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搾取される貧困「お坊さん」が激増…お寺「不要化」で都市に出稼ぎで日雇い労働者化
http://biz-journal.jp/2017/05/post_18963.html
2017.05.06 文=鉾木雄哉/清談社 Business Journal
「坊主丸儲け」という言葉があるように、お寺には経済的に安定したイメージを持つ人が多いだろう。しかし、『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』(日経BP社/鵜飼秀徳)によると、全国の約7万7000寺のうち、地方を中心に約2万寺が住職のいない「無住寺」になっているという。
僧侶派遣サービスを行っているウェブサイト「お坊さんの輪」を運営している一般社団法人おもてなしの会の北田侑也氏は、「檀家制度が機能しなくなってしまった」と、斜陽化するお寺業界の現状を語る。
■遺骨をゆうパックで送ってくる遺族も
「檀家」とは、お寺に葬祭供養や墓の管理を行ってもらう代わりに、特定のお寺に所属する家のことだ。その檀家がお寺を経済的に支援するのが檀家制度である。
北田氏は、お寺を維持するボーダーラインを「檀家数300軒前後」と語るが、浄土宗が2014年6月に仏教界の機関紙「宗報」(本願寺出版社)で報告したアンケート調査によれば、地方の過疎地に限定すると、檀家数300軒以下のお寺が約8割を占めるという。地方のお寺のほとんどが、風前の灯火なのだ。
「『仏教離れ』といわれるように、現在の日本人は信仰心が薄れているため、新たに檀家になろうと思う人は少ないでしょう。それどころか、関東圏に移り住んだ人たちのなかには、墓参りの出費や維持管理費などの経済的な問題から、地方にある先祖代々受け継がれてきた墓を『改葬(墓から遺骨を取り出して別の場所に移すこと)』して離檀するケースが増えているのです」(北田氏)
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、改葬数は2000年の6万6643件に対して15年は9万1567件と増加傾向にある。また、遺骨のその後は「移住地の近くに新たなお墓を建て、そこに納める」「共同納骨堂に納める」の大きく2パターンに分かれるが、経済的な理由から後者を選ぶ人が多いという。
「私どもが運営する『お坊さんの輪』では、税込み1万5400円(13年間の利用費)で納骨できる納骨堂(13年後に合祀)を運営していますが、遺骨をゆうパックで直送してくる人が大勢います」(同)
■「貧困僧侶」が続出、搾取され日雇い労働者化…
先祖代々のお墓を改葬して離檀する……。このような現状について、北田氏は「もはや、お寺が日本人に必要とされない時代になった」と嘆く。
斜陽化しているお寺業界ではあるが、当事者である僧侶たちは簡単に廃業できない事情がある。
「僧侶は雇用保険に加入しているわけではなく、一般企業と違って退職金もありません。やすやすと辞めるわけにはいかないのです。中高年の僧侶は異業種への転職も難しいので、いくら経済的に厳しくても僧侶を続けていくしかないでしょうね」(同)
そのため、お寺の経営が難しくなり、食いっぱぐれてしまった地方の中高年僧侶たちは、依頼が多い首都圏に出稼ぎに来ていて、若い僧侶はなり手が減少しているという。
「私どもの『お坊さんの輪』のような僧侶派遣サービスに登録する僧侶が増えています。『お坊さんの輪』では、お布施の3割の手数料をいただいていますが、なかには手数料を5割以上取る派遣業者もあるそうです」(同)
また、葬儀社が窓口となって僧侶が依頼を受けているケースもあるという。
「葬儀社にお勤めを紹介していただいた場合、『バックマージンを支払う』という業界の暗黙のルールがあります。そうなると孫請けのようなかたちになり、僧侶の手元に残るお布施はさらに減ります。それでも、依頼が少なくなった現状では、喜んで依頼を受けてくれる僧侶がたくさんいます」(同)
もはや、僧侶たちはどれだけ搾取されても「依頼があるだけまし」という状況で、建設業界における日雇い労働者の心理状態と変わりがないようにも思える。
都心への一極集中が止まらず、地方の高齢化が進んでいる現状をみると、このような傾向はますます強まると予想される。「檀家制度の価値が失われた現状では、20年後にお寺の数も今の半分以下になっていると思います」と北田氏は語る。
斜陽化したお寺業界で奮闘する僧侶たちには、どんな未来が待っているのだろうか。
(文=鉾木雄哉/清談社)
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