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7月7日、日本銀行は指定した金利水準で国債を買い入れる「指し値オペレーション」を5カ月ぶりに発動した Photo:Ryosuke Shimizu
日銀の伝家の宝刀「指し値オペ」がインフレ目標と矛盾する理由
http://diamond.jp/articles/-/135728
2017.7.20 加藤 出:東短リサーチ代表取締役社長 ダイヤモンド・オンライン
7月7日に日本銀行は、米欧の債券市場の動きにつられて上昇していた10年日本国債の金利を抑え込むため、「伝家の宝刀」とでもいうべき国債買い入れの「指し値オペレーション」を発動した。
通常、日銀が国債を市場から買い入れるときは、競争入札によって金利が決定されるが、「指し値オペ」の場合、日銀は購入したい金利水準を提示する。今回は0.11%だったが、これにより「10年金利の上限は当面0.11%」という日銀の意志が市場に伝わった。
ただ、日銀が10年金利をコントロールする政策は、実は矛盾を抱えている。理屈上は、「現在のようなマイナス金利政策および大規模な国債買い入れ策が、今後10年間継続される」と市場参加者に信じさせなければ、10年金利をゼロ%近辺に誘導することはできない。
他方で日銀は、できるだけ早くインフレ率を2%にするとアピールを続けている。
もしも市場が早期のインフレ目標達成を信じたら、「日銀は遠からず出口政策に向かう」→「長期金利は大きく上昇する」→「持っている国債を早々に日銀か他の市場参加者に売却せねばまずい」という連想が強まる。その場合、日銀が「指し値オペ」を少々実施したくらいでは、長期金利の上昇圧力は鎮められないだろう。
だが、これまでのところ、10年金利の誘導に日銀が成功しているのは、皮肉ではあるが、この政策の目的であるインフレ予想の押し上げに失敗しているからだと考えられる。大半の市場参加者は、「インフレ率の上昇は遅く、金融政策の正常化も遠い」と見なしているため、長期金利が制御不能になる事態は避けられている(冒頭で述べたように、今回の長期金利上昇は海外要因によるもの)
ところで、日本証券業協会調べの公社債投資家別売買高における売付額と買付額の合計(多くは国債の売買)を見てみると、日銀が異次元金融緩和策を実施してきたこの4年ほどの間に、機関投資家の取引額は激減してしまった。
2012年の平均に対する17年5月までの1年間の平均売買高は、「都市銀行(長信銀等を含む)」で86%減少、「農林系金融機関」で73%減少、「生保・損保」で69%減少だ。多くの機関投資家は、日銀によってゆがめられた債券相場に嫌気が差し、取引を必要最小限にとどめている。
債券市場での中心的な取引は、証券会社による「日銀トレード」(日銀に国債を売却してサヤを抜く取引)だ。また、外国人投資家が非常に低い円資金を調達して、同時に短めの日本国債を購入するキャリー取引も、一時より減ったとはいえ、高水準で行われている。
日本経済の長期的なファンダメンタルズや財政の健全性を考慮した国債の売買は、今やぞっとするほど少なくなっている。その方が、日銀の目先の10年金利誘導にとっては楽な面があるが、国債の適切な価格形成が市場でなされなくなることは、長期的には日本経済にとって非効率かつ危険といえる。
なお、日銀は7月20日発表の展望レポートで、新しいコア消費者物価指数の予測を発表する。最近の同上昇ペースは遅いだけに、今年度の予想はさすがに下方修正されるだろう。
しかし、18年度にインフレ目標が達成されるとの予想はかなり苦しいながらも維持されそうだ。追加緩和の手段も限られているため、人手不足でいずれ物価は上昇するというシナリオに日銀は懸け続けると思われる。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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