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「缶コーヒーは悪魔の飲み物」と医者が言う理由
http://diamond.jp/articles/-/142513
2017.9.22 牧田善二:医学博士 ダイヤモンド・オンライン
知らず知らずに体の不調を生み出し、日々のイライラから肥満・老化・病気までを生み出すものの正体とは? 缶コーヒーをはじめ清涼飲料水は、私たちの体を蝕む悪魔の飲み物だった! 人体のメカニズムを解析する生化学や、世界中の最新論文を熟知し、20万人以上の臨床経験を持つ牧田善二氏の新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』から、内容の一部を特別公開する。
知らずに体の不調をつくっているものとは?
――いかにも健康に良さそうなものの正体
「今日も1日、頑張ろう」
保険関係の企業に勤める30代半ばのA氏は、毎朝、会社が入っているビルに設置された自販機で缶コーヒーを買います。それを持って自席につき、飲みながらパソコンを立ち上げメールチェック。こうして1日を始めるのが日課になっているのです。
A氏のように、缶コーヒーを欠かさないビジネスパーソンをよく見かけます。テレビで流されているCMでは、「すっきり目が覚め、爽やかな気分で仕事にのぞめる」といった印象づけを行っていますから、その影響を受けているのかもしれません。
しかし、健康を大事に考えるビジネスパーソンにとって、缶コーヒーは悪魔の飲み物。口にするのは絶対に避けたほうがいいのです。
缶に限らずペットボトルも同様ですが、そうしたものに入った「コーヒー飲料」は、カフェで売られているいれたてのコーヒーとはまったくの別物。「砂糖の塊が解けた液体」に過ぎず、健康に悪いことはあってもいいことなど1つもないからです。
下の図0-1を見てください。よく見かけるコーヒー飲料の、1本あたりの糖質含有量を示してあります。
「ボス ホームエスプレッソ ラテミックス 甘さ控えめ」という商品の場合、1本に65・1グラムの糖質(*)が含まれています。角砂糖にして、なんと16個分くらいに値します。 にもかかわらず、「甘さ控えめ」とうたわれています。この売り文句に惹かれて「これなら健康に良さそうだ」と判断している人も多いのではないかと思います。
*正確には炭水化物=糖質+食物繊維だが、食品中の食物繊維はわずかなので、ここでは糖質≒炭水化物とする。
コーヒー飲料に限りません。下の図0-2にあるように、自販機やコンビニで売られている身近な飲料は、大量の糖質を含んでいるものが多いのです。
コーラなどの甘い清涼飲料水が糖分を多く含むことはわかるとして、注意が必要なのはいかにも健康に良さそうな商品です。代表的なところをあげただけで、ウイダーinゼリー・エネルギーに45グラム(角砂糖11個分)、ウェルチ オレンジ100に96グラム(角砂糖24個分)、C.C.レモンに50.5グラム(角砂糖12個分)といった具合に大量の糖が含まれています。
本来、健康な人間の体内には約4.5リットルの血液があり、その中のブドウ糖濃度(血糖値)は空腹時90mg/dlです。つまり、その血液中には4グラム前後のブドウ糖が存在します。それだけあれば十分だから、この数値なのです。
では、4グラムでいいところに、コーヒー飲料などを飲んで、いきなり大量の砂糖がドバーッと入ってきたらどうでしょう。人間の体がまったく想定していなかった、ばかげた事態が起きるのです。
「血糖値」が健康管理の最大のカギである
――日々のイライラから老化・病気まで生み出すもの
「血糖値」という言葉は、あなたもすでにご存じでしょう。会社の健康診断でも、「空腹時血糖値」や、ここ1〜2か月の血糖値の推移を見る「ヘモグロビンA1c値」が調べられているはずです。これら数値が高ければ糖尿病が疑われます。
この血糖値、糖尿病に限らず、あなたの健康状態のすべてを決めると言っても過言ではないのです。
第一に、「血糖値が高い状態が肥満をつくる」という事実があります。詳しいメカニズムについては新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』で解説していますが、あなたが太るのは脂っこい食べ物をとったからではなく「血糖値が上がったため」です。逆に、血糖値を低く抑えることさえできれば、肉を食べようと、揚げ物を食べようとあなたは確実にやせていきます。
太っている人が「やせなさい」と医者から言われるのは、肥満があらゆる病気の引き金になることはもはや疑いの余地がないからです。脳疾患や心疾患、がん、認知症など、怖い病気はみんな肥満と関係しています。
一方で、糖尿病患者には、こうした病気の罹患率が高いことが明らかになっています。つまり、そもそも血糖値が高いこと自体が、体にあらゆる悪さをしているのです。
これも詳しくは『医者が教える食事術 最強の教科書』で書いていますが、血糖値が高いことで免疫力が落ち、さらには「AGE」という悪玉物質が体の中でつくられ老化が進みます。血糖値が高ければ、血管も内臓も、皮膚などの外見もぼろぼろになってしまうのです。
また、血糖値が安定しないことで、イライラ、眠気、倦怠感、吐き気、頭痛といった不快な症状も招きます。
まさに血糖値は、健康管理における最大のカギと言えます。それを理解している人たちは、自分の血糖値に無関心ではいません。
たとえば、海外のサッカーチームで活躍する、ある日本代表選手は、パフォーマンスを上げるために、「FreeStyle リブレ」という器具を用いて血糖値をコントロールしているそうです。
リブレは本来、糖尿病の患者さん用に開発されたものですが、意識の高い人たちは自分の健康管理のために使いこなしています。つまり、知的なビジネスパーソンがエビデンスのある健康づくりに励もうと思ったら、「血糖値をコントロールする」というテーマを第一に掲げるべきなのです。そして、それには食事を大切に考えるしかありません。
現代人の多くが実は「糖質中毒」である
――血糖値スパイクが引き起こす不快感
ところが、知的なはずのビジネスパーソンの多くが、飲む必要のない糖質たっぷりの飲料をとることで、朝から血糖値を盛大に上げています。
血糖値を上げるのは、ひとえに糖質です。脂質やタンパク質などは上げません。だから、バターで焼いた肉をたくさん食べても血糖値は上がらないし、血糖値が上がらないから太ることもありません。
一方、たった1本の飲み物が、血糖値を急激に上げ、肥満をつくり上げ健康を害してしまいます。そこには、大量の糖質が含まれているからです。
糖質は炭水化物と言い換えることができます。実際に、糖質たっぷりの清涼飲料水には「糖質〇グラム」ではなく「炭水化物〇グラム」と表記されているものがほとんどです。だから気づきにくいのです。
この糖質(≒炭水化物)は、ごはんやパン、麺類、果物、ケーキやせんべいといったお菓子、清涼飲料水など、ビジネスパーソンが普段から摂取しているさまざまな食べ物に含まれます。
こうした糖質を含む食べ物を摂取すれば、例外なく血糖値は上がりますが、上がり方はさまざまです。下の図0-3を見てください。
ごはんやパンなど固体のほうが血糖値の上昇が緩やかです。それは胃の中での消化に時間がかかるからです。ところが、液体の場合、あっというまに胃をすり抜けて小腸へ届き吸収されるために、一気に血糖値が上がるのです。健康な人の血糖値は、空腹時で80〜90mg/dl(以下単位省略)前後です。そこでごはんやパンを含んだ食事をとれば、1時間後に120くらいまで上がり、やがてゆっくりと下降していきます。こうした緩やかなカーブならばいいのですが、液体で大量の糖質をとると、とんでもないことになります。
液体の糖質は口にしてすぐに血糖値が上がり始め、30分後にはピークに達してしまいます。缶コーヒーを1本飲めば、糖尿病のない健康な人でも30分後には血糖値が140くらいまで急上昇します。これを「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値スパイクが起きると、今度はジェットコースターのように一気に下降して、血糖値が低すぎる状態に陥ります。
このときに、体の中で起きている変化について簡単に説明しましょう。血糖値がぐんと上がると、セロトニンやドーパミンといった脳内物質が分泌されて、ハイな気分になります。だから、「仕事前に気合いを入れるには缶コーヒーがぴったりだ」と誤解してしまうわけです。この、ハイな気分になるところを「至福点」と言います。
一方で、血糖値が急激に上がったことを察知した体は、それを下げるために慌てて膵臓から大量のインスリンというホルモンを放出します。そして、血糖値が急激に下がります。
血糖値が大きく下がると、ハイな気分から一転、イライラしたり、吐き気や眠気に襲われたりと不快な症状が出ます。すると、「またあのハイな気分になりたい」とばかり、血糖値を上げる糖質が欲しくなり、同じことを繰り返してしまうのです。
これは、「糖質中毒」という脳がおかしくなってしまった非常に深刻な症状です。しかし、中毒に陥っている本人には、その自覚がまったくありません。
実は清涼飲料水などのメーカーは、人の至福点について計算し尽くし、商品を設計しています。言ってみれば、糖質中毒患者を増やすことで利益を得ているのです。知的なはずのビジネスパーソンが、それにまんまとはまってはいけません。
(この原稿は書籍『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)
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