http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/750.html
Tweet |
崖っぷち東芝が上場廃止を回避するための険しい道のり
http://diamond.jp/articles/-/128972
2017.5.23 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
東芝が上場を維持できるか否かの崖っぷちにある。不正会計問題や米国での原子力企業買収に起因する損失発生から、2017年3月期決算で、「5400億円」もの債務超過に陥ったからだ。独立監査人は東芝の決算内容に関して、買収経緯などでより詳細な調査が必要と、“監査意見なし”の立場をとり続けている。このため、東芝は公式な決算を開示することすらできていない。異常な事態であり、再生のストーリーも描き切れていない。経営の失敗を原因とする大企業の上場廃止は、近年の日本では見当たらない。が、その可能性は高まっている。
監査意見なしとは、監査人がその企業の決算内容が適切と考えるか否か、判断を示すことができないことを示す。言い換えれば、より細かな分析、検証が必要な内容があるということだ。場合によっては、子会社の損失が膨らみ、結果、東芝本体の債務超過額もさらに増える可能性がある。実際、監査法人との意見が一致しない中、四半期を経るごとに公表された損失額は大きくなってきた。
この状況が続く限り、金融機関が支援を強めたり、金融市場の関係者が経営再建の実現性を客観的に評価したりすることは難しい。
高まる上場廃止のリスク
債務超過解消がポイント
株式市場への上場が廃止される可能性はどこまであるのか。
東京証券取引所などを運営する日本取引所グループは、株主数や流通株式数など、複数の上場廃止基準を設けている。これを見ると、東芝の上場廃止リスクがいかに高いかが実感できるだろう。
債務超過に関する基準を見ると、1年以内に債務超過を解消できないと上場廃止となることが明記されている。つまり東芝は2018年3月までに債務超過を解消する必要がある。
また、有価証券報告書等の提出遅延を理由とする廃止の基準もある。有価証券報告書は、法律(金融商品取引法)で作成が定められた決算書類であり、監査意見の記載が必要だ。2016年度本決算を、提出期限である6月末までに東芝が有価証券報告書を提出できるか否かが、上場廃止を左右すると考えられる。監査報告書や四半期レビュー報告書に監査人が不適正意見、あるいは、意見の表明を行わないことを記載した場合、取引所の判断によって上場廃止が決定されることもある。
ただし提出期限の延長を、関東財務局が認めれば、よく、実際、東芝の16年4−12月の四半期決算は2回延長が認められてきた。財務局が期限延長を認めない場合は、8日以内に即上場廃止となる。
つまり問題は、東芝が2016年度本決算について、監査法人との対立を解消し、期限の6月末に提出できるかどうか。それが難しい場合に、財務局が提出期限延長を認めるかだ。現状では、監査法人との対立解消は難しい状況だが、かといって、財務局が、東芝の即上場廃止につながるような期限延長を認めない措置をとるのかどうか、見通しはたちにくい。
ほかにも、特設注意市場銘柄等に関する上場廃止の基準もある。
東京証券取引所は、2015年9月に、有価証券報告書の虚偽記載にあたる不適切会計問題や内部管理体制の不備を理由に東芝を当該銘柄に指定した。東証が内部管理体制に改善が見られないと判断すれば、東芝の上場は廃止される。だが東証も、いまは様子見の状況のようだ。
東芝のような日本を代表する企業の上場廃止の引き金を自らがひくことには、財務局も東証も多少の躊躇があるようだ。実際、半導体事業の売却で、債務超過が解消されるめどがついた時には、空気が変わって、決算の提出遅延や内部管理体制の改善の問題の議論は後回しにされる可能性もある。
その意味でも債務超過の解消が上場廃止回避のポイントとであることは間違いない。
無視できない
上場廃止のマグニチュード
株式市場への上場廃止は、社会の公器としての企業がその負託に応えられなくなった事態だといえる。踏み込んで考えれば、その企業が社会に受け入れられなくなってしまったということだ。
上場廃止が決まった企業は整理銘柄に指定される。原則として1ヵ月の間、整理銘柄として取引され、その後、上場が廃止される。
仮に東芝の上場廃止が決まれば、日本の経済・金融市場には無視できない影響があるだろう。東芝株は国内外の機関投資家などに保有されている。目下、大株主には大きな変動がない。一部には、上場廃止を懸念しつつも最悪の事態は回避できると考える投資家もいるようだ。自分は周りより高値で売り抜けると過信する投資家もいるだろう。東芝は日本を代表する名門企業だ。政府も経営動向を注視している。最終的な政府の支援などを当てにする投資家もいるかもしれない。
だから上場廃止が避けられないとなると、失望や混乱は免れないだろう。“すわ、戦じゃ!”と言わんばかりに東芝株を手放そうとする投資家が増える恐れがある。売りが売りを呼んで、株式市場全体が混乱に陥りかねない。
それは、“東芝ショック”というべき展開を引き起こすかもしれない。株価の下落、極端な悲観論が消費者や企業経営者の心理にマイナスの影響を与え、景気への懸念を高めるかもしれない。
一般的に、株式の上場は資金調達の円滑化、企業の社会的な信用力の向上につながるといわれる。東芝の経営再建を考えた時、上場廃止は社債発行、株式発行などの多様な資金チャネルの喪失につながる。それは今後の資金調達コストを上昇させ、東芝自身にとっても経営再建の足かせとなる恐れもある。
半導体事業売却は両刃の剣
中長期の競争力をいかに高めるか
こう考えると、上場の廃止は是非とも防がねばならない。その方策は、同社が資金を確保して、自己資本を増強し債務超過を解消することだ。その上で内部統制の体制を強化するなど、東証や投資家、取引先など様々なステークホルダーの理解・信用の獲得につなげる取り組みが不可欠である。
自己資本を引き上げるために、半導体メモリー事業の売却が進められようとしている。東芝は当該事業には2兆円を上回る価値があると考えている。複数の企業や買収ファンドが事業の買収に名乗りを上げている。
2017年度中に東芝が買い手と合意すれば、上場廃止は回避可能と考えられる。それがまとまれば、主要行から資金面での協力も取り付けやすくなるだろう。ただ、東芝の経営陣からは売却先の選定が遅れるシナリオを念頭に置いた発言も出ており、先行きは不透明だ。より本質的な問題は、半導体事業の売却が東芝という企業の中長期的な競争力の引き上げに資するか否かだ。事業の切り売りや人員のリストラによって資金を確保できれば、当面の上場は維持できるかもしれない。
問題は、リストラを進めたうえで東芝が新規の事業開拓などを進め、収益を獲得する力をつけられるか否かだ。まさに、永続的事業体=ゴーイングコンサーンとしての東芝の存続が問われている。
すでに東芝は、不適切会計問題が発覚して以降の業績悪化を食い止めるために、東芝メディカルシステムズをキヤノンに売却した。医療関連のビジネスは東芝を支える成長分野だった。
半導体も然りである。世界的に半導体業界は好調だ。中国でのスマートフォン需要の高まり、自動ブレーキなど自動車の安全技術の向上を受けて、半導体産業のの業績はいい。東芝でも、2016年度の業績見通しで、半導体(ストレージ&デバイスソリューション)事業は唯一、増収を確保した。それ以外に売り上げが伸びた事業はない。
成長事業を切り売りすれば、資金は調達できるが、競争力は失われるだろう。その結果、東芝という日本を代表する企業がどうなるかは冷静に考えるべきだ。
再生のストーリーを描け
経営陣の実力が問われる
東芝は、インフラ企業としての再出発を目指すという。ただ、一連の問題発覚によって東芝への社会的な信用は失われたといってよいだろう。これまで明らかになったように、海外買収や半導体製造工場の共同運営などの契約に関する認識も甘い。同社の経営を信頼するのは難しい。見方を変えれば、多くの投資家が懸念しているのは、東芝がどう経営を立て直し、株主への価値還元を進めることができるか、再生のストーリーが描けないでいることだ。ゆえに、目先はともかくとして、東芝が徐々に競争力を失い、どこかの時点で上場廃止に追い込まれるのではとの見方は増えやすい。
東芝が上場廃止を避けるために残された時間は少ない。その中で売却交渉を進めつつ、より明確な再生プランを示すことができるか、経営陣の実力が問われる。そして東芝の上場が維持できるということになれば、再生のラストチャンスを与えられたと言い換えられる。その中で、東芝はステークホルダーから信頼され、認められる企業にならなければならない。
経営陣をはじめ組織全体が、かなりのスピード感と忍耐をもって変革に取り組まなければならない。新しい企業をゼロから創設し、事業を育成する覚悟が求められる。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民121掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。