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多額ローン払い手に入れたマイホーム、厄介な負の財産化…売却できず毎年多額の費用負担
http://biz-journal.jp/2017/04/post_18856.html
2017.04.26 文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役 Business Journal
私の知り合いで資産税に詳しい税理士によれば、最近の相続の現場では、「家はいらないから現金だけが欲しい」というゲンキンな相続人が多いという。
昔は相続財産のなかでは親の家がもっとも価値のある「財産」とされた。親の家をめぐって誰が相続するかで「争続」になるケースが多かったのだ。ところが、今では親の家は取扱いが面倒なだけで「価値がない」と考える相続人が急速に増えているという。
2016年1月1日現在、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の人口は約6602万人、総人口の約51%、つまり日本人の約半数が三大都市圏に住むようになっている。一見すると、都会に住んでいる人にとって、土地は価値のある大切な資産のように映るが、実態はやや異なるようだ。戦中世代から団塊世代の多くが、戦後、地方から三大都市圏を中心とする都会に押し寄せてきた。彼らが居を構えたのが、都心から放射状に伸びた鉄道沿線の住宅地だった。そこで家族を形成し、お父さんが住宅ローンの負担に耐えながらもやっと手にしたのが現在のマイホームである。
そんなお父さんたちにもそろそろ「相続」が生じ始めている。そのお父さんの大切な資産である家の人気がないのだ。相続人である、都市郊外で育った子供たちは、その多くが都市部の学校に進学し、そのまま就職をしている。そんな彼らが住むのは会社への通勤に便利な都市部の住宅だ。
彼らの両親が勤め始めた頃には、都心部で住宅を求めても、賃貸アパートがせいぜい。大きな会社であれば独身寮に住み、結婚すれば社宅、少しおカネが溜まって子供ができる頃には郊外部に住宅を求めるという筋書きが常識だった。都心部は地価も高く、とてもサラリーマンが住むことができる居住環境にはなかったからだ。
また、子供たちは親が思うほどに実家には興味がない。地域内の公園で遊んでいたのはせいぜい小学校低学年まで。その後は塾通いに明け暮れ、中学校からは都内の私立中高一貫校へ。そのまま大学に進学した彼らにとって、実家は単に「寝泊り」した記憶が残るだけ。「小鮒釣りしふるさと」など存在しないのだ。
■日本で一番若々しい街になった中央区
世代間で、なぜこれだけの環境の変化が起こったのだろうか。
理由は簡単だ。1990年代後半以降、都市部での住宅供給が圧倒的に増え、今の若い人たちにとっては、何も親の買った都市郊外の住宅から通勤しなくとも都市部に手軽に借りられる住宅が増えたからだ。また、都市部には数多くの分譲住宅が供給されているので、通勤に便利で商業施設やエンターテイメント施設の多い都市部の住宅を選択することができるようになったのだ。
都心居住を物語るものとして、東京都中央区の人口の推移が参考になる。
中央区は昭和40年代には人口16万人が住んでいたが、地価の高騰とともに人口は郊外部へと流出。平成7年には人口が7万人を切るのではないかという状態にまで落ち込んだ。人口の減少にともなって、区内の小中学校は統廃合が進み、高齢者のみが区内に取り残されるという、現在の都市郊外部のような現象が起こった。
ところが、最近の中央区は人口が驚くほどに回復している。区内では特に月島や晴海などの工場や倉庫の跡地にタワーマンションが林立し、住民が急激に増えてきたからだ。17年1月現在で人口は14万9000人にまで回復している。
私の友人は中央区内で父親の営んでいた新聞店を継いでいるが、人口が減少し続けたころには新聞店を続けることが良いのか悩んだ時期があるという。ところが都心居住が進み、今では販売部数も随分回復したとのことだ。タワーマンション一棟が建てば、数百世帯の需要が生まれるのだ。いくら新聞購読する人の数が減少したとはいえ、そのインパクトは絶大なものがある。
また中央区の特徴はその年齢構成にある。区全体の人口に対して15歳から64歳までのいわゆる働き手といわれる生産年齢人口が占める割合は71.3%(中央区HPより)、全国平均である60.6%(15年内閣府発表)をはるかに超えるばかりでなく、この数値は全国の市区町村中のトップとなっている。今や中央区は日本で一番若々しい街になっているといってもよいのかもしれない。
■郊外の実家が「厄介な存在」に
いっぽうで、これまで都心に通うサラリーマンの基地であった都市郊外部の状況はどうだろうか。横浜市の南部に位置する栄区は、以前は東京に通うサラリーマンの家庭が多く街は活気に満ちていたが、ここ15年余りの間に人口は減少に転じ、さらに生産年齢人口の割合は57.4%と全国平均を下回るまでに高齢化が進行している。
実は都心部と都市郊外の住宅マーケットとしての環境は、この15年くらいの間に激変してしまったのだ。人口の減少と高齢化は、不動産価格の下落につながる。需要の少なくなる不動産に高い価格付けはできなくなるからだ。一時は区内に1億円を超える戸建て住宅が多数存在した横浜市栄区でも最近、住宅価格は下落を続け、駅からバス便の中古住宅になると1000万円台の物件も珍しくなくなっている。
都心部に住む子供世帯にとっては、今や郊外にある親の家は、以前都会に出て暮らし始めた地方出身の人にとって地方の実家がだんだん遠い存在となり、親の亡くなったあとではまったく「必要のない家」となっていったのと同様に、郊外の家も親から引き継がれても扱いに困ってしまう厄介な存在に映り始めているのだ。
以前であれば、家は一家にとっての財産。自分が使わなくとも不動産は使い勝手の良いものだった。人に貸せば家賃収入が入ってくる、家屋を取り壊して更地にすれば、駐車場やアパートに建て替えることで副収入源にもなる。いざとなれば売却すれば現金にも様変わりして、ひと財産になったからだ。
ところが、今は人口が減少して高齢者ばかりの郊外住宅地では、家を貸す先もなければ、売却しても思ったような価格では売れない、それどころか全く買手が付かないエリアまで出始めている。
こんな家を相続しても「困ってしまう」のが実情だ。家はそのまま所有していても多くのお金がかかるからだ。都市郊外部の住宅地であれば、ちょっとした戸建て住宅であれば、固定資産税は都市計画税などを含めれば年間で15万円ほどかかる。家の管理や庭木の剪定などの費用もばかにならない。ましてや古くなった家を解体すれば解体費は一軒あたり、大きさにもよるが150万円から200万円もかかる。解体後はちゃんと活用しなければ固定資産税は翌年から住宅用の特例が外され、敷地面積200平方メートル以下であれば、税額は6倍に跳ね上がってしまうことになる。
お父さんが住宅ローンの返済に耐えてやっと手に入れたマイホームが、皮肉なことに子供たちにとっては、ただその土地を維持管理するだけで毎年100万円もの負担を強いられる「負動産」になる可能性だってあるのだ。
そんな家は「お願いだからいらないです」――。
これが最近の相続の現場でのセリフということになる。そんなものに多額のお金を注ぎ込んできた天国のお父さんは、相続現場でのこのセリフを聞いて何を思うのだろうか。
家に対する価値観が、どうやら大きく変わってきたようだ。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)
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