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破綻したタカタを最後まで追い詰める日本自動車業界の「いじめ体質」 問題はまだ終わっていない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52193
2017.06.04 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■負債総額がいまだに見えてこない
自動車部品大手のタカタが、エアバッグの異常破裂問題に端を発した経営危機に沈んだ。6月26日に、東京地裁に民事再生法の適用を申請、これを受理された。
タカタは今後、中国系の米自動車部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)の傘下に入り、もう一つの収益の柱であるシートベルトなどを中心に、再建をめざすという。
タカタ問題では、新聞各紙が報じている通り、早くから同社製のエアバッグに欠陥製品疑惑が浮上していたにもかかわらず、米政府やマスコミへの対応の遅さや拙さばかりが目立った。こうした対応が、同社の苦境を増幅した感は拭えない。
また、行政や自動車メーカーが依然としてエアバックの経年劣化問題に手をこまねいており、消費者のための部品の定期交換制度がいまだに確立されていないことも大きな問題だ。安全確保の視点が抜け落ちている。
加えて、民事再生法に基づく再建策づくりが本格化する中で、筆者が注目しているのが、負債総額をめぐるマスコミの下馬評と、タカタ自身の認識のあまりにも大きなギャップだ。
負債総額が1兆円を超えてわが国の製造業者として過去最大の倒産劇になるというマスコミ報道と、同社自身が26日に発表した今年3月末の負債総額(約3800億円)を単純に比べても、実に3倍近い開きが存在する。この大きな格差にこそ、タカタの直面した自動車業界の闇の深さが潜んでいるのではないだろうか。
■再発防止が進まなかった理由
2016年版の会社案内によると、タカタは1933年、滋賀県で織物製造業者として創業した。
自動車分野では、1960年に2点式のシートベルトの製造・販売を、1980年に世界初の運転席用のエアバックの量産を開始。最近までタカタのエアバッグの世界シェアは約2割を保ち、世界最大手スウェーデン・オートリブ社に次ぐ2位につけていた。2016年3月末現在で、世界21カ国に57の生産拠点を有し、従業員数は約5万人に達していた。
エアバッグの欠陥が原因で最初に死亡事故が起きたとされたのは、2009年5月のことだ。米オクラホマ州で、衝突事故の際にインフレーター(ガス発生装置)が異常爆発。飛散した金属片が、当時18歳の女性の頸(けい)動脈を切断、命を奪った。2016年2月2日付のロイター通信によると、米国を中心に死者が少なくとも16人、負傷者が150人以上に達したという。
最初の悲劇から7年ものあいだ、再発防止策の導入が進まなかったのは許しがたいことだ。しかし、そこにそれなりの事情や原因が存在するのも事実だ。
第一は、最初の死亡事故が、何かあるとすぐ日本車バッシングに火がつく米国で起きたことだ。
米国のメディアは、タカタ製エアバッグを「殺人エアバッグ」とセンセーショナルに報じた。米当局は政治的な思惑から、原因が特定できない段階で、部品のサプライヤーに過ぎないタカタにリコール実施を強要して、問題を複雑にした。本来なら前面に立つべき日本車メーカーが尻込みしてしまい、タカタ自身も機動的に効果的な対応策を打ち出せなかった。
第二に、最初の死亡事故以前にも、リコール騒ぎがあったことが影を落とした。
タカタは当初、不具合を主に自動車メーカーの責任とし、メーカーはリコールを進めた。ところが、その後リコール対象以外の車種でも、死亡事故を含む事故が急増した。原因究明のために不可欠だったとはいえ、エアバッグ問題でリコールをくり返す事態に追い込まれたことが、自動車メーカーにとって不本意な事態でなかったはずがない。
第三に、タカタが調査を委託したドイツの研究機関が、タカタの製造管理ミスや火薬の経年劣化だけでなく、エアコンの傍にエアバッグを置くという自動車メーカーの車両設計ミスにも異常爆発の原因の一端がある、と指摘したことも無視できない。自動車メーカーとタカタのあいだで深まっていた亀裂を決定的なものにする要因になったからだ。
■事故のリスクは消えていない
当初、車検制度のない米国とは違い、日本では偶数回の車検時などに定期的にエアバッグの火薬を交換する仕組みをつくることは容易とみられていた。
だが、自動車メーカーとタカタの不協和音、さらには火中の栗を拾いたがらない国土交通省の逃げの姿勢が仇となり、こうした安全対策はいまなお整備されていない。
基本的には、火薬の経年劣化についてきちんと公表し、消耗部品として、消費者のコストで定期交換する制度を整えればよいはずだ。しかし、すでに販売してしまったエアバッグの改修費用を、メーカーとタカタがどう分担するかという問題が背景にあった。
ここで筆者が指摘しておきたいのは、現行のエアバッグは、タカタ製に限らず、すべての製品に火薬が使われており、すべての火薬が経年劣化するという問題だ。およそ6年で定期交換する必要がある。つまり、いざというとき、エアバッグが安全かつ正常に膨らまないリスクは依然として存在しているのである。
このことは、2015年5月12日公開の記事『タカタ製だけじゃない。経年劣化ですべてのエアバッグが危ない!? 』(※閲覧にはプレミアム会員登録が必要です)にも書いたので、興味のある読者は一読してほしい。
上記に加えて、創業家出身の高田重久会長兼社長が、なかなか公式の記者会見の場で責任の所在を明確にしようとしなかったことが、社会的なタカタ不信を掻き立てたことも見逃せない。
こうしたなかで、自動車メーカーからの受注激減と、リコール関連費用の増大によって、タカタの屋台骨は音を立てて崩れ落ちた。2017年3月期の連結最終損益は、マイナス795億円と3期連続の赤字に沈んだ。
■新聞は負債総額を「1兆円」と
先週、タカタ本体と米子会社TKホールディングスを含むグループ15社が、内外で法的整理を申請した。
タカタは、新旧会社分離を行ったうえで、債務整理を行うことになった。過去に販売したエアバッグのリコール対応を行う部門を旧会社に残し、新会社は中国・寧波均勝電子傘下の米KSSに譲渡。同社の傘下で再建を目指す。また、再生計画策定中のつなぎ資金として、三井住友銀行が250億円の融資枠を設定したと発表した。
新聞各紙は競うかのように、タカタの負債総額は連結ベースで1兆円を超える見通しと報じている。この数字は、昨年破たんしたパナソニックプラズマディスプレイ(負債総額5000億円)や、2012年に破たんしたエルピーダメモリ(同4480億円)を上回って製造業では最大の規模だ。
民事再生法の適用申請を記者会見で発表するタカタ幹部陣 photo by gettyimages
遅ればせながら、高田会長兼社長が6月26日の記者会見に出席し、再生計画の策定にメドがついた段階で身を引く覚悟を表明したことは、評価していいのではないか。
各方面に相応の債権カットを依頼する以上、創業家出身者を含む経営陣が居座るのは論外だ。経営責任をとって退任するのは当然のことだろう。減資により、創業者一族の保有株も償却原資に回す措置をとらないと、債権整理もままならない。
■タカタの認識と大きくズレている
ただし、タカタが東京地裁に提出した債権者リストを見ると、今後の再生計画づくりは容易でないことが予見される。
リストによると、タカタが現時点で認識している債権額は1412億円(債権者数767社)と、前述の3月末残高(約3800億円)を大きく下回っている。
タカタ代理人の小林信明弁護士は6月26日の記者会見で、最終的な負債総額について、「概数としても民事再生手続きのなかで決まっていくので、認識していない」「リコールに基づく負債がどれくらいあるかなかなかわからない」「自動車メーカーと協議してどちらの責任でどれくらいになるかまとまっていない」としている(日経QUICKニュース)が、下馬評の1兆円との開きは歴然だ。
ちなみに、トヨタ自動車・ホンダ・日産自動車の自動車大手各社は、タカタに対する貸倒引当金をすでに計上済みで、「今後の業績への影響は軽微だ」とコメントしている。
ただし、トヨタがタカタに対する債権額を5700億円としているのに対し、タカタはトヨタの債権額をわずか266億2000万円と見積もるなど、両者の見解には大きな開きがある。
いったい、なぜ、これほどの開きが生じるのだろうか。
銀行筋の見立ては、「自動車メーカー側にタカタの責任の所在がなお不明確という意識から、どうせ破たんするのならば、タカタにできるだけ多く負債を抱えて破たんしてほしいという思惑が働き、債権額の見積もりが適正でなかった可能性がある」というものだ。
そこにあるのは、債権カットの分担額を確定することの難しさを予感させる意見対立だけではない。1歩間違えば、日本の自動車業界で完成車メーカーによる”下請けいじめ”が横行していることを、満天下に知らしめることになりかねない“爆弾”が存在しているのである。
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