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仮想通貨バブルは金融の「創造的破壊」への期待で膨らんだ
http://diamond.jp/articles/-/131538
2017.6.13 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
多くの仮想通貨の対ドル交換レート(価値)が急騰し、バブルとの指摘も増えている。激しい値動きに魅かれ、日本でも多くの個人投資家が「ビットコイン投資」をしているようだ。ただ、相場の高騰が永久に続くことはない。仮想通貨の値上がりはどこかでピークをつけ、下落することになる。だが仮想通貨が社会全体のイノベーションを進める可能性を考えれば、取引や利用は増え続けるだろう。
仮想通貨バブルの発生
数ヵ月で数十倍に値上がり
4月以降、多くの仮想通貨の価値が急騰し、バブルの様相を呈している。中には、ライトコインのように価値が数ヵ月間で数十倍も上昇したものもある。
バブルが発生するためには、カネ余りに加え、誰もが信じる成長神話のようなものが欠かせない。足元、世界経済を見渡すと、歴史的な低金利環境の中で多くの投資家が先行きに対する警戒感を低下させる一方で、有利な投資先を探している。それが、仮想通貨への資金流入を支えている。
相場の高騰につられ、個人投資家も仮想通貨の取引を積極的に行っている。
「ドル高」が予想されながらドルの上値がなかなか高くならないなど、、為替相場が膠着状態にあるのを考えると、値動きの激しい仮想通貨は、短期間での利得確保を狙うにはうってつけと、映りやすい。
発展の初期段階にある仮想通貨市場は、取引量はまだ少ない。1ビットコインを売買する際、取引所が提示する買値と売値が、1万円程度乖離することもある(このスプレッドは取引所ごとに違う)。もし相場が急落すると、スプレッドが拡大し思わぬ損失に直面する恐れもある。こうしたリスクもあるが、相場が動くので、儲けるチャンスもあるということだろう。
一方で、一般的に、バブルが発生すると投資詐欺が増えやすい。リーマンショック後の米国では、“マドフ事件”といわれた巨額の投資詐欺事件が発覚した。こうした先行事例は、バブルが膨らむ中、わたしたちの心理が目先の利得に惑わされ、リスクの見極めが難しくなることを示している。
実際、仮想通貨に絡む詐欺事件や、不審な勧誘が国内でも増えているようだ。投資が自己責任であるだけでなく、「確実に利益を得られる」ことはありえないと考えるべきだ。
中には金融庁を名乗る者から仮想通貨の購入を勧められるケースまである。1日で数パーセントの利回りを確保できるなど、短期間で高い収益の獲得を謳った投資プログラム(High Yield Investment Program)への勧誘などもある。
詐欺などから身を守るためには、その業者が金融庁に登録されているか否かは、必ず確認しなければならない。改正資金決済法などの施行により、仮想通貨の取引業者には登録が義務付けられたからだ。また、取引所が損害保険に加入しているかも確認するとよい。
IT技術の進歩で利便性高まる
“仮想通貨2.0”への移行
だが仮想通貨バブルを金余り時代のあだ花と考えては、いけない。
バブルが膨らんでいると考えられる中でも、仮想通貨は着実に進化してきている。これは、長期的な目線でとらえるべき動きだ。
2009年に仮想通貨が取引され始めた頃、暗号技術などを用いたバーチャルな(仮想)通貨は、法定通貨(ドル、円など)と同じように支払い手段などとして使われ始めた。この段階を“仮想通貨1.0”と呼ぶことがある。
そのころ問題となったのが、取引の拡大ペースが制限されることだった(スケーラビリティの問題)。仮想通貨の場合、コインを獲得したい投資家は一種の数学の問題を10分程度かけて解き、それが一定のルールに則って承認されなければならない。銀行システムでの円での送金などを考えると、明らかに手間がかかる。
今年に入り、この問題を解決すると期待される技術、例えば取引の正確性を照合するために必要な情報を別管理にすることで、取引にかかる時間を短縮する情報処理技術が仮想通貨に搭載されてきた。それが、「仮想通貨の利用が進む」との期待を高め、仮想通貨全体の相場を押し上げている。
実際、新しい機能を搭載した仮想通貨が続々と開発され実際に取引され始めている。この段階を“仮想通貨2.0”などと呼ぶ。
“仮想通貨2.0”に分類されるものには、従来の支払い手段に加え、スマートコントラクトなど付加的な機能が備わっている。
その代表例がイーサリアムだ。これには、従来の仮想通貨が備えてきた支払い手段に加え、契約に関する情報を搭載する機能が備わっている。いつ、だれに、いくらを送金する、といった契約が自動的(スマート)に履行されるのである。イーサリアムには国内外の大手銀行、一般企業が関心を示している。
また、スケーラビリティの問題を改善するために、SegWitをはじめとする、様々な情報処理技術が使われている。こうした技術は、仮想通貨の取引を可能にしたブロックチェーン(P2P技術を用いた分散型の情報システム)の情報管理のルールを変えることなく、処理スピードの向上を実現した。
今後も、こうしたIT関連技術の発展に伴って様々な機能を備えた仮想通貨が開発され、実際に取引されていくだろう。
足元の仮想通貨市場は、こうした動きを過大に評価し過ぎている面があるが、それでも、政府の規制を受けず、より低コストで決済を成立させることができる仮想通貨への需要は高まっていくと考えられる。
金融取引やサービスで
社会的イノベーションが起きる
それでも、仮想通貨には決定的な欠陥がある。
それは、価値が不安定であることだ。いまの仮想通貨の取引では、価値を安定させる仕組みがない。
この問題を解決するために、多くの企業などが価値の安定した独自の仮想通貨を開発しようとしている。中央銀行が通貨を管理しなくとも、民間の信用力を裏付けとする通貨が流通し、経済活動が成立する世界が実現する可能性は否定できない。
その場合、銀行システムを通じて決済や送金をするやり方はしなくなるかもしれない。いずれにせよ、仮想通貨、情報技術の研究と開発が進むことで、仮想通貨3.0、4.0…と、その発展段階は高まるだろう。
突き詰めて考えると、今日の金融と経済システムにとっての仮想通貨は、“創造的破壊者”と考えるべきではないか。
特に、ブロックチェーン技術の応用が進むと、端末同士が自律的に通信しあうことで、理論的には、管理者がいなくとも組織を運営することは可能と考えられる。そこに、ビッグデータや人工知能が搭載されることで、今ではフィクションの域を出ないと考えられる世界が、現実のものになるかもしれない。
1990年代初頭のバブル崩壊後、日本では株と不動産価格の急落が社会心理を悪化させ、“羹に懲りてなますを吹く”というべき状況が出現した。足元の仮想通貨相場の急騰は行き過ぎと考えられ、調整は避けられないかもしれない。その時、「もう仮想通貨はだめだ」という悲観論が、一部で広まることも考えられる。
しかし、仮想通貨の価値安定を考えるうえで、相場の急落は重要な研究材料を提供するだろう。その教訓が生かされることで、より利便性と信頼性の高い仮想通貨が開発され、これまでにはなかった金融取引、サービスが広がる可能性がある。相場動向に一喜一憂する以上に、仮想通貨の開発がどのように進み、それが社会にどういったインパクトをもたらすかを考えることが重要だ。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
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