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ビール価格、スーパー間で対応に大きな差…某スーパーは百円値上げ、据え置きの店も
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19364.html
2017.06.13 文=A4studio Business Journal
5月から、夏を先取りしたような高気温が続いたため、「せめてもの暑気払いに」と、例年以上のハイペースでビールを飲んだ方も少なくないだろう。
そんななか、6月1日に改正酒税法が施行された。ビール好きならば決して見過ごすことのできないこの法案は、昨年5月に参議院本会議にて可決。さらに今年3月に国税庁が「酒類の公正な取引に関する基準」を制定し、次の2つの行為を禁止する運びとなった。
「正当な理由なく、酒類を総販売原価(売上原価+販管費)を下回る価格で継続して販売すること」
「自己又は他の酒類業者の酒類事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある取引をすること」
これらが意味するところは、端的にいうと“酒の安売り規制”だ。この法案の成立には「街の酒屋さんを守る国会議員の会」が関与しており、大手量販店が行う激安販売に歯止めをかけることで、個人経営の酒店を保護しようという狙いがある。
違反すれば、酒類の販売免許の取り消しや、50万円以下の罰金などの処分が下るとされており、どの店舗も対応を取らざるを得ないのである。ビールの特売で客寄せをすることが不可能になった今、各スーパーに危機感はないのだろうか。そこで、大手スーパー各社に、今回の改正酒税法の影響について話を聞いた。
■一部のビールが値上げされ、第三のビールにも波及
まず、西友・企業コミュニケーション部広報室に聞いた。質問事項は以下のとおりだ。
・6月1日を迎えるにあたり、ビールの値段はどのように改定したのか。
・5月末にビールの駆け込み需要は見られたか。
・今後のビールの販売戦略についてはどうか。
「どのビールの品目をどれくらい値上げしたか、ということは、具体的には申し上げておりません。しかし、6月1日に向けて、一部の商品につきましては価格を見直しました。
5月末に駆け込み需要があったという報告は受けておりませんが、弊社は『EDLP(エブリデー・ロー・プライス)』を推進しており、“いつでも安い”という点では定評をいただいております。会社全体で、比較的好調な売り上げで推移してきているという実績がございます。
酒税法の改正を受けて今月以降どう対策していくかは、法令順守の基で、少しでもお客様に『西友の価格は安いな』と思っていただける努力をし、これまで通りEDLPを続けていく所存です」(西友・企業コミュニケーション部広報室)
法改正に合わせてビールを値上げしたことは事実のようだが、西友はEDLPという基本スタンスを維持する方針で、ビールだけを取り立てて問題視することはないというわけだ。
また、首都圏に100店舗以上を展開する某スーパーチェーン店の広報担当者には、社名を伏せることを条件に回答してもらった。
「ひとつの指標として、『アサヒスーパードライ』の6缶パックにつきましては従来よりも約10%値上げし、100円ほど値段がアップしたかたちになっています。『第三のビール』では、銘柄によって元値に幅があるため価格の上がり幅も少しずつ違うのですが、およそ5%の値上げとなりました。
なお弊社としては、値上げ前の最後の数日間だけ駆け込み需要が見られたという印象を持っています。特に5月31日は、購入点数はそれほど伸びなかったものの、お客様一人当たりの単価は上がっていました。ビール1缶だけではなく、6缶パックを買われていくお客様が目立ったということです」(某企業広報)
●改正酒税法は本当に酒屋を守れる?
ビールが突然10%近くも値上がりしてしまったら、たとえ酒税法改正のニュースに疎かった消費者でも、購入を躊躇する人もいるのではないだろうか。
一方、6月2日付日本経済新聞記事『ビール1割値上がり』では、5月31日と6月1日とで店頭価格の比較を行っている。
例として、イトーヨーカドー食品館練馬高野台店では6月1日、「キリン一番絞り生ビール」などの350ml缶6缶パックが税抜1130円前後で売られており、5月31日に比べて4〜7%の値上げ幅だったが、そもそもイトーヨーカドーでは同月21〜31日にかけ、ビールの特売を実施していたという。
これを踏まえ、親会社であるセブン&アイ・ホールディングス広報センターに取材を行った。
「報道されている内容ですと、特売価格のビールが比較対象だったために4〜7%という開きが出てしまっているのですが、通常の売価と比べれば約1%の値上げにとどまっています。それもごく一部の銘柄だけで、他の銘柄ではほとんど値上げしていません。弊社では改正酒税法の施行前から適正な売価で商品をご提供するよう意識しており、5月末もお客様を煽るような販促をすることはなく、駆け込み需要もなかったという状況です。
気温が暑くなるのに伴いビールの売り上げが伸びることはあっても、酒税法の改正が近づいたからといって、お客様が『今のうちに買っておかなければ』と焦るほどの効果は出ていませんでした。今月もこれまでと変わらない売り上げを見込んでおりますし、ビールの販売戦略に特段の変更もございません」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)
イトーヨーカドーは5月の時点で極端な低価格販売を行っていなかった分、わずか1%の上昇幅に収まったというわけだ。逆に前述の某スーパーチェーン店の場合は、常日頃からビールを安売りしていたのかもしれないし、10%の値上げによって、ようやく他店と同水準の価格になったという見方もできる。
結局、1%や10%といった値上げ率は元値がいくらだったかによって意味合いが変わってくるのだが、某スーパーチェーン店は「今はまだ暫定的な売価設定のため、他社の動向を見ながら徐々に値段を変えていくことになるでしょう」とも語っていた。現時点では、どれだけ安く売ると違反になってしまうのかという基準が不明確なので、店舗ごとに対応が割れたという状況だ。
もうじき、ビールがより一層恋しくなる季節が訪れる。今回取材した各スーパーは、ビールの売り上げ減をあまり懸念していない様子だが、ビール愛飲家たちの消費傾向は今後、どんな動きを見せるのか。そもそも、酒店の救済という本来の目的は果たされるのか。
値段だけが焦点になるならば、酒税法が改正されたからといって、わざわざ酒店まで足を運ぶ消費者が増えるとは考えにくい。なぜなら、スーパーがビールを値上げして定価との価格差が小さくなったとしても、自宅近くのコンビニで購入する人が増える可能性が高いからだ。
また、スーパーの安売りの脅威にさらされているのは酒に限った話ではないため、数ある商品のうち、酒だけを規制したのは不可解だという指摘もなされている。改正酒税法の意義が、今後しばらく議論の的になることは避けられないだろう。
(文=A4studio)
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