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一人勝ちアマゾンの「市場と情報の寡占」がはらむ危険性
http://diamond.jp/articles/-/133229
2017.6.27 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
米国株式市場の活況を象徴するようにアマゾンの株価は5月30日には初めて1000ドルを超えた。6月に入っても、アップルの新型スマートフォン投入が遅れるとの見方からハイテク銘柄が急落した場面を挟み、アマゾンの株価は上昇トレンドを維持している。“ネットワーク技術”が社会を大きく変えるとともにそこに巨大なビジネスチャンスが拡がる期待が高まっていることが背景にある。アマゾンはそうした期待を担うハイテク銘柄の代名詞であり、株式市場のスター的存在だ。
ビッグデータを集めて
IT空間を囲い込む成長戦略
高株価の背景には成長への期待があり、端的に言えば、アマゾンによる市場の寡占が進むとの見方が増えている。
アマゾンの戦略を一言で言い表すなら、“囲い込み”だ。
顧客、市場を手中に収めて、人間の行動に関するビッグデータを他社に先駆けて集めようとしている。
その一例が、今月16日に発表された米高級スーパーのホールフーズマーケット買収だ。これを多くのアナリストは、アマゾンによる既存業界の破壊と評した。しかし、アマゾンは、買収後もホールフーズのCEO(最高経営責任者)をその職にとどめさせると報じられている。
破壊とは違って、その狙いは高級食材を求める人々の根源的な欲求などに関するデータを収集し、それを情報に変換することで今後の収益基盤を拡大することだと考えられる。
スピーカー型端末である“Amazon Echo”はどうだろう。
これは、人工知能を搭載したデバイスだ。この製品は、人間の日常生活にあふれる会話、あるいは発声を蓄積することを可能にする。
長い目線で考えると、日常生活に人工知能が用いられることで、人間の行動をより詳細に解析できるようになる。その結果を用いて、より高度な人工知能を設計することも可能となろう。
2045年には、人工知能は人間の知能を超越するという理論がある。それが本当に実現するか否かは判断できない。それでも、アマゾンの戦略には、ネットワーク、および、人工知能などの技術を用いてデータを収集し、それをビジネスに昇華させようとする意図が読み取れる。
まさにアマゾンはイノベーターなのだ。
モバイルデバイスなどのIT機器を通して、多くの人が直接つながる巨大なネットワークが形成されている。それによって、特定のモノを売りたい人と買いたい人が繋がれ、これまでの小売業者を通さない売買がさらに盛んになるはずだ。その裏側で、個人の消費行動などに関する膨大なデータが特定の企業などに蓄積される。このビッグデータが分析され、企業などの意思決定を支える情報となる。
ビッグデータを入手するためには、多くの人をIT空間のネットワークで囲っていくことが欠かせない。今、このネットワーク技術の構築に関する競争をリードしている企業がアマゾンというわけだ。
アマゾンは新しい製品やサービスを矢継ぎ早に投入しているだけでなく、企業の買収にも積極的なのも、実はこの狙いがあるからだ。事業の拡大を進めている状況を、多くのアナリストらは、「アマゾンはオンライン通販でできることは何でもしようとしている」と評している。だがこの指摘はあまりに表層的すぎる。そして、本質を捉えているとは思えない。
アマゾンはビッグデータに着目し、そのデータから得られる情報をもとに、いままでにない製品など、生産の方式、組織、顧客、供給網を生み出すというイノベーションを実現しようとしている。
イノベーターとしての期待があるから、株価が上昇基調で推移しているのだ。
寡占企業が市場を手中に収め
消費者を依存させコントロールする
だが一方で、社会自体を変えていくそのビジネスモデルを考えると、今後の金融市場と社会にアマゾンが与える影響は軽視できない。
まず株式市場でいえば、成長期待があるとはいえ、アマゾンの株価は割高だ。今すぐではないにせよ、同社の株価が何かの拍子に下落し、調整局面を迎える可能性は排除できない。アマゾンへの期待がハイテク銘柄を支えているとの見方すらある中で、アマゾンの株価が下落すれば、米国の株式市場全体にも下押し圧力がかかるだろう。
アマゾンの株価と一株あたり利益(EPS)の比率を示す株価収益率(PER)はすでに180倍を超えている。これについて、専門家の間でも様々な意見が飛び交っている。5月に投資の賢人といわれてきたウォーレン・バフェット氏がアマゾンに投資しなかったことを後悔していると報じられたこともあり、いまはどちらかというと強気の見通しを持つ投資家が多いようだ。だが、かつてITバブルや不動産バブルが一気に崩れたように、成長期待がしぼんだ時には思わぬ影響が広がりかねない。
特定の企業が特定分野での存在感を高めてしまうと、様々な弊害も出始める。
常々、各国政府などから、特定の企業が高いシェアを握ることへの懸念が示されてきた。
特に欧州では、欧州委員会がマイクロソフトに対して、公正な競争を阻害しているとの裁定を出したことが知られている。欧州委員会はグーグルに対しても、アンドロイドのモバイルOSが独占禁止法に抵触しているとの調査を進めている。調査の結果次第では、制裁金が課される可能性がある。
マイクロソフトやグーグルのように、市場の独占・寡占化が進むのは、その企業の製品やサービスが顧客・消費者に受け入れられてきたからに他ならない。ただ、特定の企業が提供する製品やサービスへの依存度が高まると、その企業の経営動向によって、個人、企業、社会全体に無視できない影響が及ぶだろう。
アマゾンもプライムサービスの拡充などを通して、多くの顧客を引き付けている。今後も、同社はより多くのカスタマー=顧客を引き付けようと戦略を打ち出すだろう。これが成功すれば、アマゾンは多くの付加価値を生み出すだろう。同時に、アマゾンが市場をコントロールするほどの力をつける恐れもある。それは、社会全体にとって好ましい状況とは言えないだろう。
例えば、アマゾンのサイトを見ていて、おすすめ商品を無意識のうちに買ってしまった経験のある人は少なくないだろう。ネットワーク技術が高度化するにつれ、企業が発信した情報は、人々の行動により大きな影響を与えていくだろう。社会全体のレベルで考えた時、それがどのような影響をもたらすかは注意深く考えるべきだ。こうしたネットワーク技術の影響も理解しておく必要がある。
またIT空間での取引が増えることにより、個々人がサイバー攻撃に遭うリスクも高まる。
独禁法強化は活力を奪う
アマゾンと競争できる企業が必要だ
こうしたネットワーク社会の巨大企業が起こし得る展開を防ぐにはどうすべきか。
独占禁止法などの法規制を強化すべきとの意見はある。それは寡占化を防ぐためには有効だが、同時に企業の活力を奪うだろう。企業が市場のシェアを高めることは、より多くの収益を確保していくためには欠かせない。
本質的に考えれば、アマゾンと互角に競争できるよう、企業の成長を支える環境を作ることが必要だ。
今、日本の株式市場では、SUNRISE(ソフトバンク、任天堂、リクルート、ソニー)銘柄など、個々の企業の成長性に焦点が当たり始めている。アマゾンに比べ小粒な感は否めないが、こうした企業の成長なしに、日本が今後のグローバル競争に勝ち残ることは容易ではない。最終的には、新しい事業を創出し、競争に勝ち残ろうとする企業のアニマルスピリットを、国が引き出し、支えることができるか否かが問われる。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
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