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コンビニ店舗に陳列される雑誌や書籍
本が店頭に並ばない!? 危機を迎える出版流通 相次ぐ運送会社の撤退に、急がれる業界横断的な流通改革
http://diamond.jp/articles/-/134332
2017年7月12日 カーゴニュース ダイヤモンド・オンライン
出版流通が危機的状況を迎えている。かつては、路線会社をはじめとする運送会社が各地の輸配送業務を取り合ったが、最近は同業務からの撤退を決める企業が後を絶たない。
出版取次5社と輸送会社19社で構成される出版取次協和会(柏木祐紀会長)が掲げた2017年度のテーマ『出版流通を止めない〜すべては読者のために〜』にも、厳しい業界動向は端的に表されている。
背景には複数の社会情勢の変化があり、抜本的解決が難しい事情もあるが、「本」という文化を全国へ届け続けるために今、企業の垣根を越えた出版流通の再構築が求められている。
雑誌の売上低迷とコンビニ出店増が
運送会社の収支を圧迫
雑誌や書籍といった出版物は、主に首都圏で印刷・製本し、幹線便で各地の物流センターに持ち込まれて、同所より書店やコンビニエンスストア(コンビニ)店舗へ届けられる。輸配送業務は取次が手配し、業量(出版物の取扱量)が多い大都市圏では各社による自家配送が中心で、地方では複数の取次が共同で車を仕立てる共配便となる。
配達時間帯は主に夜間で、閉店後の書店や無人のコンビニ店舗などは運送会社がカギを預かって納品している。
運送会社の収支を圧迫しているのが「業量の落ち込み」と「配送先の増加」だ。出版物全体の流通量は年々縮小しており、中でも雑誌はスマートフォンの普及などに押され、より顕著に販売量を落としている。
他方で、配達先件数はコンビニ店舗の拡大で増加の一途を辿る。出版物輸送は共配が多いこともあり、運賃契約が重量建て。一件当たりの業量が減って配達件数が増えれば固定費負担は重くなり、運送会社の経営を圧迫する。
物流センターから出荷される出版物
1985年から宮城県全域の書店およびコンビニエンスストア配送を担当している中央運輸(本社・東京都中央区、赤澤善博社長)では、業務開始当初は450店舗に向けて車両18台で配送していたが、現在の配送先店舗数は1600に上り、車両数も42台へ増加。
一見、事業が順調に拡大しているようにも見えるが、店舗数の伸びと反比例して業量の減少には歯止めが掛からず、2003年に月間3000t以上あった取扱量も、今ではその半分の1500tまで縮小している。「現状は非常に厳しい」と赤澤社長は話す。
同様の状況は全国の出版物物流で起きている。さらに、重量物でありながら作業は手積み手卸がベースで、ドライバー不足や人件費上昇などの要因も重なって、まさに三重苦、四重苦の状態。
「出版不況」とコンビニの拡大は今後も続くと見られ、「選択と集中」の経営判断から、出版物物流から手を引く会社が現れ始めているというわけだ。
最近では返本スキームの変更も、出版物を扱う運送会社の収支に大きな影響を与えた。もともと返本は出版物の納品時に回収しており、取次と運送会社では返本分を含めた業量をベースに運賃単価を設定していた。
しかし、一部のコンビニが自社の店舗納品トラックによる返本回収へと切り替えたことで、出版物輸送会社が本来得られる返本分の運賃が入らなくなり、収益はさらに悪化。加えて、コンビニ店舗への納品は時間帯指定も厳しく、車両の効率的な運用を阻害しているとの指摘もある。
土曜休配日増加による効果は絶大、
17年度は8日増の13日に
「出版流通を止めない」「すべては読者のために」――という各者の強い想いの下、業界ではサプライチェーン横断的な流通改革も始まっている。
象徴的な取り組みが、版元の理解を得て実現した「土曜休配日の増加」だ。
日本出版取次協会(平林彰会長)では、2017年度の土曜休配日を13日に決定。16年度は5日、13〜15年度は4日であり、大きな見直し。「休配日の増加は売上減につながる」として反対する出版社もあるが、物流面では休配日分の運送固定費を減らせる上、平日配達の業量が増えることで収支改善に直結する。
また、コンビニ店舗への納品時間指定も、以前は指定時間の前後15分しか余裕が認められていなかったが、今は指定時間前150分、指定時間後30分まで制約が緩和された。
コンビニエンスストアチェーンの物流センターへ出版物を納品し、日雑品などの納品車両へ混載する共同配送なども試行されてはいるものの、商品の仕分け方法や納品時間など流通形態が出版と日雑品では異なるため物流の共同化は難しく、実現には至っていない。
運送会社側でも様々な貨物の積み合わせを検討する。まず頭に浮かぶのが新聞だが、こちらも販売量が縮小しており、いずれ同じ問題に直面するとして、将来性のある解決策とは言い難いという。
運賃面でも基本運賃の値上げや車建て契約への変更などが物流サイドからは望まれるが、出版取次各社も総じて厳しい経営環境にあり、運送会社側も「無い袖は振れないだろう」と諦め気味だ。
宅配業界などでは営業所やロッカーなどへ消費者が荷物を引き取りに来る仕組みが広がりつつあるが、出版物物流においても輸配送に関する根本的な思考転換が求められているのかもしれない。
たとえば、長距離ドライバー不足から出版物でも幹線便の運行が難しくなっているが「現在、首都圏に一極集中している印刷機能を各地に持たせることで長距離輸送を減らすことができるのではないか」と赤澤社長は示唆する。
厳しい環境下ではあるものの、運送会社、出版取次、そして版元というサプライチェーンの担い手が同じテーブルで話せる土壌を持つのは、プラス材料でもある。各者が過去のしがらみにとらわれず、いかに知恵を絞れるかに出版流通の存続が掛かっている。
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