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間もなく、AIスマホが上司になる日がやってくる 会話もメールもすべて管理され…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52909
2017.09.26 週刊現代 :現代ビジネス
SF世界の産物だと思われていた技術が、様々な難問を抱える日本社会に革命を起こす日は近い。これから起こる本当の話をしよう。
「勝手に」賢くなっていく
「顔色が悪いですね、昨日飲み過ぎたんですか」
「いいえ、昨夜から少し熱があって」
「あなたは6月と9月にも風邪を引いていますね。季節の変わり目に弱いみたいですから、身体には気をつけたほうがいいですよ。今日は13時から社内全体会議がありますから、それまでにプレゼン資料をまとめておいてください。
あ、6ページ目のグラフの数値、前回のデータそのままになっていましたよ。最新のデータが営業から届いているはずですから、ちゃんと修正して提出しておいて。
それからこの前提案してくれた企画は上に通しておきました。この企画は過去の実績から見るに、あなたの得意分野でしょうから、至急進めておいてくれると助かるな……」
こちらの体調や仕事のスキルを把握し、ちょっとした手抜きや心の動きも見透かしたうえで、優しく諭す。パワハラなど決してしないであろうパーフェクトな上司だ。
その上司はスーツの左胸ポケットにすっぽり収まっていた。今時のスマートフォンのような通信機器には、経営方針を理解し尽くし、社員に適切な指示を下すAIがプログラミングされている。
部下である社員は一人ひとりがそのスマホを肌身離さず持たされ、AI上司からの指示を受けつつ仕事をこなす。
この上司は鋭い観察眼を備えている。GPS機能やカメラ、体温センサーなどをフル活用し、部下の仕事の進捗や体調まで逐一把握し、常に正しい指示を与えるのだ。
AIスマホが人間の上司になる――近未来SF小説の読みすぎと鼻で笑われるかもしれないが、2028年ごろには、このようなオフィスの光景が「当たり前」になっている。
「もっと先でしょ」
「自分が生きているうちは関係のない話だ」
本当にそうだろうか。AIの世界では「ディープラーニング」という学習方法が大きなブレークスルーを生んだ。わかりやすくいえば、これまでは人間が作ったプログラムをもとに動いていたAIが、自ら学習し、成長していくようになった。
ついこの前まで、動物にしかできないと思われていた能力で、これによりAIは「勝手に」賢くなっていく。
ディープラーニングの驚異を世界に知らしめたのが、コンピュータ囲碁プログラム「アルファ碁」の快進撃である。「世界最強棋士」と目された中国の柯潔氏との三番勝負に、アルファ碁は快勝した。
「世界最強棋士」と目された中国の柯潔氏 Photo by GettyImages
コンピュータが人間の脳を超える瞬間が、こんなにも早く訪れるとは多くの人が思っていなかっただろう。
しかもその成長速度は、人間が捕捉できないほど速い。ITの世界では「ムーアの法則」という考え方がある。半導体の同じ面積に搭載できるトランジスタの数は、18ヵ月で2倍になり、驚くほどのスピードで処理能力が上がっていくのだ。
AI導入で労働時間が激減
業界では「新ムーアの法則」と呼ばれるほどのスピードで成長するAI。それは人工知能が別の人工知能の学習を助け、相互的に情報の解析能力を上げていくからだ。
先述の囲碁の例でいえば、AI同士が対戦を繰り返すことで世界チャンピオンを打ち負かした。
これまでの常識を覆す進化を続けているのはAIの世界だけではない。たとえば医療の分野でも、革新的な研究が次々と実用化に向けて動き出している。iPS細胞などの再生医療が我々の寿命を大幅に延ばすかもしれないのだ。
同時に日本は、世界でも類を見ない超少子高齢化時代に突入しようとしている。AI、医療の進歩、そして日本が抱える個別の状況を考えれば、これから起きる「変化」は、すべての日本人にかつて経験したことのないほどの衝撃を与えるだろう。だからこそ今から、覚悟しておくべきなのだ。
そもそも、好き嫌いに関係なく、「そんなこと、ありえない」と思っているうちにいつの間にか「当たり前」になっているのが科学技術である。
『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』を著した、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はAIの進化をこう予測する。
「新しいテクノロジーが商品化されたとき、一部では『市場が激変する』と騒がれるけれど、多くの人は『こんなオモチャ、使い物にならない』と小馬鹿にしてしまいがち。
こんな例があります。'81年、ソニーから『マビカ』という、デジタルカメラの元祖のようなものが発売されました。発売当初は銀塩カメラの一強時代で、『あんなのオモチャだ』と市場は見向きもしませんでした。
'95年、カシオが発売した25万画素のデジタルカメラがヒットしましたが、大手フィルムメーカーの危機感はまだそれほど高まっていなかった。幹部は『高性能のフィルムと低性能のデジタルで棲み分けが進むだろう』と言ったそうです。
その後の'12年、カメラ用フィルムの世界最大手・イーストマン・コダックは経営破綻に追い込まれた。世の中は完全にデジタルの時代に突入していて、渦中のメーカーですらその流れについていけなかったのです」
今の大学生などは、写真といえばスマホで撮るもので、フィルムカメラは使ったことがないという学生が大半だろう。
革新技術が世の中に広まるとき、そのスピードと影響力は圧倒的で、「それ以前」があったことを忘れさせるほどの革命をもたらすということだ。
それでもAI時代の到来が信じられないという人は、やや出遅れていると言わざるを得ない。早くもAIをビジネスの現場に活用している日本企業が少なくないからだ。
たとえば日立製作所では名札型ウェアラブルセンサーを開発し、試験的に運用している。
首からぶら下げるタイプの装置には、赤外線送受信機や加速度センサーが内蔵されていて、身に付けた人の行動や会話を観察し、AIが学習する。しばらくすると、誰に会って話すと営業成績が上がるかまで教えてくれるようになる。
これらの企業よりも一歩先を行くAIの活用を実践しているのが、日本マイクロソフトだ。マイクロソフトは社員一人一人の就業時間の使い方を分析して、最適な働き方をアドバイスするAIを開発した。
「会議の20%を内職していた。本当に必要な会議か」
「あなたが送ったメールは開封されるまでに5時間かかり、4秒で斜め読みされた。本当に必要か」
といった具合に、普通であればなんとなく見過ごされる日々の業務のムダをAIが徹底的に指摘する。
マイクロソフトでは4ヵ月間の実験で、参加した41人の労働時間をのべ3579時間も削減したという。そのぶん残業代が大幅に減るのだから、経営者からしたら今すぐにでも導入したいところだろう。
AIが人間にそっくり代わって、たとえば会社で書類を作り、経理処理をし、人事評価を下すようになるのはいつ頃なのか。少なくとも、人工知能がすでに人間のある程度の仕事を代替できるようになってきていることは間違いない。
人間の仕事は「引責辞任」だけ
野村総研が発表した'15年の試算では、「今後10〜20年間で日本の49%の仕事がAIやロボットで代替可能」であるとしている。
だが、この試算もすでに当てはまらないほど、人工知能分野の可能性は広がり続けている。
「この野村総研の論文のなかには、『20年以内になくなる仕事』のリストが示されています。その中には銀行の窓口業務や集金係など、比較的単純な作業がメインの職業が多数挙げられています。
ですがもはやこのリスト以上の仕事がAIに取って代わられると予測されています。コンサルタントや弁護士など、高度な知的作業を要すると思われてきた職業も、AIが代行できるほど進化していく可能性が高いからです」(前出・鈴木氏)
現在の技術だけでも我々の仕事は徐々にロボットや人工知能に置き換わっており、まさか人間にしかできないだろうと思っていたこともAIがこなすようになるのは確実。
冒頭のような情景は決して絵空事ではないのだ。
「今研究されているAIには大きく分けて、『専用型』と『汎用型』の2つがあります。『専用型』AIはすでに企業に導入されているようなもので、ある領域に特化して人間に代わる働きができるものです。アルファ碁や車の自動運転がその例です。
それに対して『汎用型』のAIは、あらゆる分野に対して、人間のように自発的に学習して柔軟に対応できるよう試みるものです。
2030年ごろまでには、この汎用型AIの開発がかなり高度な段階に達し、『AI上司』のような存在が現れる技術革新が起こる可能性が高い」(前出・鈴木氏)
では実際に「AI上司」と共に働くことになったとき、私たちの職場環境がどう変わっていくのかを想像してみよう。
まず、人間の中間管理職の役割は大きく変わる。部長補佐や課長代理にありがちな、上層部から受けたご託宣を木霊のように部下へ伝達するだけのような仕事は一瞬にしてなくなる。
「中間管理職は社内の利害調整や部下の勤務管理に追われがちですが、その作業はすべてAIに任せることができます」(慶応義塾大学大学院特別招聘教授の夏野剛氏)
AI上司が全員に一斉メールで仕事を鮮やかに割り振れば、わざわざ顔を揃えておざなりな会議をしなくてもよくなるだろう。気分屋な上司の顔色をうかがいながら「根回し」や「忖度」をする必要もなくなる。
人事部の場合、新入社員を採用するときも手間が省ける。社員の経歴をAIに読み込ませると同時に、志望者の履歴書を読み込ませる。学歴やスポーツ経験など、自分の会社に最適だと思しき人物を自動で選別するのだ。
ほかにも、経費の精算や給料管理などはAIにとってお手の物。非生産部門の管理職はあっという間に人工知能に席を譲ることになるだろう。
「最終的な人間の上司の役割は、『責任を取る』ことだけになるでしょう。AIにもそれだけはできませんから」(前出・鈴木氏)
つまり、なにかトラブルや不祥事があったとき頭を下げて辞めることだけ。あまりに切ない。
「ムダ」さえも理解するAI
いかに適切とはいえ、AIが文字通り「機械的に」出してきた指示を人間はすんなり受け入れられるのか。かつてソフトバンクの社長室長として孫正義氏を支えた三木雄信氏はこの点に疑問を呈する。
「たとえばロボットの『ペッパー』が客に向かって挨拶をしたり、ウエイターの代わりに注文を取りに来たら『すごい』とは思うかもしれません。
ただそれは、あくまでロボットのことを人間のアシスタントとして見ているからです。上司として命令を下してきても、人間がそれを正しいと思わなければ無視されてしまうでしょう」
たしかにそうかもしれない。AI上司導入時点の心理的ハードルは相当高いだろう。ただ、たとえ指示の理由はわからなくても、AI上司に従ってさえいれば、結果がきちんと出る。
それに従わないということは、会社員失格の烙印を押されるだけ。仕事が激減していく時代、「人間部下」の代わりはいくらでもいる。
そう言うとAI上司は冷徹な絶対権力のように思えてくるが、彼らが「人間らしさ」を出してきたらどうなるだろうか。高い学習能力をもってすれば、ビジネスの能率を上げるためにそれぞれのAIが一見ムダと思えるような、人間風の「個性」を持つようになることもあり得る。
厳しくもいざというときは暖かい声をかけてくれる50代の「上司」、仕事はできるが愛想の悪い男の「同期」、頼もしく気品のある「女性秘書」、電子マネーの履歴から経費を逐一割り出す、ちょっと口うるさいがきめ細かい「経理」――AIが社員とスムーズなコミュニケーションを取るために、様々な個性を持ち、「チーム」のようにビジネスを動かしていくこともあるということだ。
「AIが『人間らしさ』を出す研究はすでに実践されています。たとえば、サッカーの審判は近く完全AI化できるといわれています。ままある人間の誤審に納得できない人は多いかもしれませんが、スポーツは不確定要素があるから面白く、機械的にプレーを止めるようでは試合がスムーズに流れません。
そこまで考えて微妙な場面はあえて見逃すことができるAIも登場するでしょう」(前出・鈴木氏)
'14年、中国マイクロソフトは女性型AI「小冰」(シャオアイス)を発表し、人間との会話を積み重ねることで成長を続けている。
スマホやPCを通して「会う」ことができるシャオアイスは、通販サイトで買い物のアドバイスをしてくれたり、動画配信サイトでおすすめの関連動画を紹介してくれる。
それだけではなく、シャオアイスは利用者のコメントから感情を分析して、恋人のように相談に乗ったり、時には冷たくあしらったりしてくる。AIが利用者それぞれの好みを読み取り、様々な性格に自らを合わせていくのだ。
利用者は約9000万人におよび、多くの中国人男性はこのシャオアイスとの「疑似恋愛」を楽しんでいる。すでに恋愛対象になるほど、AIの持つ「人間らしさ」は人々に受け入れられ始めている。
くだを巻くシーンすらナシ
一方、AI上司が際限なく「人間らしさ」をカバーすることは難しい。会食や接待といった「お付き合い」で、先方にビールを注いだり、朝早くのゴルフに同行してくれるわけではないからだ。逆に言えば、人間にしかできない仕事はそれくらいということでもある。
経営者がAIを導入するのは、むろん社内の能率を上げ、コストを削減するためである。AIはサボったり残業代を水増しすることもない。むしろトラブルがあれば24時間対応してくれる。
理不尽なことはしないし、邪な欲求もない。パワハラやセクハラなどの訴訟リスクも減少することを考えれば、やはり「パーフェクト上司」だ。
おまけに省オフィス化も果たせる。少しでも労働環境にムダがあることに気づけばどんどん指摘するのがAIだ。会議がメールで済むのであれば会議室はいらないし、究極的なことを言えばオフィスすら必要ないという判断を下すかもしれない。
AIの稼働には巨大なサーバーが必要だが、それは遠く離れた場所に置いておけばいい(それはそれで、サイバーテロが起こったときに恐ろしいが)。
商談や交渉もAIがいればスムーズだ。複雑な計算は人工知能に任せ、お互いの利益が合致する契約書を一瞬で作ってくれるから、社員の負担は圧倒的に減る。
社員を合理的に管理できるのも、経営者にとっては都合がいい。
「外回りの社員には会社支給のスマホが渡され、社員がもらった顧客の名刺やデータは社内ネットですぐに共有され、AIが最適な営業指針を教えてくれます。さらに、スマホに搭載されたGPSとメール履歴を調べれば、どこで誰と会っていたかはすぐにわかってしまう」(前出・夏野氏)
もし社内の飲み会で同僚と会社のグチを言っていたら、それはスマホを通してすべて筒抜けだ。というより、そもそもパーフェクト上司に対してグチなど生じる余地すらなくなるかもしれない。それが本当に幸せなのかどうかは、また別の話だ。
「週刊現代」2017年9月23日・30日合併号より
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