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「40歳を超えたら転職はほとんどムリ」は、もはや非常識だ 中年がニッポン企業を救う時代が来た!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53061
2017.10.05 田邉 裕也 日本放送協会(NHK)ディレクター 現代ビジネス
去る9月19日に放送された、NHK「クローズアップ現代+(プラス)」が話題を呼んでいる。テーマは「50代でも遅くない!中年転職最前線」。41歳以上の転職者数がこの5年で2倍近くに急増しているという人材紹介会社の調査結果を受け、変わりゆく企業の実態に迫ったものだ。取材にあたった同番組の田邉裕也ディレクターによる、転職の現場からの報告をお届けする。
崩れ去る「35歳の壁」
長く人材の流動化を阻んできた「35歳の壁」。35歳を超えると一気に企業からの求人が減り、40歳を超えると転職はほとんど無理、というのが転職市場の常識だったが、その常識に変化の兆しが見え始めている。
今年2月に発表された総務省の労働力調査によれば、転職者の数は300万人の大台を突破。とりわけ目立つのは、ミドル世代の増え幅だ。45〜54歳の転職者は、この5年で40万人から50万人へと大幅に増えた。
転職・求人情報サイト「リクナビNEXT」の編集長を8年務め、ミドル世代の転職支援を長年行ってきた黒田真行氏によれば、ミドル世代を含む転職者が急増している背景には、企業の間で広がる人材不足があるという。
一つは、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の導入が進むなど、産業構造が変化したことにより、ITを中心とした異業種の人材を取り込もうという動きが広がっていること。もう一つは、昨今の景気回復を受けて、専門職のみならず、営業や管理部門でも人手不足感が増していることだ。また、中小企業やベンチャー企業では、ベテラン人材の不足も言われている。
番組取材の過程で感じたのは、こうした動きに付随して、働き手の意識も目まぐるしく変化しているということだ。中高年に長く染みついてきた終身雇用の幻想が取り払われ、「会社にしがみつかない」生き方をみずから選ぶ人が増えている。
「人生二毛作」社会の到来
労働のあり方といえば、「人生100年時代」の生き方を説いた本『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』が話題だ。超長寿社会においては人生が「マルチステージ化」(=「教育→仕事→引退」という固定化された人生設計ではなく、「教育→仕事→教育」といった変化が起きること)し、過去のロールモデルは役に立たなくなるという。
終身雇用が一般的になり始めた1960年ごろ、男性の平均寿命は65歳前後だったが、現在は80歳以上。定年した後も平均して20年以上残りの人生があるわけだ。こうした状況を受け、再雇用や定年延長に踏み切る企業も増えているが、大企業を中心に起きているのが「中高年層のだぶつき」だ。
リクルートワークス研究所の調査では、企業に雇用されているものの、能力に見合った業務を与えられず、その能力を持て余している人々は400万以上にも上ると推計されている。そして、膨れ上がった人件費を抑えるために、企業はミドル世代の賃金にメスを入れざるをえない状況に陥っている。
実際、大企業・中堅企業に勤める45〜54歳のサラリーマンの給料は減っている(前年比、厚生労働省「平成28年 賃金構造基本統計調査」)。終身雇用、年功賃金を夢見て就職したものの、長引く不況により(昇給につながる)ポストは減り、景気が上向いても給料が伸びる気配はない。
人生の折り返し地点に差しかかり、「残りの人生をどう生きるか」「何のために働いているのか」を問い直したミドル世代が、やりがいや活躍の場を得られる中小企業やベンチャーに軸足を移し始めている。いわば「人生二毛作」を志向する人たちが、ここに来て一気に増えているのである。
『オッサン、オバハン求む!』老舗企業の決断
取材班がカメラを入れた大阪の医薬品メーカー「森下仁丹」は、まさにそんな「人生100年、二毛作時代」における働き方を問いかけている企業だ。
今年の春、「オッサンも変わる。ニッポンも変わる。」と大胆なフレーズをかかげて年齢・専門性不問の社員募集を行い、「もう一旗あげよう」という気概を持つ中高年層を広く求めた。メッセージに共感したのか、予想を大きく上回る応募が寄せられ、若干名の募集枠に、自動車のエンジニアから学校の校長まで2200人が殺到した。
「年をとればとるほど、新たなことに取り組むチャンスは減っていく。余計なことをするなという雰囲気になる。しかし、組織の中でもうひと頑張りする、という考え方もあるんじゃないか」
駒村純一社長は、採用活動に秘めた思いをそう明かした。
森下仁丹は1980年代、口の中をすっきりさせる口中清涼剤「仁丹」で一世を風靡したが、90年代に入り売り上げが低迷。多額の負債を抱えた。14年前、大手商社に勤めていた駒村さんに「経営を立て直しほしい」と声がかかり、経営再建に着手。さまざまな新製品を送り出してきた。
経営再建の課題となってきたのが、保守的な風土だった。社員自らがアイデアを生み出し、行動を起こす組織に変えていくために、意識改革が必要だと駒村さんは考えた。その起爆剤として白羽の矢を立てたのが、経験とやる気にあふれた中高年たちだった。
人事が明かす採用のウラ側
特に興味深いのは、同社の採用基準だ。番組の取材過程では、選考の舞台裏を明かしてもらった。
即戦力を採用する以上、経歴重視かと思いきや、意外な答えが返ってきた。MBA取得などの資格や華々しい経歴は、評価のポイントに入っていなかった。駒村さんたちが見ていたのは、どれだけチャレンジを行ってきたのかという「過去の失敗経験」や、周りの意見を柔軟に取り込んでいけるかといった「人間性」だったのである。
この評価軸は、中高年の活躍を占う上で示唆に富んでいる。実は、森下仁丹は過去に経歴重視の中途採用を行ったものの、当時採用した人材にうまく定着してもらえなかった苦い経験がある。
駒村社長は言う。
「過去の経験とかスキルとか、そういうものはもちろん必要は必要なんだけども、上から目線でやりそうな人っていうのもいるしね。なんだこの会社、こんなもん持っていないのか、とかね。愚痴から入られちゃったら、全部否定論になっちゃうから。ウチの状況を見ながら、一緒に作り上げてくれるような人がほしいんです」
キャリアを積んだ中高年は、過去のやり方を押し通そうとする傾向が強く、任される職域や風土の違いから、転職先で不満を抱きやすいという。俗に言う「大企業病」である。
森下仁丹が求めていたのは、問題をあげるのではなく、自ら動いて周囲を巻き込みながら改善策を打っていく「プレイングマネージャー」のような人材だった。転職エージェントによれば、これは何も森下仁丹に限った話ではなく、変革途中にある大企業、中小企業など、多くの企業に共通するニーズだという。
中高年は自らの経歴や資格などを売り込みがちだが、企業側は適応力や柔軟性を見ている。この認識のズレを理解しておくことは、転職を考える際のヒントになると言えるだろう。
転職成功のカギは「ポータブルスキル」
今回220倍の難関をくぐり抜けた10人、その半数は意外にも医薬品と無縁の人たちであった。家電業界やIT業界、ホテル業界と、実に多様性に富んでいた。違った視点や価値観を取れ入れたいという狙いももちろんあっただろうが、よくよく話を聞いていくと、そこには明確な理由があった。
森下仁丹が採用の過程で見ていたのは「ポータブルスキル」。業界や職種の垣根を超えても通用する、汎用性の高いスキルだった。
大手家電メーカーから転身したMさん(52)は、東欧や南米、アジア市場のスタートアップを手がけてきた。海外でゼロから販売網を築いてきた経験は、医薬品の分野にも応用できると期待された。また、ホテル業界から転身した女性は、スタッフの育成経験が人事に応用できると見られた。
また、番組で密着したIT業界出身の志賀健さん(48)は、入社初日から奇抜なアイデアを連発し、同僚から「宇宙人」と評されていたが、実を言うと人事は、彼の別のスキルを見抜いていた。採用を担当した磯部美季さんはこう明かしてくれた。
「わかりにくいですよね、デジタルの世界って。志賀さんはそのへんの知識に長けていると思うんだけど、ちゃんとわからない人の視点にも下りて、わかりやすく通訳して、その上で『それやろう!』っていうことができる人だと思ったんです。わかりやすく説明する能力が非常に高い」
つまり、専門知識そのものではなく、それを社員に浸透させられるスキルを評価されたのである。
ミドル世代の転職支援を行う黒田真行氏によれば、長く一つの会社に勤めていると、その会社での役割が能力のすべてであるかのように感じてしまい、一面的な専門性にとらわれる傾向にあるという。結果的に、同業同職種の転職にこだわり、選択肢を狭めてしまう。
しかし、長い職業人生においては、専門性だけではなく、「人との関わり方(利害交渉力など)」や「仕事の進め方(推進力など)」もスキルとして蓄積されていく。雇用が流動化する時代においては、こうした汎用的なスキルをいかに多く持っているかがカギとなるのである。
社会に爪痕を残す働き方
「人生100年、二毛作時代」が根づきはじめている。会社の寿命よりも職業人生のほうが長くなることさえ、当たり前になるかもしれない。
私たちはこれからどういった働き方をしていけばいいのだろうか。一つ重要になってくるのは、「会社を軸」とする働き方ではなく、「自分を軸」とする働き方である。
転職における年齢の壁がなくなるということは、裏を返せば、実力主義革命が起こるということだ。年齢や肩書、属性は問われない。個になったとき、何ができるのかということが問われてくる。能力があれば何歳でも報酬が入るが、なければ若くても切られてしまう。ある種シビアな社会である。前出の黒田氏は言う。
「能力やスキルは『やりがい』から生まれるもの。人生で何を成し遂げたいのか、主体的にゴールを設定することが大切。ゴールから逆算して、いまの仕事を位置づけていくのです。そうすればやりがいを持ち続けられますし、報酬がついてくる可能性も高まります」
今回取材の過程で、森下仁丹に採用された方々から貴重な話を伺うことができた。彼らに共通していたのは、人生の着地点をイメージし、学び続けようとする姿である。安定を捨ててでも、何かしらの形で社会に爪痕を残したいという覚悟があった。
大手製薬メーカーで商品企画を担当していたIさん(52)は、40代で子会社に出向。親会社の経営方針に左右され、身動きがとれない環境に居心地の悪さを感じるようになった。29年間勤めた会社を辞め、第二の人生をジェネリック医薬品の開発に注ぐことにした。新しい事業の柱をつくろうと邁進している。
バイオ関連の会社で健康食品の研究を行っていたKさん(51)は、事業本部の副部長で、将来役員になれる可能性もあった。しかし40代後半になり、書類にハンコを押すだけの仕事に疑問を持つようになった。「会社の業績を良くするだけではなく、産地が潤って、食べる人も健康になる。三方よしの事業を行いたい」。そうした夢を持って森下仁丹に飛び込んだ。
個人の幸せと社会の幸せをつなげる働き方こそが、これからの日本社会を豊かに生きる答えなのではないだろうか。
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