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無資源国日本、本領発揮の時…世界でEV化加速、迫られる自動車燃料転換
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170804-00000501-fsi-bus_all
8/4(金) 7:46配信 SankeiBiz
19世紀は大英帝国の時代だった。ブリテン島で豊富に採れた良質な石炭を背景に、鉄を造り、外燃機関である蒸気機関で推進する高性能な戦艦が建造された。
ところが19世紀末に産業化された石油には、同じ体積に積み込める石炭の約2倍のカロリーがあった。戦艦の航続距離は倍になり、船員は石炭積み込みの重労働から解放されて、燃料補給はパイプをつなぐだけの簡単なものになった。
英国海軍としては戦艦群の燃料を石炭から石油へと変換しなければならないが、1つ大きな問題があった。当時、油田は米国とロシアにしかなく、広大な大英帝国内でも石油は産出されなかったことだ。
戦艦群の燃料転換の決断を下したのは、当時の海軍卿、チャーチルだった。第一次世界大戦の直前である。英国は開発されつつあった中東油田を確保しなければならなかった。世にいうオスマン・トルコ帝国の不条理な分割、英仏による「サイクス=ピコ条約」はほぼ現代の中東の国境線を定めたが、これには英国海軍による燃料確保の目的があったのだ。この頃、同時に発達したのが、ガソリンを燃料とする内燃機関(エンジン)を積む自動車である。現在、石油消費量の約7割が自動車である。
環境汚染と限りある資源の消費抑制のために、自動車は燃料消費について対策を迫られている。日本はエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)で当面を乗り切り、水素を燃料とした燃料電池自動車(FCV)や電気自動車(EV)へと移行する作戦だ。
一方、欧州では燃料効率の良いディーゼル車に注目し、現在、乗用車販売の50%を超えている。ところが一昨年のドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車排ガス不正計測以降、流れが変わった。昨年9月のパリ・モーターショー以降は欧州主力メーカーの間でEV普及に向け脱内燃機関の動きが顕著になった。
7月初旬、フランスのユロ・エコロジー大臣(環境連帯移行大臣)は2040年までに二酸化炭素(CO2)の排出削減のため、国内におけるガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すると発表し、英国もそれに続いた。スウェーデンの高級自動車メーカー、ボルボは2年間でEVとHV以外の製造をやめると宣言した。
中国では環境汚染対策に加え、産業として参入障壁の高い内燃機関を使用した自動車よりも、水平分業が可能で参入しやすいEVを推進するインセンティブが強い。現実に各種の優遇措置によりEVは中国で一番売れている。最新予測ではEVは40年に54%のシェアになるとされているが、技術革新のテンポが速いため、シェア予測は年々増加している。当面は内燃機関との経済性の競争になるだろうが、今後、世界のEV化の動きが加速することは間違いない。
21世紀は石油の時代が終わり、この分野でも新しい地政学上の変動が見え始めているのかもしれない。そういう意味では、トランプ米政権による地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」離脱は、米国が栄華を誇った石油全盛時代への単なる懐古趣味なのかもしれない。わが国においては、主力輸出品である自動車産業の対応が今後の国家の浮沈を握る可能性が高い。今こそ資源を持たざる国の本領発揮を願いたい。(板谷敏彦)
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