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「amazon web services HP」より
アマゾン、人間の日常生活の全領域に進出か…世界のあらゆる市場で圧倒的存在感
http://biz-journal.jp/2017/07/post_19682.html
2017.07.06 文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授 Business Journal
足元の米国の株式市場は史上最高値圏で推移している。それに対して、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー米イェール大学教授をはじめ多くの専門家は、「株価が割高だ」と指摘している。それでも、投資家はこの強気相場が続くと先行きを楽観しているようだ。なかでもハイテク銘柄への期待は強い。
そのなかでも、アマゾンの存在感は群を抜いている。すでにアマゾンが提供するクラウドシステムは、市場の30%程度のシェアを誇っている。また、スポーツ用品大手のナイキは、アマゾンでの直接販売を行うことを決定した。着実にビジネスラインアップは増え、アマゾンの業務は強化されている。
同社の特徴の一つは、他の業界のビジネスを自社内に取り込もうとしていることだ。アマゾンは、独自の生態系=エコシステムをつくり、広げようとしている。その結果、わたしたちの日常生活に占める特定の企業の存在感はこれまで以上に大きなものとなるだろう。
■あらゆるものを、のみこむアマゾン
アマゾンは、自社が影響力を及ぼすことのできる市場を拡大しようとしている。これがアマゾンの成長戦略だ。一言でいえば、規模の拡大だ。アマゾンは特定の市場、業界などを念頭に置いて規模の拡大を目指しているのではない。一人、あるいは一社でも多くの顧客(ユーザー)を確保する可能性があると考えられる分野に積極的に進出している。
言い換えれば、アマゾンはネット通販、クラウドコンピューティングなどのIT技術を基礎にして、人々が欲しいと思うコト・モノを生み出そうとしている。生鮮食品を家に居ながらにして買うことができれば便利だ。ただ安い品を手に入れるのではなく、できるだけクオリティの高い食材を、楽をして買いたいという根源的な欲求も高まっているのではないか。そうした人々に対して、アマゾンは解決策を示し、自社のユーザーになってもらおうとしている。
その一例が、アマゾンによる米高級食品スーパーのホールフーズ・マーケットの買収だ。アマゾンは単に売るのではなく、より安く、良いものを、効率的に消費者に届けることを目指している。アマゾンはITと従来の物流システムを融合させ、“物流革命”を起こそうとしているともいえるだろう。
この買収に関して、多くのアナリストが「ネットで生鮮食品が売れるのか」との疑問を持ったはずだ。その裏には、「生ものは店舗で扱うのが常識」との発想がある。そのため、アマゾン=ネット通販という認識に対して、店舗販売というビジネスモデルは簡単には融合しないと考えられがちだ。むしろ、ネット通販は小売店舗のライバル、脅威としてとらえられることが多い。しかし、アマゾンにとって小売業者はパートナーであり、事業基盤の拡大につながる一つの存在である。
しかし、アマゾンには従来の発想が当てはまらない。アマゾンはIT技術を生かして、他のセクターを自らのビジネスに加えていこうとしている。それは、自社のビジネスセグメント=生態系を拡大することにほかならない。
■ネットワークがもたらす莫大なインパクト
アマゾンの生態系の拡大は、自社を中心とする情報ネットワークの拡大と言い換えられる。情報ネットワークの拡大により、アマゾンは質と量の両面で膨大なデータを入手することができるだろう。ここに、アマゾンが目指す真の姿が潜んでいるように思えてならない。
一般的に、企業の買収は“時間を買う戦略”といわれることが多い。創業まもない企業であったとしても、ライバル企業を買収することによって、より短い期間で一定の成長を達成することができる。
しかし、アマゾンの買収戦略には、それとは異なる意図があるのではないか。同社にとって、買収は企業や顧客を取り込み、生態系を拡大させる手段だ。ナイキのように、アマゾンでの直販を行う企業が増えることも同じだ。
こうした動きは、アマゾンが消費者だけでなく、他の企業などからも“使われる”ケースの増加につながるだろう。使われる回数が増えていくと、アマゾンは多くの企業や個人などに関するデータを集めることが可能になる。すでに、人工知能を用いることで従来よりも時間をかけずにデータの分析を行うことが可能になっている。情報技術の発達とともに、この動きは加速するだろう。
突き詰めて考えると、アマゾンの成長戦略である情報ネットワークの拡大は、ビッグデータの収集を可能にすると考えられる。多くのユーザーに関する質的にも量的にも膨大なデータを分析することで、知られていなかった消費行動や経済のトレンドが発見できるかもしれない。
それが実現すると、アマゾンは新しいコト・モノを生み出し、市場を創造することができるようになるだろう。ビッグデータを活用することによって、企業の生態系が自己増殖的に拡大する。中長期的に、そうした展開は排除できない。
■ネットワークをめぐる競争に備えよ
アマゾンの経営は他の米国ハイテク企業から一歩抜け出している。最終的に自己増殖的なビジネスプラットフォームの構築を目指しているという点で、アマゾンの戦略には切れ目がなく、エレガントだ。グーグルの親会社アルファベットは、持ち株会社制に移行することで事業ポートフォリオを拡充し、成長を加速しようとしている。しかし、同社は広告ビジネスと個人情報保護の問題に直面している。アップルはデバイスメーカーとしての存在感は大きい。しかし、ネットワークの点ではアマゾンに出遅れている。
わが国の株式市場では、個々の企業の成長性を見定めようとする投資家が増えつつある“SUNRISE(日の出)銘柄”と呼ばれるソフトバンク、任天堂、リクルート、ソニーは、積極的な投資戦略やIT技術を生かしたコンテンツの開発、半導体市場でのシェア獲得で注目を集めてきた。こうした企業は、ネットワーク技術の高度化の恩恵を受けるだろう。問題は、自らネットワークを拡大し、自社の成長基盤を強化しようとしているかだ。現時点では、国内企業の戦略にそうした取り組みは見当たらない。
ネットワークを他社に先駆けて拡大できた企業は、ビッグデータの入手においてより有利な立場に立つだろう。企業=ミクロレベルの目線で考えると、ビッグデータを成長につなげるという点で、戦略は目的と適合している。
マクロのレベルで考えた時、特定の企業が多くのプライベートな情報を手中に収めることには注意が必要だ。それを防ぐために、規制強化に向けた議論は進みやすい。それに加え、わが国でもアマゾンと対等に競争できる企業を育てるべきだ。政府は競争原理を発揮し、企業が切磋琢磨する環境を整備していかなければならない。企業は、業界の慣行や旧来の発想にとらわれず、連続的なイノベーションを目指す必要がある。
アマゾンをはじめ、米国のハイテク銘柄は割高だ。どこかで相場が調整する可能性は排除できない。しかし、それがネットワークの拡大競争の終わりになるわけではないはずだ。ネットワークが社会に浸透するにつれ、人工知能を用いたビッグデータの活用も進むだろう。その動きに対応していくことが、国内企業の競争力と経済基盤を左右するだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)
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