のすることはすべて正しいという観念を植え付けられました。そうやって生まれた独裁的で未熟な人格が、彼のやることなすことに影響を与えてきたのです。
父のフレッド氏も影響を与えました。ビジネスでは、自分に有利になるように政府のローンを操作して余分な利益を得ていました。例えば中流層や第2次世界大戦の退役軍人の住宅に使われることになっていたお金を操作し、我がものにしていたのです。自分が利益を得るためなら、法に抵触しないギリギリのことまで進んで乗り出す。またアフリカ系米国人を自分のアパートに入居させないなどの人種差別もありました。トランプ氏もビジネスでは同じようなことをしていますが、それは父という悪しきロールモデルがいたからです。
兄の死が反面教師に?
母親や兄姉弟からも、影響を受けているのでしょうか。
ダントニオ:トランプ氏には、フレッド・ジュニア氏という兄がいました。兄はトランプ氏とは対照的に仕事がうまくいかず、42歳の時にアルコール依存症で亡くなりました。トランプ氏が兄について話すのは、人の心を動かせるからでしょう。これも彼の人心操作の一つなのです。
確かに兄の死は悲劇的でしたが、彼が兄の死を悼んでいるのかは疑問です。むしろ兄のことを敗者だと感じ、自分はああなりたくないと反面教師にしているようです。彼は兄の死の前から、兄とは違う生き方をすると宣言していましたが、兄の死はそれを再確認させ、彼にこれまでの生き方を続けるようしむけたのです。
母のメアリー氏は、トランプの女性観に多大な影響を与えたと思います。母は病弱で、彼が軍隊学校に入学した13歳の頃からは別々に暮らしていました。母から十分に得られなかった愛を、彼は女性に求めるようになったのだと思います。
しかし彼は、女性を複雑な人間であるとは考えておらず、自分が求めるものを与えてくれる存在だと考えています。ですから女性と成熟した関係を築くことができません。そのため何度も離婚を繰り返すことになったのです。
同じことは、子供たちとの関係についても言えるでしょう。彼は、子供たちが小さな時分は、あまり彼らに興味を示しませんでした。妻に育児を任せて、働いていればハッピーだったのです。子供たちが大人になって初めて、良い関係が築けるようになった。そんなところも、彼の未熟さの現れだと思います。
何度破産しても苦しまなかった
彼の人格は、ビジネスには、どのような影響を与えたのでしょう。
ダントニオ:彼は何度も破産していますが、面白いのは、彼自身は一度も苦しんでいないということです。ビジネスで失敗すると逃げて、ほかの人に責任を負わせてきました。
例えば彼は、メキシコのある半島に大きなリゾート住宅を作ろうとしたのですが、結局開発できず、頭金を払った人々は大損しました。この時もトランプは、「自分の責任ではない」と逃げました。彼が創設した不動産セミナー「トランプ大学」でも、彼は特別なことが学べると宣伝して学生に多額の授業料を求めましたが、蓋を開けてみれば、公立図書館で無料で得られるようなレベルの内容でした。
問題は、こういう悪事をやってのけても、全く反省しないことです。彼にはとても強いナルシシズムがあるのでしょう。もちろん政治家は、多かれ少なかれナルシシズムを持っているものです。しかし通常ならば同時に、「過ちは恥ずべきことだ」と反省する能力も持ち合わせている。
けれどトランプ氏に「恥だ」と思わせることは難しい。彼はどんなことが暴露されようとも、責任を感じて自分のやり方を変えるようなことはないですから。
トランプ氏、“象徴的な”大統領に?
トランプ氏はなぜ政治に興味を持ったのでしょう。
ダントニオ:彼はニューヨーク市の政治家に献金するような家庭で育ったのです。子供心に、世渡りには政治家の権力が必要だと分かっていました。政治に興味を持ったのは権力が欲しいからです。彼に純粋な政治課題や確固たる政治哲学があるからではありません。その証拠に彼は、ある時はリベラル、ある時は保守、またある時は無党派と、支持政党をころころと変えてきました。
つまり彼にとっては、自分が成功しさえすれば、どの政党でもよかったわけです。これはとてもひどいことです。彼は「賞」を追求することが何より重要なわけですから。そして彼にとって、最大の「賞」が大統領の椅子だったのです。
トランプ氏はどんな大統領になると思いますか。
ダントニオ:これまでの彼の生き方を考えると、就任後に彼がまっとうな人間に変わることは、期待できません。政治でも、わずかな決断は彼自身が下すでしょうが、具体的な政策を実行する時には側近に権力を与えることになると思います。その意味では、英国の女王のような象徴的な存在になるのかもしれません。もちろん英国女王以上の意思決定権は持つでしょうが、象徴的な役割の方が大きくなると読んでいます。
トランプ政権の下で、米国はどんな未来図が描かれるのでしょう。
ダントニオ:彼は、未来図は描いていないと思います。描いているとすれば、彼が幼少期に目にした、米国が力を持っていた1950年代の過去の姿でしょう。
当時、世界の50%の製造業が米国に集まり、大きな富が米国に集中していた。ほかの国々の産業は戦争で破壊されていたけれど、米国だけはリッチでパワフルな状態を維持していた。
しかし現在は富とパワーは世界中に広く分配されています。トランプ氏はそれを受け入れられないのでしょうが、米国が50年代に戻ることは不可能です。それでもあえて後戻りしようとするなら、最終的に世界で大きな混乱が生じることになります。
減税措置と赤字を生み出す財政出動で経済は活気づき、インフレが起こり、一時的には、経済が回復したように思えるかもしれません。けれど、それも長続きはしないと思います。彼が4年の任期を終えるまでには、たくさんの危機に見舞われることになるでしょう。
世界のリーダーは、トランプ氏にどう対応したらよいのでしょう。
ダントニオ:トランプ氏は一言で言えば、“Boy King”、つまり「少年王」なのです。歴史的に“Boy King”の周囲には、とてもパワフルな側近たちが集まります。そのため世界のリーダーたちは“Boy King”の発言は無視し、「トランプ内閣」にいる側近たちとやりとりをして最善を願うほかないのかもしれません。
日経ビジネス 「トランプ解体新書」発売中
「新政権で米国はこう変わる! トランプ解体新書」
2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売中です。ぜひ手に取ってご覧ください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/011300072/
トランプ氏の素顔「本当は孤独に過ごしたい」
インタビュー
ピュリツァー賞受賞の米ジャーナリストが暴いた正体
2017年1月16日(月)
飯塚 真紀子
「新政権で米国はこう変わる!トランプ解体新書」
2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回のインタビューは「トランプ解体新書」にも収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。
「トランプ本」が出版ラッシュとなっている。中でも注目すべきなのは、あるピュリツァー賞受賞ジャーナリストが手がけた書籍だ。米ワシントン・ポスト紙のシニアエディターであるマーク・フィッシャー氏は2016年、国内報道部門でピュリツァー賞を受賞、調査報道記者であるマイケル・クラニッシュ氏や総勢20人以上のワシントン・ポスト紙の取材班と、25時間以上におよぶトランプ氏へのインタビューを敢行し、著書『トランプ』を上梓した。フィッシャー氏が見たトランプ氏の実像とは。話を聞いた。
日本では2016年10月に発売された書籍『トランプ』(文藝春秋、税込み2268円)。トランプ氏自身は、この本について「ワシントン・ポスト紙が、奴らの不正確な記事を混ぜこんだ俺についての本を緊急出版した。買うな!退屈な本だ」とツイートした。
マーク・フィッシャー氏。ワシントン・ポスト紙のシニアエディター。30年以上同紙で活躍し、ベルリン支局長などを歴任。フィッシャー氏の執筆した記事は、2014年には公益部門、2016年には国内報道部門で、ピュリツァー賞を受賞
トランプ氏はビジネスの成功者だと自負していますが、経営者としての半生をどう評価していますか。
フィッシャー氏(以下、フィッシャー):トランプ氏はまるでジェットコースターのようなビジネス人生を送ってきました。最初のニューヨーク・マンハッタンのホテル開発では成功しましたが、アトランティックシティーのカジノリゾートホテル開発では大きな負債を抱え、6回もの破産を繰り返しました。
彼がビジネスで注力したのは、イメージ作りやブランディングです。トランプ氏のパーソナルブランドを作り、人々を奮い立たせるような存在になれば、消費者は自分の売るものを買うと考えたわけです。
もともとトランプ氏は、父・フレッド氏から大きな影響を受けています。フレッド氏は、ニューヨークのブルックリンやクイーンズで、アパートなどの不動産を開発して成功しました。けれどフレッド氏はあの時代では珍しく、離れ業によって人々を魅了した。例えば夏、観光客でごった返すビーチの上空にセスナを飛ばして、開発中の物件を宣伝しました。ビジネスではビッグに売らなければならない。トランプ氏は、父の背中からそんな哲学を学んだわけです。
母のメアリー氏も彼に大きな影響を与えました。母はパーティーなどの社交の場では常に中心にいたがるような、華やかでパフォーマンス好きな女性でした。トランプ氏もパフォーマンス上手ですが、それは母親譲りだと彼自身も話しています。
彼は、舞台のようなパフォーマーとしてのビジネス人格を生み出して人々を引きつけることで、物を売ることができると考えたのです。つまり父からは宣伝の重要性を、母からはパフォーマンスの重要性を学んだと言えます。
偽名使って自分でメディアに“売りこみ”
具体的にはトランプ氏は、どんなブランド作りをしたのでしょう。
フィッシャー:彼が生み出したのは「トランプ」というゴージャスなライフスタイルブランドです。彼自身のようなリッチなプレーボーイが送っているライフスタイルを提供するブランドを生み、それをメディアで宣伝すれば消費者が飛びつくと考えた。「トランプ」の名を冠するゴルフ場やホテルに来たり、マンションを買ったりしてくれるだろう、と。
父は中流向けの住宅を開発していましたが、彼はもっとハイレベルのライフスタイルにフォーカスした。「ライフスタイルブランド」という言葉は、近年でこそ注目されていますが、1970年代からこの切り口でマーケティングし、消費者を獲得していたという点で、彼は時代のはるか最先端を行っていたと思います。
ブランドを売るため、トランプ氏はメディアを巧みに利用しました。彼自身、偽名で自らの宣伝をしたほどです。例えば、彼は「ジョン・バロン」や「ジョン・ミラー」という偽名を使ってニューヨークの新聞記者に電話し、「トランプが今夜スタジオ54(ニューヨークにあるクラブ)に、ホットなセレブと現れる」と情報を流してメディアを集めたこともありました。自分の派手な生活を、メディアを活用して消費者に知らせるマーケティング戦略を取ったわけです。
カメラマンが消えると女性への興味を失う?
つまり我々が目にしてきたトランプ氏の姿は、彼が生み出したビジネス人格である、と。本来のトランプ氏はどんな人物なのでしょう。
フィッシャー:トランプブランドの中の彼は、本来の姿とは異なります。
今回取材して分かったのは、彼が一人で行動するタイプの人間だということです。彼はああ見えてとても孤立した生活を送っている。
1970〜90年代に彼と交流した女性たちに話を聞いたのですが、トランプ氏は、いったんカメラマンがいなくなると、取り巻きの女性たちには興味を示さず、そそくさと一人で自分のアパートに帰り、テレビを見ていたそうです。
基金集めのパーティーに参加した時も、アシスタントに「すぐに家に帰るには、いくらの小切手を書けばいいんだ?」と聞いたとか。つまり、彼は、本来はあまり人々とは交わりたがらず、一貫して一人で家にいたいと思っている。
「100倍返し」を教えたある弁護士
あのアグレッシブな姿からはとても想像できません。
フィッシャー:トランプ氏のアグレッシブな姿勢に影響を与えた人物として、ロイ・コーン氏という、マッカーシズム時代に赤狩りの急先鋒に立った悪名高い弁護士がいます。彼はトランプ氏に、法律的な攻撃を受けたら、100倍で反撃すべきと教えました。そのため彼は黒人にアパートを賃貸しないという問題で司法省から訴えられた時にも、コーン氏のアドバイスに従って反訴を起こして司法省を攻撃しました。
またコーン氏は、議論を引き起こすようなネガティブな報道でも宣伝効果があるので喜んで受け入れるようトランプ氏に教えました。トランプ氏はそれに従い、離婚話などの個人的なスキャンダルが新聞の一面を飾っても受け入れてきたのです。
トランプ氏は表舞台ではアグレッシブですが、舞台裏でははるかに穏やかで柔軟性があります。例えば彼はよく「訴訟は解決しておらず、激しく戦っている」と表向きには言っています。けれど実際には訴訟の多くは解決しているのです。
私がインタビューした時も、選挙戦で見せた激しい姿勢ではなく、ずっと温厚で、理性的で、人の話に耳を傾ける謙虚な対応でした。彼と交渉したことのある人たちも、「彼は楽勝で交渉しやすい相手だ。自分が譲歩したことが世間に知られなければ譲歩もしてくれる」と話していました。
つまりトランプ氏の場合、メディアに見せる人格と、舞台裏の実際の人格の間には大きな隔たりがある。彼の会社の幹部も「トランプ氏がなぜあんな言動をするのか、動機は何なのか、疑問に思うかもしれません。けれど彼は常にショーマンだと考えれば理解できます」と言っていました。過激なパフォーマンスは、人々に刺激を与えて楽しませ、「セレブ」という虚飾に磨きをかけるために行っているのです。
トランプ氏は「本は最後まで読まない」
ほかにも取材を進めて、意外に感じた部分はありましたか。
フィッシャー:彼は、皆が思っているほど有能なビジネスマンではないということです。ブランディングに力を入れているため、日々の細かい商売には関わっておらず、企業経営については幹部らに任せています。
そのため幹部たちは自由裁量で働いているのですが、問題が起きることもあります。例えば幹部たちが仕事の実績をトランプ氏のものとせずに自分のものだと奪おうとする場合。トランプ氏は、あくまで自分に忠誠を尽くす部下を好みます。それは新体制の人選にも表れています。
またトランプ氏は、ビジネスでは報告書を読まず、そのことに誇りを感じている点もユニークですね。彼は部下に、「本は最後まで読まないんだ」と自慢したそうです。私たちに対しても、「大統領になっても報告書やブリーフィングは読まない」と言い張っていました。
驚いたので、「ではどうやって、複雑な問題に対して、迅速に対処するのでしょうか」と聞くと、「アドバイザーに数十秒話してもらえば、決断力があるから適切な対処法が分かるんだ」と答えました。つまり彼は、自分の直感と決断力に最高の自信を持っている。これまでも、その直感と決断力で物事を決めてきたのでしょうね。
忠誠を尽くして助言する存在といえば、今後は長女のイバンカ氏が重要な役割を果たしそうです。
フィッシャー:実際トランプ氏は、イバンカ氏は自分の一部なのだと考えているような、子供っぽいところがあります。彼に「危機に直面した時は、誰に相談するのか」と聞いたのですが、彼は友人の名前は全く思いつかず、「親しい友達はいないから、イバンカと2人の兄弟だ」と答えました。それだけ彼は、イバンカ氏を深く頼っている。彼女を、政界やビジネスから外すという考えにも反対していて、両方に関わらせたいようです。しかし明らかに、反倫理的な利益相反に直面することになります。
言葉通りのポピュリスト、トランプ氏
トランプ氏はビジネス上はリッチなライフスタイルを演出していますが、大統領としてはどんなイメージを打ち出すのでしょう。
フィッシャー:今のところ、彼は選挙戦で主張していたイメージを維持しようとしています。だから、今も不適切なツイートも続けています。
また、当選させてくれた国民に謝辞を述べるためのラリーにも行っています。これはオバマ大統領とは対照的な動きです。オバマ大統領は当選後、選挙戦で見せた人格を完全に失ってしまった。ラリーも行わず、国民にも話しかけず、大統領選で勝った後のオバマ氏は、完全に選挙戦の時の姿を消してしまった。そして注意深く、駆け引き上手な、如才ないリーダーに納まった。
けれどもトランプ氏は、当選後も選挙の時の「熱狂モード」を維持しようとしている。政治的には非常に賢明な判断です。もっとも、そんな選挙モードを選挙時の公約と結びつけるには巧妙な術が求められますから、なかなか難しいかもしれません。
実際、当選後の彼の主張は、既に選挙公約から遠ざかっているものも多い。もともと彼には、主義や価値観といったイデオロギーが全くありません。非常に実利的で、状況主義者で、人々がいるところに行くという、辞書にある通りの「ポピュリスト」そのものなのです。そのため彼自身、選挙公約をいかに政策にするのかという難しさを感じ始めていることでしょう。
また大統領の重要な仕事の一つが「説得」です。彼がこれから、議会や国民をどう説得していくのか分かりません。当選したことで、ある程度は国民の信頼を得られたはずです。けれど彼は、これまでの大統領と比べると最低レベルの人気度と信頼度からスタートを切ることになる。
大統領就任後には混乱が予想される、と。
フィッシャー:見ての通り、混乱は既に始まっています。彼はビジネスでやってきたことを、政治でもやろうとしていますから。彼はこれまで、自分に忠実な人材ばかりではなく、敵対する人材も同時に雇ってきています。賛成者と反対者の両方を競わせ、クリエーティブなアイデアを生み出そうとしてきた。
同じように政治でも、味方と敵を閣僚に入れて良いアイデアを得ようとしています。しかし政治とビジネスとでは全くスケールが違います。
「これからは国民のために」と語ったトランプ氏
富裕層のトランプ氏に、国民感情を理解できるのでしょうか。
フィッシャー:難しいでしょうね。私も疑問に感じて、彼に聞いたのです。「あなたは長い間、競争相手を傷つけたり、建設業者から訴えられたりしてきました。あなたの成功の陰にはたくさんの傷ついた人たちがいるのです」と。するとトランプ氏は、「私はこれまですべて、“ドナルド・トランプ”のためにやってきた」と説明しました。
「では、どうやって3億人の国民の代表になるのでしょう」と問うと、こう答えたんです。「変わらなければならないな。“ドナルド・トランプ”のためにしてきたことを、これからは国民のためにするよ」。彼は、自分が変われると純粋に信じているようでした。
しかし、これまでの彼のビジネス人生を見ると、本当に変わることができるのかは疑問です。金銭面においても振る舞いにおいても、彼はこれまで、自分以外の人々の利益にかなうよう思いやったり、自ら進んで犠牲になったりするようなことをしてこなかった。そんな彼が、自分の人気を犠牲にしてまで、国民の将来のためになるステップを踏むでしょうか。それを考えると、彼にとっては大統領という職務は全く新しい挑戦になるでしょう。
トランプ氏に世界のリーダーはどう対処すればいいのでしょう。
フィッシャー:世界のリーダーにとっても、対処の難しい存在になるでしょうね。リーダーの中には、彼のビジネスの良いパトロンになることで、優位に立とうとしている人も出てきています。明らかに利益相反が生じている。
繰り返しますが、トランプ氏は報告書を読みません。個人的な面談やテレビなどを通した口述情報を重視するタイプなので、トランプ氏にアピールするために必死にメディアに出るリーダーもいます。そういう意味では、日本の安倍首相が真っ先に面会に駆けつけたのは、賢明な判断だったと言えるでしょう。
今後も、面談を通してトランプ氏との関係を構築しようとするリーダーは、アドバンテージが得られると思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/011300071/?ST=print
トランプ陣営、ホワイトハウスの会見場移動検討 記者協会は反発
[ワシントン 15日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領の陣営は、現在ホワイトハウスのウエストウイングにある記者会見場を移動する可能性がある。プリーバス次期大統領首席補佐官が15日明らかにしたもので、より多くの内外報道機関を受け入れるためという。
14日付のエスクァイア誌は、次期トランプ政権はプレスルームをホワイトハウスに隣接するアイゼンハワー行政府ビルに移動する計画と報じていた。同ビルは、ホワイトハウスの敷地内にある。
プリーバス氏は15日、ABCの番組に対し、次期トランプ政権の陣営は会見場を手狭なウエストウイングからアイゼンハワービルに移動する可能性を検討したと述べた。
現在の会見場は大統領執務室から至近距離にあるため、移動が実現すれば記者にとって取材アクセスが変化することになる。
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ホワイトハウス記者協会は「大統領や顧問らをホワイトハウス内部の報道陣の目から遮断するようないかなる動き」にも反対するとの声明を発表。現状の会見場維持と、政府高官に対するアクセスの開放性維持を目指して戦うと述べた。
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焦点:対中強硬姿勢のトランプ氏、次期政権内では意見不一致も
[ワシントン 13日 ロイター] - 20日に発足する米国のトランプ次期政権は、中国に対し強硬姿勢を示したことで、安全保障から貿易やサイバー空間に至るまで広い範囲で対決することになった。だが、トランプ氏にどの程度準備があるのかは不透明であり、次期政権内部からは矛盾するメッセージも発せられている。
トランプ氏が次期国務長官に選んだティラーソン氏は11日、米国は中国に対し、南シナ海の人工島へのアクセスを認めない姿勢を示すべきだと発言し多くの議論を呼んだ。
トランプ氏の政策顧問によるとティラーソン発言は、武力衝突のリスクを伴う人工島の海上封鎖を、新政権が意図していることを示したものではないとする。ただ、別の政権移行チームのメンバーはこの見解を否定。ティラーソン氏が中国の人工島アクセスを認めない態度を表明したのは「失言ではない」と主張した。
移行チーム内部では、政策上の対立がうかがえる中、南シナ海での中国の台頭に対抗する計画が練られている。
政権移行顧問はロイターに対し、南シナ海への2隻目の空母配備ならびに駆逐艦、攻撃型潜水艦の追加投入、ミサイル防衛システム用の電源拡充、さらには日本やオーストラリアでの基地増設などを検討していることを明かした。北朝鮮と国境を接する韓国で、米空軍に「長距離打撃爆撃装備」を配置することも考えているという。
トランプ氏自身は海軍の艦船を350隻に増強する意向を示しているものの、ほかにも巨額の支出が見込まれており、政権移行チームは海軍増強資金をどう手当てするか明らかにしていない。
中国外務省は、ティラーソン発言の意図は不明だとした。ただ、中国共産党機関紙「人民日報」系の国際情報紙は13日、人工島へのアクセスを米国が阻止するなら「大規模な戦争を行う」覚悟が必要だと警告した。
ティラーソン発言は政府が長年コミットしてきた「航行の自由」に矛盾するとみられ、国防長官に就任する予定のマティス元中央軍司令官は賛同していない。
マティス氏は、中国の南シナ海における活動は世界の秩序に対する攻撃につながると述べた。ただ、米国と国防省は「不完全もしくは一貫しない戦略に対応する必要が生じないよう」、調和のとれた政策をまとめ上げる必要があるとも話した。
トランプ氏は選挙戦中に再三、中国は貿易面で米国に「性的暴行」を加えていると激しく非難してきた。同氏が直面する最大の外交的問題へ新政権はどうアプローチするのか。相反するメッセージは、そこに困難があることを浮き彫りにしている。
<リスクと報復>
移行チームに非公式に助言をしている政府元高官は、米国が軍事や貿易で中国に圧力をかけた場合のリスクをチームは十分考慮していないと指摘。ロイターに対し「中国からの報復などを過小評価すべきではない」とくぎを刺した。
トランプ氏は中国製品への報復関税も示唆しており、両国だけでなく世界経済にも悪影響を及ぼすリスクが出ている。
トランプ氏は国家安全保障に関連して、アジア地域に関する経験を豊富に有する高官をまだ指名していない。より安定したアジア政策を策定するためにレトリックを行動に変換する専門知識が、新政権には不足するのではないか――アナリストにはそう考える向きもある。
だがトランプ氏は、中国に対し批判的な考えを持つロバート・ライトハイザー氏を米通商代表部(USTR)代表に指名。新設する「国家通商会議」には、著作「Death by China」(中国が破滅をもたらす)で知られる対中強硬派エコノミストのピーター・ナバロ氏をトップに据えることを決めた。
トランプ氏の顧問らは、「力による平和」を追求する姿勢は米国のアジア政策を強化すると主張。こういったアプローチが危険であり逆効果を生むとの懸念を一蹴してみせる。
トランプ氏と閣僚候補者らは、北朝鮮の核やミサイル問題に関しても、解決に向けて中国に圧力を強めていく考えだ。だがアナリストらによれば、米国がサイバー攻撃などの問題に関し中国への圧力を増すのであれば、中国側は協力する気はないという。
今年は5年に1度の中国共産党全国代表大会を控えており、権力基盤の強化を狙う習近平国家主席の下、台湾や南シナ海といった重大な国家主権の問題は強い反応を引き起こすとの見方は多い。
北京大学のZha Daojiong教授は、文明間の衝突というテーマは中国社会で一段と取り沙汰されるようになっており、悪い前兆だと指摘。「南シナ海を巡って、米国で士気を鼓舞する太鼓が鳴り続けても、問題解決にはまったくつながらない」と語った。
(Michael Martina記者、Christian Shepherd記者 翻訳:田頭淳子 編集:高木匠)
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