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銀行、革命的刷新で巨大システム破棄か…国の管理なしで通貨発行も、決済の仕組みに激震
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19420.html
2017.06.13 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
2017年に入り、世界の金融市場では価格変動性=ボラティリティーの低下が続いている。株式や債券、為替などの金融市場は一様に変動率が下がっている。ボラティリティーが低いということは、市場参加者の期待や思惑が一方向に偏り、先行きに対する見方のばらつきが小さいことを示唆する。先々の展開を冷静に考えると、米国の政治、北朝鮮問題など、不安材料は少なくない。それでも、かなりの数の投資家が先行きを楽観しているようだ。
このなかで、株式や債券などの伝統的な金融資産(アセットクラス)に加え、新しい通貨の価値も急騰してきた。それが、“仮想通貨”だ。ビットコインを筆頭に、数多くの仮想通貨が取引され、その価値がドルなどに対して上昇しているのである。
年初来から、ビットコインはドルに対して180%近くも上昇した。そのほかにも、イーサリアムやライトコインなどの仮想通貨がドルに対して数倍、数十倍もの急騰を記録している。国内でも、ビットコインの取引を容易にすると期待されてきた新技術を搭載したモナーコインの価格が4月以降の1カ月程度の間で400%程度上昇したことが注目を集めた。
世界の金融市場が膠着するなか、仮想通貨の急騰は説明しづらい。注目されている技術などへの期待があることは確かだ。それでも、ビットコインなどの急騰は行きすぎではないか。以下では、仮想通貨の概要を確認したうえで、今何が注目を集めているか、今後の展開がどうなるかを考察する。
■新たな投機性商品=仮想通貨
仮想通貨は、かなり以前から存在してきた。その存在が大きな注目を集めるようになったのは、09年にビットコインの取引が開始された後だ。ビットコインの取引は、ブロックチェーンと呼ばれる分散型の情報システムの運用が実現したことに支えられている。ブロックチェーンを理解することは、ビットコイン、その他の仮想通貨を理解する第一歩だ。
今日の情報管理は、1カ所に巨大なサーバー(情報の集積場所)を設置する中央集権的な発想に基づいている。この場合、サーバーがダウンした際にバックアップのサーバーを別の箇所に設置する、メンテナンスの人件費などがかさむなど、何かと負担が大きい。
これに対してブロックチェーンは、同一の情報を複数のコンピューター上で、常時同期化させる。これによって、1カ所にサーバーを置き、集中管理する必要はない。その上でブロックチェーンでは暗号技術などを用いることで、最初から最新までの一つひとつの情報(ブロック)が数珠のようにつながる(チェーン)。
ビットコインのブロックチェーンは、コインを獲得し利得を得ようとする善意ある参加者によって運営される。ここで重要なのが、中央銀行や政府といった特定の管理者がいないなかで通貨の信用(改ざんを防ぎ、取引の安全性と非可逆性を確立すること)を保つことだ。ビットコインの発行に当たっては、参加者が解答に10分程度かかるよう設計された数学のクイズを解くことが求められている。一定の時間をかけて問題を最初に解いたものがコインを獲得(発行)し、その記録(ブロック)を、ビットコインの誕生以降、脈々とつながるブロックチェーンに書き足す。これを全参加者が確認し、承認する。
改ざんによりコインを奪おうとする悪意ある者は、最初から最後まで、すべてのブロックを書き換えねばならない。この間、平均して10分ごとにビットコインは発行される。一連の作業をすべての取引参加者がモニターすることで、発行手続きの正当性が客観的に確認されるシステムが構築されている。
■仮想通貨を取り巻く環境の変化
ただ、ビットコインには発行の上限がある(約2100万枚)。発行が上限に近づくにつれ、発行のコストが増えるように設計されている。加えて、コインの発行、その承認にも時間がかかるため、取引の拡大が容易には進みづらい。価値が不安定であるため投機の対象になりやすいことも問題だ。
仮想通貨の開発に取り組む企業などは、こうした課題を解決するテクニックを考案しようとしてきた。その代表例がセグウィット(SegWit :Segregated Witness)だ。この技術は、ブロックの延伸に必要な条件はそのままにしつつ、取引の確認と承認に必要な一部のデータを別の器に移すことで、コインの発行にかかるコスト、時間を短縮することを可能にした。4月以降に、2ちゃんねるを起源とする仮想通貨であるモナーコインが急騰したのは、セグウィットを採用することでモナーコインへの注目が集まったからとみられる。
同時に、国内外の大手企業、金融機関がブロックチェーン技術の応用を目指すベンチャー企業などと組んで、独自の仮想通貨、決済システムを構築しようとする動きも進んでいる。それが、世界的にボラティリティーが低下するなかで、仮想通貨への期待を高め、国内外での投機を生む一因になったとも考えられる。
特に大手の金融機関が、価値が一定の仮想通貨を開発し、実用化すれば、それは既存の金融・経済システムに“革命”というべきマグニチュードをもたらすだろう。なぜなら、金融機関や大手企業が、自身の信用力を裏付けとする通貨を発行することで、政府や中央銀行の管理がなくとも資金の決済が成立する可能性があるからだ。これは、今日では実現していない取引である。
何よりも、ブロックチェーンなどの情報技術を土台とする独自の仮想通貨を使うことで、海外送金などにかかるコストは低下すると考えられる。金融機関がサーバーの管理や、既存の決済システムを利用する際に発生するコスト、時間も削減できるだろう。コスト削減にこそ、フィンテックの本質がある。
■過熱感漂う仮想通貨への投機
課題を解決する技術の実装、大手金融機関による仮想通貨ビジネスへの取り組みがあることは、確かに仮想通貨全体への期待を高める材料ではある。しかし、年初来の仮想通貨の急騰は行きすぎだ。これは投機に煽られている。
年初は中国の個人などが人民元をドルに換える手段としてビットコインを買いあさったため、相場が上昇した。その他の新興国でも自国通貨への不安から仮想通貨への需要は高まっている。
それに加え、日本の個人投資家も、相場の上昇につられて仮想通貨の取引を増やしているとみられる。米国の政治先行き不安、経済が伸び悩みつつあることなどを受けて、ドルの上値は重い。この状況が続きやすいと考えた場合、これまで外国為替の証拠金取引を行っていた人たちにとって、価値が急騰する仮想通貨は有望な投資対象に映るかもしれない。そのほかにも理由はあるだろうが、チャートを見る限り、仮想通貨への投機が発生していることは確かだ。
これは、日本だけでなく、世界的なムーブメントであると考えられる。世界的なボラティリティーの低下が示唆する通り、多くの投資家は先行きに対して過剰なまでに楽観的になっているとみられる。言い換えれば、政治、経済、地政学のリスク要因に対して、金融市場は鈍感になっている。
この状況が長く続くとは考えづらい。冷静に考えると、財政頼みの中国経済の持続性や債務問題、不動産バブルの後始末、トランプ大統領への不安が高まるなかでの米国の経済政策の動向など、世界経済の先行き不透明感は高まりやすくなっている。そのなかで、市場が平静を保っていることは、嵐の前の静けさと表現することもできよう。
ビットコインなどの仮想通貨が急騰し、いまだに高値圏で推移していることは、市場の根拠なき楽観がかなりのレベルに達していることの裏返しではないだろうか。過去数カ月間で急騰した仮想通貨相場に調整圧力がかかった時、金融市場にどのような影響が広がるかは注視していくべきだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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