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地方に眠る「埋蔵金」21兆円、財務省と総務省攻防のゆくえ
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34343#image49462
2017年12月13日 ビジネス+IT
全国の地方自治体が積み立てた21兆円を超す基金を巡り、財務省と総務省のさや当てが続いている。「新たな埋蔵金」と指摘し、年々膨れ上がる基金残高を問題視する財務省に対し、地方財政を所管する総務省は将来の財源不足に備えて必要な積み立てと反論する。2018年度の予算編成でも自治体に基金を取り崩させて地方交付税を削減したい財務省と、交付税を死守しようとする総務省の主張が正面から激突し、妥協点が見えない。甲南大経済学部の足立泰美准教授(財政学)は「自治体の多くが基金を積み増しているのは将来に不安があるからだ」と分析する。自治体の基金は積み過ぎなのか、必要な範囲なのか。
執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)
基金積立額が全国の市区町村で飛び抜けて大きい大阪市。増え続ける自治体の基金を巡り、財務省と総務省がさや当てを続ける(写真:筆者撮影)
■麻生財務相と野田総務相が交付税めぐり論戦
「借金をしながら貯金を増やす自治体が7割もあるのはいかがなものか」。「基金残高は浮いたお金ではなく、給与の削減など行革努力で作ったお金だ」。首相官邸で11月に開かれた政府の経済財政諮問会議で、麻生太郎財務相と野田聖子総務相が、自治体が積み立てた基金を巡って激しい論戦を繰り広げた。
麻生財務相は国が赤字国債を発行して交付税で地方の財源不足を補っている点を挙げ、「国と地方で財政資金の効率的な配分を考えていくことが重要」と交付税を見直したい考えを示唆した。
これに対し、野田総務相はやる気のある首長ほど行政改革で基金を多く積み上げているとし、「安易にたまったから削減するというやり方は、(頑張っている自治体を支援する)政府の方針に逆行する」と反論した。
財務省が自治体の基金増加に懐疑的な視線を投げかけたのは、これが初めてではない。5月にも経済財政諮問会議で民間委員が地方の基金を「新たな埋蔵金」と呼び、物議をかもした。そこには、財政難のため交付税を少しでも減らしたい財務省の思惑が透けて見える。
だが、自治体も財政事情が好転しているわけではない。人口減少で税収が減る中、老朽化するインフラ維持費や高齢化社会の進行による福祉予算は膨らむ一方。このため、総務省が交付税の削減に抵抗しているわけだ。
■自治体の「貯金」は直近10年で約8兆円増
議論の焦点となっている自治体の基金には
1.突発的な歳出増や急激な歳入減に備える財政調整基金
2.自治体の借金返済に備えて積み立てる減債基金
3.庁舎の建て替えなど特定の事業に備えて積み立てる特定目的基金
の3種がある。
このうち、多くの自治体が財政調整基金を重視し、最近の積み増し率も大きい。自治体のうち約7割は、交付税不足の際に発行する臨時財政対策債の残高を増やす一方で、基金も膨らませてきた。借金を重ねながら貯金を増やしている格好だ。
総務省は11月、全国自治体の基金積立残高を公表した。それによると、2016年度末の総積立額は21兆5,461億円。2006年度末の13兆6,022億円から10年で7兆9,439億円、58.4%も増えている。内訳は都道府県が6兆9,772億円、市町村が14兆5,690億円。都道府県は3兆円余り、市町村は5兆円近く増加した。
全国自治体の基金積立額 出典:総務省「基金の積立状況等に関する調査結果」
3種の基金ごとの内訳は、財政調整基金が7兆5,241億円。2006年度末に比べて3兆4,521億円、84.8%の伸びを示した。減債基金は2兆5,440億円で、4,042億円、18.9%の増加。特定目的基金は11兆4,781億円に達し、4兆876億円、55.3%増えている。
特に伸び率が大きかった財政調整基金の積み増し理由について、多くの都道府県が景気変動による法人関係税の減少や災害発生時の財政出動に備えるためとしている。市町村では公共施設老朽化対策費や社会保障費の増大への対応を挙げる声が多かった。基金積立の原資としては、多くの市町村が行革、経費節減を挙げている。
■将来のリスクにおびえる自治体の現状
自治体の多くは財務省の姿勢に不安の色を隠さない。福島県西部の中心都市・会津若松市は2016年度末で約33億円の財政調整基金を確保している。市の財政調整基金積立目標は、自治体が妥当な水準で行政を行うための一般財源の規模を示す標準財政規模の10%。目標額は約29億円で、市は苦しい財政をやり繰りし、10年で3倍以上に増やした。
会津若松市の財政調整基金の推移 出典:会津若松市「財政調整基金の推移」
しかし、市の人口12万2,000人はピークの1995年より1万5,000人少なく、今後も減少が続くと予測されている。平成の大合併による特例措置で手厚く交付されてきた交付税も段階的に減る。
会津若松市財政課は「過去に税収不足で年間8億円取り崩したこともある。不測の事態を想定すると、どうしても目標額程度の基金が必要」と苦しい事情を訴える。
全国の市で飛び抜けて大きい基金残高なのが大阪市。うち、財政調整基金は2016年度末で1,600億円を超す。市は予算規模が大きく、景気変動で不安定になりがちな法人関係税に依存する率が高いとして、基金を積み上げてきた。
大阪市財務課は「弁天町駅前開発土地信託事業など損失を出した大型事業を抱えるほか、万博などに備えた臨海部開発など大型計画が控えている。一定以上の基金を確保せざるを得ない」と説明した。
2016年度末で390億円の財政調整基金を持つ愛知県豊田市も、法人関係税への依存度が高いのは大阪市と同じ。豊田市財政課は「リーマン・ショックのような大不況が再び起きないとはいえない。その際、基金が足りないと立ち行かなくなる」と打ち明ける。
京都市は2016年度末で財政調整基金が底をついた。円高で地元メーカーの業績がふるわずに税収が減り、やむなく基金を使い果たしている。京都市財政課は「この状態で交付税を削られたら、どうにもならない」と頭を抱えている。
■対立の落としどころはどこにあるのか
足立准教授によると、都道府県より市、市よりも町村と財政規模が小さくなるほど財政調整基金を積極的に積み増ししていた。人口減少が深刻で財政力の弱い自治体や平成の大合併の交付税優遇措置が切れるところほど、基金を増やす傾向があるという。
自治体側は交付税にトラウマを持つ。自民党の小泉政権が2003年から始めた三位一体改革で交付税が5兆円規模で削減されたことだ。多くの自治体が突然の交付税削減で財源確保に苦慮した。国の財政が危機的状態にあるだけに、同じ事態が再び起こりかねないと心配しているわけだ。
そこへ人口減少と高齢化、地域経済の停滞が追い打ちをかけた。先行きに明るさが見えない中、自治体には不安ばかりが募っている。足立准教授はこうした不安が基金増加の最大の理由とみている。収益を内部留保に回し、賃金に反映させない企業の心理と同じなのかもしれない。
財政調整基金をいくら積み立てるべきという全国一律の基準はないが、一般には標準財政規模の10%とされる。ただ、足立准教授はこの基準の学術的な根拠が弱いとみている。
財務省と総務省の対立は現時点で解決の糸口が見えない。足立准教授は「自治体が目安にできる基金の積み上げ目標について、両省の協議でより適切な新基準を設定することが、論争の落としどころになるのではないか」と提言している。
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