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人口減少の裏で外国人労働者が急増中…「なし崩し」がはらむリスク 建前論はもう限界だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51521
2017.04.19. 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
「留学生資格」が急増中
少子化による人口減少が鮮明になる中で、「なし崩し」的に増える外国人の存在感が急速に増している。
総務省が4月14日に発表した2016年10月時点の人口推計によると、総人口は1億2693万人と6年連続で減少した。うち日本人は1億2502万人で、やはり6年連続の減少だが、毎年、減少幅が拡大している。
新しく生まれた人の数と、亡くなった人の数の差を「自然増減」というが、こちらは10年連続の減少。昨年10月末までの1年間に29万6000人減った。もちろん、この10年で最大の減り方だった。少子化対策が急務と言われて久しいが、少子化の定着が人口減少に拍車をかけている。
一方で高齢化も止まらない。65歳以上の人口はこの1年で72万人も増加。全人口に占める割合は27.3%に達した。高齢者の増加は年金や医療、介護といった社会保障費用の増大に結びついており、若年世代の負担を大きく増している。
そうした少子高齢化によって、大きな問題になっているのが、「働き手不足」だ。
アベノミクスの効果もあって、2013年以降、雇用者数は増え続けている。安倍晋三首相は「女性活躍の促進」や「高齢者の活用」を掲げているが、人手不足は深刻さを増している。
今回の総務省の推計では、都道府県別にみると、40道府県では人口が減少しているものの、東京都や埼玉など首都圏の4都県と、愛知、福岡、沖縄の3県で人口が増加した。
沖縄を例外とみれば、収益好調な企業がある大都市圏では人口が増えているものの、地方では人口が減る事態に直面している。秋田、青森、高知では減少率が1%を超えた。人口減少が目立つ地方では、人手不足は大都市圏よりも深刻なところもある。
そんな中で、目立つのが「外国人」の増加だ。
3ヵ月以上日本に滞在する外国人の入国者は240万人で、出国者の226万人を上回り、13万6000人が純増となった。外国人の純増は2013年以降4年連続で、13年3.7万人→14年6万人→15年9.5万人そして16年13.6万人と、年を追って増加数が膨らんでいる。13.6万人の外国人の純増で、人口の自然減29.6万人の46%を補っていることになる。
この結果、昨年10月段階の日本国内の推計外国人数は191万2520人になっている。
このところの特長は、留学生資格で来日するベトナム人やネパール人が急増していること。日本語学校などで学ぶ目的とされているが、多くが日本で働くことが本当の目的ではないかとみられている。
外国人留学生は週に28時間までのアルバイトが認められているため、この枠を使って働いている。週28時間を超えて不法に働いているケースも多いとされる。
日本は外国人の「高度人材」については積極的に受け入れる方針を示しているものの、いわゆる「単純労働」については受け入れないというのが「建て前」。ところが仕事の現場では、日本人の減少によって単純労働ほど人手不足が深刻化している。
単純労働を受け入れたい企業の「本音」を賄うために、これまでも「日系人枠」での受け入れや、「技能実習制度」による受け入れを行ってきたが、ここへきて「留学生」の枠による受け入れが急拡大しているのだ。
「なし崩し」が一番怖い
安倍首相は繰り返し「いわゆる移民政策は取らない」と発言、単純労働者など外国人の受け入れには慎重姿勢を崩していない。単純労働者を受け入れると、日本人の仕事を奪うとして反対する業界団体なども少なくない。労働組合の連合も外国人移民の受け入れには基本的に反対姿勢だ。
だが、そうした「建て前」を取り続けていると、企業ばかりか日本の地域社会すら維持できなくなる可能性が高い。実際、地方では人口減少によってコミュニティを維持することが難しくなる「消滅自治体」の出現が懸念されている。
10月時点の調査では、日本国籍の取得による日本人の増加が8633人に達している。労働ビザを取得するのは難しいが、日本人と結婚することなどで日本人になってしまえば、労働制限は一切ない。
外国人労働者は受け入れないという「建て前」を維持しているものの、さまざまな「裏口」からなし崩し的に外国人が入ってきているのが実態だ。
こうした状況になっても日本政府は明確な外国人受け入れ政策をまとめようとしない。
「外国人受け入れを議論しようとすると右派の人たちから批判の声が挙がる」と与党政治家は言う。地元選挙区でも人手不足は深刻になっているとは言うが、外国人受け入れ議論を始めるのには躊躇しているケースが多い。
だが、こうした「なし崩し的」な外国人受け入れほど危険なものはない。
不景気になった時に、すべての外国人を追い返すことができると考えるのは楽天的だ。バブル期に受け入れた日系ブラジル人をどうコミュニティに受け入れていくか、多くの地方自治体で難問に直面している。
とくに、日本で生まれた外国人の子どもに対する日本語教育など、大きな課題がある。こうした子どもたちが十分な日本語を学ばないまま社会人年齢になれば、日本社会にも、母国であるはずの両親の国にも適応できなくなってしまう。
かつてドイツは1960年代以降、工場で働く労働力として外国人を大量に受け入れた。その後、都市に集住した彼らが社会不安の材料になった。どうドイツ社会として外国人を受け入れていくのか明確なビジョンを持たなかった結果、大きな代償を払わされることになったのだ。
このまま外国人受け入れについて「無策」を続ければ、そんなドイツの轍を踏むことになる。
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