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2018年の日本経済を楽観視できない「ある奇妙な数値」 米国、中国の景気も考察すると…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54000
2017.12.28 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス
2017年を振り返ってみると
まもなく2017年も終わりを迎える。振り返ってみると、2017年の世界経済の最大のポイントは、トランプ大統領の経済政策「トランポノミクス」が米国経済にどのような影響を与えるかであった。
「ただでさえ、完全雇用に近づいている米国経済において、『トランポノミクス』による大型減税とインフラ投資が発動されれば、米国経済は、たちどころにインフレに見舞われ、金利も上昇、FRBの金融政策も引き締めバイアスがかかり、米国経済はスタグフレーションに陥るかもしれない。また、仮にこのような政策がとられなくとも、先行きの不確実性から、人々はリスク回避的なスタンスを強めるだろう」
というのが、トランプ氏の大統領就任を快く思わない大多数の識者による見方であった。
一方、筆者は「『トランポノミクス』が発動されれば、米国経済の成長率は上方修正され、FRBが同調的(すなわち、引き締めについては慎重なスタンスで臨む)な政策をとれば、長期停滞から抜け出す第一歩になるかもしれない」と、市場のコンセンサスと比較すればかなり楽観的な見方をしていた(日本でもこのような楽観論者がほとんど存在しなかったので、今年の初めは「トランポノミクス」についての意見を述べる機会をいろいろと頂いた)。
さて、結果だが、2017年、「トランポノミクス」はほとんど不発に終わった。従って、予想が当ったか外れたかを議論することの意味はほとんどなかったと言ったほうがよいかもしれない。
だが、ここ半年の米国の実質GDPは、従来の平均2%程度の成長トレンドから3%超の成長に上ブレしている。また、インフレ率も1%台半ば以下で低位安定し、金利も10年物国債利回りで2.5%弱と、年初とほぼ同水準であった。また、株価は年初から約20%上昇した。
事後的な結果だけをみれば、トランプ政権の発足は米国経済にとってネガティブ要因にもならず、リスク回避的な姿勢を誘発するような不確実要因にもならず、むしろ、筆者の予想した世界により近い展開を示した。
このように、2017年全体を通して米国経済、及び米国マーケットが堅調に推移した最大の理由は、FRBが利上げ局面にもかかわらず、資金(マネタリーベース)の供給を積極的に進めたためではなかったかと考える。
FRBが政策金利を引き上げたにもかかわらず、ドル高は示現せず、むしろ、ドル安によって、製造業を中心とした輸出産業の業況が著しく改善した。マネタリーベースの供給増は、マーケットの「ヴォラティリティ」を低位安定化させ、投資家のリスク許容度を高め、株価の上昇に一役買った可能性もある。株価の上昇は資産効果を通じて、米国の個人消費を牽引した。
また、ドルの安定は、新興国通貨や株価の安定にもつながり、世界景気の安定的な拡大にもつながったと思われる。
従って、2018年の世界経済を考える際の最大のポイントは、やはりFRBの金融政策、特に資金(マネタリーベース)の供給スタンスではなかろうか。
FRBの利上げはどう影響するか
2018年からはいよいよ、米国で大型減税が実現する。もし、FRBが景気過熱や資産市場でのバブルを懸念してマネタリーベースの供給を極端に絞り込むようなことがあれば、株価は急激に調整し、米国経済の先行きにも暗雲が立ち込めることになろう。
一方、FRB(特に2月からのパウエル新体制)がバーナンキ、イエレン両議長が行ったような慎重な金融政策を継続すれば、米国経済に大きな波乱はなく、世界経済は引き続き安定的に拡大していくことになろう(もっとも、大型減税によって米国経済がどの程度上ぶれるかについては年間で1%近い底上げを期待する見方からほとんど影響を与えないとする見方まで様々な議論がある)。
その米国のマネタリーベースだが、普通に考えれば、利上げが進むに従って、減少していくはずである。現に、利上げが本格化した2016年にはマネタリーベースは約10%強減少した。だが、2017年は利上げによる政策金利の上昇が進んだにもかかわらず、マネタリーベースは逆に10%強増加している。
つまり、今年のマネタリーベース残高は、テーパリングが本格的に始まり、拡大が止まった2014年から利上げが始まる前の平均的な水準(約4兆ドル)まで戻ったのである。
2018年に米国のマネタリーベースがどのように推移していくかを予想するのは難しいが、いわゆる「マッカラムルール(目標とする名目成長率を実現するために必要なマネタリーベースの伸び率を算出するルール)」を適用した場合、2016年後半以降のマネタリーベースの推移は、名目3.5〜3.7%程度の成長率を実現するのに最適な水準に近い(図表1)。
現在の米国経済の名目成長率がだいたい3%台後半から4%程度なので、この「ルール」に沿ってマネタリーベースが供給されていけば、FRBが現在の米国経済の緩やかな成長を大きく阻害することはなさそうだ。
逆にいえば、2018年は、この「ルール」に基づくマネタリーベース残高をベンチマークに、実際のマネタリーベースがベンチマークからどの程度乖離するかを絶えず注目して見続ける必要がありそうだ。
ところで、米国の段階的な利上げの影響を受けつつあるのが中国経済である。このところ、中国人民元相場は人民元高気味に推移している。そのため、中国の外貨準備も再び増加しており、中国における資産流出の危機は過ぎ去ったかにみえる。
だが、人民元安が回避されている最大の理由は、中国通貨当局による短期金利の引き上げである。人民元ドルレートは、米中の短期金利差に連動して推移する傾向が強いが、米国の短期金利が利上げによって段階的に上昇しており、ドル高人民元安を阻止するためには、中国通貨当局は中国の短期金利を引き上げざるを得ないためだ。
これによって、秋口以降、中国の実体経済に陰りが見え始めてきた。中国の様々な経済指標(特に信頼できるといわれている電力消費、鉄鋼生産量、貨物運送量、企業の景況観を示すPMIなど)が軒並み悪化しつつある。また、不動産市況も9月以降、上昇がピタリと止まった。
中国政府は2018年の経済成長見通しを6.5%程度に引き下げたが、このまま米国FRBが粛々と利上げを進めれば、さらに短期金利を引き上げざるを得なくなり、その結果、実体経済や不動産市場はますます悪化する可能性がある。
従って、2018年は、中国経済を世界経済の牽引役とすることは難しくなってきている。このことから、来年の中国経済もやはり米FRBの金融政策の影響を大きく受けると考えざるを得ない。
中国経済が減速するとすれば、周辺の東アジアを含む新興国経済も厳しくなることが想定される。現にASEANからの輸入は減速、ないしは減少に転じつつある。ただし、注意すべきは、それでも、日本、台湾、韓国からの半導体等の電機機器、ハイテク機器の輸入は大きく増えている点だ。
このところ、中国でも「IT革命」が本格化し、中国政府もそれを後押ししているとの話もあり、個別の産業でみると、依然として「中国メリット」を享受するところがあるのかもしれない。
日本経済は「要警戒」
最後に日本経済だが、2018年度からサラリーマンの所得控除が大きく削減される。また、生活保護の支給額の一部減額も伝えられている。
また、このところ、住宅着工件数が頭打ちから減少に転じている。賃金上昇が不十分であるとの見方もあるが、雇用の拡大を含めた労働コストの上昇が国内の非製造業を中心に企業収益を圧迫しつつある。このままでは、内需主導で日本経済がデフレ脱却へ歩みを進めることが厳しくなりつつある。
確かに、FRBによる金融政策の正常化は円安要因になりうるが、前述のように、慎重なスタンスに終始し、特にマネタリーベースの大幅な減少がないとすれば、1ドル=115円を超えるような円安は想定しづらい。
もし、FRBがよりアグレッシブな引き締め路線を採用した場合、株式市場を中心に「リスクオフ」モードに移行する可能性が高まり、FRBの引き締め路線は逆に円高要因になるのではないかと考える。
従って、1ドル=120円を超えるような円安ドル高は想定しづらく、為替レートが日本経済にプラスの影響を与えるというストーリーの実現は難しいと考える。
さらにいえば、2018年の日銀が、金融機関の経営に気を使った政策(すなわち出口政策の方向へ舵を切る)に傾斜した場合(もしくはそれを匂わせた場合)、これは円高リスクをもたらしかねないことを付記しておこう。
以上、筆者は、2018年についてはあまり楽観的なシナリオを描いていない。今年の「慣性」がまだ強い2018年前半(特に1-3月期)は、勢いで景気も株価も強いという状態も想定されるが、それ以降については、今のところやや警戒的にみているというのが正直なところである。
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