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兆候ナシの火山も危険「どこで噴火してもおかしくない」と専門家
https://smart-flash.jp/sociopolitics/34793
2018.02.25 週刊FLASH
氷点下10度のサラサラした雪質と温泉で有名な観光地。1月23日午前10時、草津国際スキー場で白根火山ロープウェイのゴンドラに乗ったスキー客は、わずか100メートル先で起こった噴火に慄いた。なんの前兆もなく、噴火口でもない場所。噴火の危険は新たな局面を迎えた。
「いきなり森の中から噴火が起こった。地震や地盤の変動、ガスの検知など噴火の兆候は一切なし。まったくノーマークの山が噴火した。これは重要な問題を投げかけている。これまでの観測方針を転換しないといけません」
20年以上草津白根山の観測を続けてきた東京工業大・草津白根火山観測所の野上健治教授は、同山を構成する本白根山の噴火を目のあたりにし、「考えを根底から覆された」と述べた。
いったいなぜ、なんの兆候もない火山が噴火したのか。今回の噴火は2011年3月11日に発生した東日本大震災が要因だと指摘する研究者がいる。立命館大・歴史都市防災研究所の高橋学教授だ。
「大震災以降、太平洋プレートが、北米プレートの下に沈み込む速度が格段に速まった。これまでは年に10センチ程度だったが、今は年に30センチから40センチに達している。
沈み込んだプレートは溶けてマグマになる。今、特に東日本で、大量のマグマがすごい勢いで供給されているのです」
大量生産されたマグマは、地盤の弱いところから噴出する。
高橋氏によると、20世紀以降、マグニチュード8.5以上の地震が起こった地域では、数年後に必ず大きな噴火が発生しているという。まだ大噴火が起こっていないのは日本だけだ。
「昨年12月、ロシア・カムチャッカ半島で大噴火が発生しています。噴煙は15キロにも達した。これは東日本大震災の影響です。
本白根山の噴火は、国内で初めて東日本大震災の影響で起こった噴火だといっていい。今後、北海道や東日本の活火山は、より重点的に監視しなければいけないと思います」
■気象庁も観測体制を見直し
高橋氏が警戒すべきとした活火山は地盤が弱いとされる14カ所。だがほかの火山が安心というわけではない。
「現在の日本で死火山、休火山という言葉はありません。今回のように、噴火口など関係なく、どこで噴火してもおかしくない。そんな時代なのです」
琉球大学の木村政昭名誉教授も噴火と地震の関連性を指摘している。
「地震と噴火は、同じ力から発生する現象です。プレートが押し縮められると、内陸の火山の下にあるマグマ溜まりが押されて上昇する。それが噴火につながります。さらにプレートが押されると、今度は大地震につながる」
木村氏が大地震の可能性を指摘するのは、北海道東方沖と青森県東方沖、伊豆諸島沖、日向灘南部沖の4カ所。プレートの圧力による噴火の危険を指摘した火山は15カ所に上った。
「火山が噴火した場合は、巨大地震につながる可能性が高い。マグマの流れを把握するための対策が急務だ」
一方、気象庁は今回の噴火を受けて観測体制の見直しを迫られている。
「草津白根山の観測体制があれば、周辺の観測もできると思っていた。だが、浅いところで噴火が起こり、変化を観測できなかった。緊急に地震計と空振計、カメラは設置した。観測体制を再検討をしなければ」(気象庁火山課)
火山大国・日本。万全の備えが必要だ。
【専門家が指摘する危険活火山】
●十勝岳 危険度★
直近15年の噴火警報:1回
1926年の噴火では、残雪を溶かして泥流が発生、上富良野町を襲い死者、行方不明者144名の大災害をもたらし た。1962年の噴火でも死者、行方不明者5名を出している。 1988年から1989年にかけて小噴火したが、それ以降は沈静化している。だが火山活動は今後活発化しそう。
●雌阿寒岳 危険度★
直近15年の噴火警報:4回
阿寒カルデラの南西壁上にあり、ポンマチネシリや阿寒富士など8つの小さな火山から構成される火山群。木村氏が発生を予想していた北海道東方沖地震との連動による影響を受けやすい場所に位置。2015年7月から火山活動が活発化、一時噴火警戒レベルが「2」になった。
●有珠山 危険度★
直近15年の噴火警報:0回
2000年に噴火した際には、新たな噴火口を形成した。有珠山はほかの火山よりマグマの蓄積量が多いとみられ、すぐに噴火につながりマグマを流出させやすい。2000年の噴火は、1994年の北海道東方沖地震の影響を受けてのもの。道内で有珠山だけが噴火したのは、マグマの量が群を抜いて多かったため。
●蔵王山 危険度★
直近15年の噴火警報:1回
歴史上、長く噴火を繰り返してきた。噴火の中心は五色岳で、火口に「御釜」が形成されている。20世紀は火山活動がほぼなかったが、2013年以降に火山性微動が増加。2014年に御釜が2度白濁し、噴火警戒レベルが「2」に引き上げられた。御釜の沸騰が噴火の目安になる。
●榛名山 危険度ゼロ
直近15年の噴火警報:なし
高橋氏と、東工大の野上氏が危険を指摘する榛名山。古代に繰り返された噴火で火山の上に溶岩ドームが形成され、複雑な形をしている。最後の噴火は1500年ほど前。気象庁は警戒するレベルにないとしているが、不気味な静けさだ。
●草津白根山 危険度★★★
直近15年の噴火警報:2回
1976年に火山性ガスにより死者3名が出たことがあった。1983年の噴火以後活動は収まっていたが、2014年からは火山性地震が周囲で増加している。今回の本白根山の噴火では影響がみられず、データの変動がなかった。毎年噴火を想定した避難訓練がおこなわれているほどで、警戒が続く。
●浅間山 危険度★★
直近15年の噴火警報:5回
1108年の天仁噴火では、約30億トンの噴出物を出したと考えられている。1783年の天明噴火では火砕流が発生、1000人を超える犠牲者を出した恐るべき火山だ。2003年以降も毎年のように噴火が続き、周辺の農作物に被害をもたらしている。大規模噴火に留意すべき火山である。
●霧島連山(新燃岳) 危険度★★★
直近15年の噴火警報:9回
2011年に爆発的噴火を起こしたことは記憶に新しい。このときはマグマが上昇し、火口底が噴火後に150メートルも上昇した。2012年以降は地殻変動が収まり、火山性地震のみが発生しているが、地下のマグマ溜まりは膨張の傾向を示しており、今後も引き続き警戒が必要である。
●桜島 危険度★★★
直近15年の噴火警報:21回
火山灰の総噴出量を検証すると1984年までの10年間で巨大噴火を終えた量に達しており、一度極大期は過ぎている。しかし、現在新たな局面に突入、噴火を繰り返している。ガス成分が多く、火山灰の噴出が主だが、マグマにも要注意。
※「危険度」は、気象庁発表の噴火警戒レベル(2018年1月26日現在)
1は状況に応じて火口内への立入禁止、2は火口周辺への立入禁止、3は入山禁止。
※「直近15年の噴火警報回数」は、気象庁の発表による
(週刊FLASH 2018年2月13日号)
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