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ニトリ会長が2018年の日本経済を大予測!「今年はズバリ…」 経済予測を的中させる「財界の千里眼」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54073
2018.01.25 週刊現代 :現代ビジネス
「経営者は先を読むことが大切な仕事」。似鳥会長はそう語る。目先のことばかりにとらわれていては、企業も個人も「勝てない時代」。なるほど、日本経済のこれからはこんなに変わっていくのか!
株価はこう動く
経済界一、経済予測を的中させる男――。
ニトリホールディングス(HD)会長の似鳥昭雄氏(73歳)は、財界でそう呼ばれる。
毎年、年始に予測する株価、為替は連続的中。ニトリHDの経営は為替が1円円安になると15億円の営業利益を失うが、似鳥会長の予測をもとに為替予約契約をすることで、直近6年間で約630億円もの為替リスクを回避してきた。
同社は30年連続の増収増益中だが、その驚異的なパフォーマンスを支えているのが似鳥会長の経済予測なのである。
Photo by GettyImages ニトリ会長 似鳥昭雄氏
ニトリHDの東京本部(東京・北区)。応接室に姿をあらわした似鳥会長はさっそく、「いまの相場はそれほど長く続かないと思うんですよ」と語り出した。
'17年の日本市場が株高、円安で盛り上がったのは周知の通り。特に日本株は史上初の16連騰を演じるなど、バブル崩壊後で最大の株高ブームに沸いた。
しかし、'18年以降はそうはいかない。似鳥会長はそう予測するのである。
「確かにいま株価は高くなっていますが、私は日本の株価、為替を予測するには、アメリカの動向を読むことが最も大切だと思っています。
そのアメリカは景気拡大局面が100ヵ月以上続いていますが、戦後、これほど長く景気拡大局面が続いたのは過去にほとんどなく、本来であればもう下降局面に入っていてもおかしくない。
それが'17年1月にトランプ政権が誕生して、『アメリカファースト』との掛け声が国民の期待感を引き上げたことで、景気が持ち直した」
――その期待感が'18年中には息切れする、と。
「その通りです。おそらく、アメリカは'18年中に下降局面に入るでしょう。トランプが掲げた政策はうまくいかない。いまは法人税減税に沸いていますが、じつは別のところでは増税しているのだから、冷静に見ると経済効果はあまりない。
そうした政策への期待感がなくなるのが'18年中だと思います。当然、アメリカ経済が失速すれば、日本の株価、為替市場には影響が出てきます。
私の見立てでは、その失速がはっきりしてくるのは'18年の第3四半期(10〜12月期)くらい。そこから第4四半期('19年1〜3月期)にかけて、状況はだんだん悪くなっていく。
その動きに連動して、まず為替市場が円高に振れていく。'18年は1ドル=100円近くまでいく場面もあるかもしれませんが、年末に1ドル=105〜108円前後というのが無難な予測ではないでしょうか。円高によって株価も低迷し、日経平均株価は2万円をきるのではないか」
為替は1ドル=110円を割り、株価も2万円を下回る――。これが似鳥会長の頭の中にある「2018年のニッポンの姿」なのである。
「消費傾向」が変わった
「景気も晴れ時々曇りで、デフレ景気はまだまだ続いていく。主要30業種で好景気なのは通信、旅行、電子部品など6業種で、あとは6業種が薄日、残り18業種が曇りか雨。中小企業も曇りか雨なので、国内に楽観できる要素はないですよ。この資料を見てください」
そう言って似鳥会長が取り出したのは、経営判断のために作成しているオリジナルのデータ集だ。
その資料には、スーパー、百貨店、ドラッグストア、アパレル、住宅産業などについての詳細な経営データがズラリと並ぶ。
中でも、業界大手各社について、月別の既存店売上高が前年同月比でどれだけ増えたか、減ったかを直近1年分列挙した資料は圧巻。
前年比でプラスの場合は「黒字」、マイナスの場合は「赤字」で記しているため、一目でその会社、業界の好不調がわかってしまう。
似鳥会長がその資料を一枚、一枚とめくると、目に飛び込むのは赤、赤、赤……どの業界も売り上げ減少に歯止めがかからない不況局面に入っていることがわかる。
「たとえばホームセンターが、『真っ赤』でしょう。この5〜6年、ホームセンター業界は需要が増えていないんです。
それなのに、お互い出店ラッシュで限られたパイを喰い合ってしまっている。最盛期のホームセンターは坪当たり年間340万円くらいの売り上げだったのが、いまは平均70万円くらいまで下がっている。一店あたりの面積拡大とオーバーストアが原因です。
住宅産業の動向は景気のバロメーターで、新設住宅着工戸数が年間120万戸を超えると景気がいい。日本の人口約1億2600万人のうち1%に住宅が売れるという水準ですね。
その新設住宅着工戸数はリーマンショック後に80万戸、90万戸と増加はしてきたが、昨年度も、今年度も100万戸を超えていない」
確かにこうしたデータを見ると、景気がいいとは言えない……。
さらに資料をめくると、スーパーマーケット業界の惨状が明らかになる。イトーヨーカ堂、イオンなど大手で前年比割れが常態化する「真っ赤っ赤状態」。
アパレルも、ユニクロのファーストリテイリングは好調だが、しまむら、青山商事でさえ前年比割れが目立つ。
――明らかに、日本の消費が萎んでいる。
「消費傾向が大きく変化しているのではないでしょうか。なにより、人間が動かなくなってきたんです。以前は買い物自体がレジャーで、百貨店やスーパーに行くのが娯楽の一つだったのに、いまは買い物のために遠出しなくなった。
加えて、いまはインターネットでなんでも買えてしまう。トイレットペーパーでも水でも食品でも、安く買えてすぐに届けてくれるから、家にいながら買い物を済ませられるわけです。
それに、百貨店、スーパーの売り上げ減が止まらなくなったのは、近所のコンビニで買い物を済ませる人が増えたことが大きかったのですが、ついにその大手コンビニもオーバーストアで既存店売上高が落ちてきた。
一方、唯一と言っていいほど消費が増えているのがスマホなどの通信費です。'00年から'16年の消費支出の変化を見ると、『通信・光熱関連』は10.1%の伸びですが、衣食住の衣は32.1%減、食は3.9%減、住は17.9%減。これが現代の消費の姿です」
業界が丸ごとなくなる
――訪日外国人によるインバウンド消費は伸びていますが。
「インバウンド消費は、いつ引いてもおかしくない。日本人もバブル期に欧米に旅行して爆買いしていましたが、いまはしていない。同じようにインバウンド需要もいつかなくなるでしょう。
結局、給料が上がらないと消費は増えない。しかし、日本のGDPの70%以上を占めている流通・サービス業は、目の前の売り上げ低迷を食い止めるのに必死。だから賃金も消費も増えない。したがって、デフレは続いていく」
そして――。
「これから日本では多くの企業が勝ち残れずに淘汰されていく競争が本格化していく」と、穏やかならぬ予測まで語るのである。
そんな日本の未来を先取りするように、すでに企業がバタバタと倒れ始めているのがアメリカ。似鳥会長によれば、「アメリカで起きたことは、将来そのまま日本で起きる」。
そのため、毎年1300人ほどの社員とともにアメリカに視察・調査に出かけ、現地のナマの姿を見てきた。
'17年の視察で最も印象的だったのが、「アマゾンvs.ウォルマートの2強対決」。アメリカではすでに多くの企業が淘汰・吸収され、残る2強の直接対決に収斂してきたというのだ。
「アメリカはもう大変ですよ。'17年にアマゾンが約460店ある高級スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを1兆5000億円で買収したのは有名ですが、買収から数ヵ月もしないうちに、そのリアル店舗で値下げを始めているんです。
それに対抗するように、ウォルマートも約3800億円でネット企業を買収してネット通販を強化し、独自の配送網も整備するなど大改革を推し進めている。
さらに、ウォルマートはこれまでは4000坪前後の巨大店舗を構えていたのが、食品中心の1000坪規模の新店舗の出店を加速させている。ネットでもリアルでも巨大企業同士が真っ向対決しているんです。
その煽りをモロに受けている『その他大勢』。これまで世界で日本だけがデフレだと言われてきましたが、アメリカでも2強が値下げ競争を仕掛けていることで、デフレ化が顕在化してきた。多くの企業がそれに耐えきれなくなっています」
――その実態を詳しく教えて欲しい。
「すさまじいですよ。たとえば、米スポーツ用品販売スポーツオーソリティはかつて1200坪以上の巨大店舗を450店以上抱えていたのに、すべて閉鎖に追い込まれて、スポーツチェーンという業態自体がなくなった。
大手家電量販店では約1000店を持つベストバイ1社が生き残ってはいるが、売り場の半分くらいをメーカーや通信会社に場貸ししているのが現実です。玩具チェーン大手のトイザラスも'17年、破産申請を出しました。
ショッピングセンターはもっときつくて、大型ほどテナントが離れ、埋め合わせができずにガラガラになっている。大型ショッピングセンターは、一級のテナントを集めた少数しか生き残れなくなっているんです。
一言で言えば、いまアメリカで起きているのは『寡占化』です。強い企業は業界の垣根を越えてよその業界も侵食しながら、さらなる巨大企業へと膨れていく。
勝ち残れるのはそのトップだけで、ほかは市場からの退場を余儀なくされる。業界が丸ごと消えてしまうところも出てくる」
そんな凄惨な光景が、間もなく日本全土で展開されるというわけだ。
変化しない者は生き残れない
その「前哨戦」はすでに幕開けしている。
たとえば、ドラッグストアは店頭に食品を並べ始めているが、これはスーパーのパイを取りにいく戦略の一環。
しかも、ドラッグストアは本業のクスリで儲けが取れるので、食品は破格の安値で出している。コンビニもいまや生鮮食品を扱うのが当たり前で、業界の垣根なしにパイの奪い合いが過熱している。
似鳥会長は言う。
「われわれの業界にしても、これまでは家具、小物、家電などとジャンルがわかれていたのを、うちはすべて扱っている。暮らしの向上にはそのすべてが必要だからですが、業種が互いに垣根を越えて、場所取り合戦がどんどん熾烈になっている。
しかも、少子高齢化で全体のパイも減っていくのだから、これはもう大変な生存競争です。
こうなるときついのは中小はもちろんですが、大企業も例外ではありません。大企業であるほど大きな負債を抱えていることが多いので、いったん業績が傾き出すとすぐに耐えきれなくなってしまう。
有名企業であっても倒産、吸収合併される事例はどんどん増えていく。まさに『戦国時代』です。
この戦いが始まるのがまさに'18年で、'19年、'20年にかけてより激しくなっていく。企業はいまから準備をしておかないと、いままで通りのことを続けているだけではパイを奪われるだけです。
ただ、逆境こそチャンス。わが社でもいまから対策を練っていますが、その自分たちの対策が通用するか楽しみです。同じ人生なら、この『戦国時代』をドキドキハラハラしながら楽しんでいきたい」
果たしてこの過酷な闘いを、どれだけの企業が生き残れるのだろうか。
「週刊現代」2018年1月20日号より
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