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首都圏にある限界マンション。マンションがスラム化すると、不利益を被るのはそこに住む住民だけでなく、周辺の治安にも悪影響が及ぶ恐れがある(撮影/堀内慶太郎)
他人事ではないマンション管理問題 建物と住人の「2つの老い」と「無関心」〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170522-00000084-sasahi-life
AERA 2017年5月29日号
日本にマンションが誕生して60年以上。今も年に10万戸ずつ増えている。たが一方で、建物と居住者の「二つの老い」や運営管理への無関心などにより、荒廃するマンションが急増している。AERA 5月29日号では「限界マンション」を大特集。何が起きているのか。防ぐ方法はあるのか。
* * *
近所でも有名な「お化けマンション」で知られていた。
横浜中華街に近く、最寄り駅から徒歩4分にある9階建ての分譲マンション。住環境も整った一等地にあるが、廊下や階段の共用部は「ごみ置き場」と化していた。使わなくなったベッドマットや炊飯器、イス、靴などが無造作に置かれたまま。廊下の電気が消えているフロアもある。エントランスには、住民の自転車が放置されていた。
完成当初からマンションの一室に暮らす女性(80代)は、不安を隠せない。
「ひびが入って今にもコンクリートがボロボロ落ちてきそうなところがいっぱいあるんです」
●管理組合は形骸化
年季が入った外壁にはあちこちにひび割れが走り、ベランダにはさびが目立つ。避難用のはしごも、さびて崩れかかっている。そして、数年前まで廊下の電気はすべて消え「お化けマンション」のように見えたという。
このマンションは高度経済成長期の1973年にできた。元々この土地のオーナーとの「等価交換」によって建てられ、最上階の全室をオーナーが所有し、自主管理という形を取って、自ら理事長になった。管理組合はあったが形骸化し管理規約もなかった。計画的な修繕すら満足にできず、法令で年2回の点検が義務づけられている消防点検も行った記録がないという。
住民の無関心や他人任せも問題だった。さらに、後からわかったことだが、自主管理を担当していて6年ほど前に亡くなった当時の理事長が、管理費を使い込んでいて、残高はゼロ。慌てて集めようとしたが、予想外の出費は高齢化した住人には荷が重く、滞納者が増えた。積み立ては進まず、そのうち生活に支障をきたすレベルの不調がマンションのあちこちで起こり始めたのだ。
しばしば水道が詰まり、水漏れも頻発。配水管の水が逆流し、あふれ出た水がフロア全体に流れ出してエレベーターが止まり、2階まで水浸しになったことも1度や2度ではない。
いま最大の心配は、飲み水だ。マンションの地下にはコンクリート製の受水槽がある。最低でも1年に1度は法定点検を行わないといけないが、おそらく数年単位で一度も点検はされていない。衛生上の問題がかなり懸念されている。先の女性は言う。
「そんな水を飲むの、怖いです」
荒廃化するマンションが増えている。過疎地の限界集落ならぬ「限界マンション」が静かに、でも確実に広がっているのだ。日本にマンションが登場したのは50年代前半。一戸建てが無理な世帯の持ち家志向の高まりを受け、60年代に本格的な分譲が始まった。現在、分譲マンションの数は約613万戸。一般的に、コンクリートの寿命は60年程度だ。
●お金が全然足りない
『限界マンション』などの著書がある富士通総研経済研究所主席研究員の米山秀隆さんは、建物と住民の「二つの老い」が進んでいると指摘する。
「建物の老朽化と同時に区分所有者の高齢化も進んでいきます。その結果、空室化や賃貸化が進み、マンションの管理組合の機能が低下して維持管理や建て替え対応が難しくなっています。こうして管理不全になったマンションは、限界マンションになる危険が生じてきます」
国土交通省によれば、築40年以上のマンションは全国に51万戸(2015年)。それが10年後の25年には3倍の151万戸、20年後の35年には6倍の296万戸に達する。限界マンションは他人事ではないのだ。
東京・渋谷。最寄り駅から徒歩5分という好立地に立つ4階建てのマンション。“花の東京”の中心部に立つマンションも、荒廃化が進んでいる。
昨年このマンションの管理組合理事長になった男性(50)は嘆く。
「いろんなところを直していかないといけない。だけど、お金が全然足りない」
竣工したのは80年。管理組合は一応あったが、すべて「管理者」と呼ばれた人の裁量で行われた。修繕積立金は一戸当たり1千円。当然、大規模修繕をするだけのお金は貯まらなかった。
外壁にはひびが入り汚れもひどい。外階段はさびだらけで、ところどころに小さな穴も開いている。一昨年には、給水管の破損による漏水で、3階から1階まで水浸しになった。敷地内の一角は粗大ごみ置き場と化していた。自転車、布団、傘……。引っ越していった住民が、そのまま捨てていった品々だ。撤去費用がかかるので、放置したままになっている。粗大ごみの山はトタン板で囲っているが、先の理事長は自嘲気味に話す。
「中に猫の死骸があってもおかしくないと思います」
●建てては壊す発想
都内にある築40年のマンションは、複雑な権利関係から、さらに厄介な問題を抱えていた。12階建てで、3階から上は住居部分だが、1階と2階は元の地主が所有し居酒屋などのテナントが入っている。住居部分には管理組合もあり、テナント部分は地主が法人を作って管理していた。が、バブルがはじけて法人が破綻、管理費や修繕積立金を払わなくなった。
今、マンションの外壁にはひびが入り給水管も取り換えないといけない。全体を補修するには総額4億円近く必要だが、管理組合には1億円ほどしか修繕積立金はない。何とかしたいと思い、数年前に弁護士まで入れて話し合いをしたが決裂。以降、元地主は交渉のテーブルに乗ってこないという。このマンション関係者は頭を抱える。
「もう、打つ手がない」
限界マンションについて、先の米山さんは日本におけるマンション事情の特殊性があると指摘する。
「日本のマンションの寿命が短いのは、初期のマンションは、粗悪な耐久性に劣るコンクリートが使われたのが一つ。あと一つは、日本の建設業界全体は長い間、マンションに限らず、耐久性に十分配慮して長く使うという発想には立たず、建てては壊すというスクラップアンドビルドの発想に立ち建築物を造ってきたのが原因。そのほうが、仕事がなくならず、建設業界にとって好都合だったからです」
●住民合意の難しさ
マンションの再生には、解体して建て替えるという選択があるが、実現には様々なハードルがある。16年4月時点で、建て替えを終えた分譲マンションは、全国でたった227。最大の理由が住民合意の難しさだ。
マンションは、住宅の中でも区分所有者による共有という特殊な所有形態をとる。建て替えには、全住民(区分所有者)の5分の4以上の賛成が必要だが、価値観や経済状況、世代の異なる住民の意見をまとめるのは容易ではない。
沖縄県浦添市の住宅地にあるマンションは、その一例だ。
09年9月早朝、鉄筋コンクリート3階建てのマンションの2階外廊下が突然、長さ15メートルにわたり崩れ落ちた。通路下に止まっていた軽自動車はつぶされ、住んでいた9世帯は退去した。マンションは当時築35年。崩落の一因は施工不良にあった。
8年近く経っても撤去できないのは、「住民合意の壁」があるからだ。市の都市建設部の担当者は、説明する。
「放置しておくと危険なので早く撤去・解体したいが、所有者の合意形成ができない」
限界マンションが放置されればどうなるのか。先の米山さんは警鐘を鳴らす。
「建て替えができたり再開発が行われたりすれば、限界マンションが放置されることはありません。しかし、解体費用を捻出できない時は放置される可能性があり、そうなると治安が悪化し、ひいては周辺の地価を下げることになりかねません」
●所有者間の活発な意見
マンション先進国の欧米の区分所有法では、建物を徹底的に維持するための仕組みがつくられている。
アメリカのCPM(不動産管理士資格)保有者で、東京都マンション管理士会の副理事長でもある若林雪雄さんは言う。
「アメリカでは、所有者の意識が高く自身の権利義務関係にも厳しい。所有者間の活発な意見交換が可能で、一般組合員は株主、理事会は会社組織の取締役会のような機能を果たします」
アメリカではほとんどのマンションは、管理組合が直接、現場駐在マネジャーを雇用し、マンション管理会社は部分的なサポートを行うに過ぎない。現場駐在マネジャーが管理組合の立場でサポートし、理事会の意思判断により清掃、点検や補修などの業者選定を行うなど、利益相反関係を防止する仕組みが成り立っているという。
「管理組合は自立しガバナンスを確立して、行政や第三者の専門家の支援などを得て、理事会のリーダーシップを維持しながら、経済合理性にのっとりマネジメントを行っています。そのため区分所有者の利益を図ることが優先され、スラム化もしにくいし、予防的な手も打ちやすいのではないか」(若林さん)
(編集部・野村昌二)
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