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三越伊勢丹「恐怖の追い出し部屋」でいま起きていること 前社長派は戦々恐々…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51449
2017.04.19 週刊現代 :現代ビジネス
狭い部屋に50人以上の社員が押し込められる。デスクもないし、パソコンは共用。中には部長クラスの社員もいて、屈辱以外の何物でもないだろう。「百貨店の雄」の迷走はまだまだ続く。
座る椅子もない
「まさかウチの会社に『追い出し部屋』ができるなんて、夢にも思っていませんでした。まったく別の業界の話だとばかり思っていた。
持ち株会社の人事部付で『サポートチーム』という部署ができ、4月1日付の人事で、50人以上の社員が各々バラバラの部署からこのチームへ異動させられたんです。
部長クラスが数人、課長・係長クラスが20人以上、定年間近の人から30代の人まで様々なようです。
降格させられる社員が多く、当然給与も減ります。部長クラスは管理職を外され、年収が100万円超下がるとも言われています」(三越伊勢丹の中堅社員)
役員たちのクーデターにより、前社長の大西洋氏が突然クビに追い込まれるという「お家騒動」に揺れた三越伊勢丹。
4月1日から杉江俊彦社長率いる新体制が本格的にスタートしたが、始まったのは人員の「大粛清」だった。名門百貨店が、不要な社員の「在庫一掃セール」を始めたのだ。
本誌は、人事部長が同チームに異動する社員に送ったメールを独自に入手した。そこには、社員に対する会社側の非情で無慈悲な仕打ちが示されている。
サポートチームの50人超が押し込まれる「拠点」は、三越日本橋本店の近くにある賃貸ビルの4階の部屋。三越伊勢丹が間借りしているフロアのこの一室は、椅子が20〜30脚程度しか並べられないという。
この部屋についてはさらに、
〈取り急ぎ、PCは4台配備しました。1台は事務担当者専用とし、残り3台は共有とします〉
と50人超に対して、たったの3台しかPCが与えられていないことが告げられ、さらに、
〈(この場所は)あくまで私物置場機能と、みなさんとの連絡中継点機能程度です〉
〈私物についてですが、上記記載の通り、『キャビネ1棚分』のスペースは確保できますが、まずは4/3(編集部註・最初の出社日)当日に現地をご覧いただいた上での持込みをお願いします〉
とされている。
サポートチームのメンバーには、個人のための席すら用意されていない。服装は、〈店頭への応援に準じた服装〉とある。なぜか。
「サポートチームに課された仕事は、旗艦店3店舗(伊勢丹新宿本店、三越銀座店、三越日本橋本店)での『販売応援』なんです。お客様の整列や、棚の整理など誰でもできる業務。学生バイトにやらせるような仕事です」(前出・中堅社員)
メールでは、今後の会社人生について考えるよう促す「面談」にも言及されている。
〈個別面談 4/初旬から早速、お一人ずつとの個別面談を予定しています。事前に頂いたご事情なども確認しつつ、今後の仕事などについて個別説明およびご相談を受けたいと思います〉
「なんで俺なんだよ」
「これまでは、降格などの可能性がある場合、事前に『警告』が発され、業務が改善するかどうかの経過観察が行われたうえで、どうしようもなければ降格させられていました。それがいきなりこんなことになって……。
サポートチームに追いやられた私の同僚は、4月3日、日本橋のオフィスへ出社した後、午前中にごく簡単なオリエンテーションを受け、さっそく三越日本橋本店の売り場の『お手伝い』をさせられたようです。
それまでお得意様の営業をやっていた奴が、新入社員がやるような棚の整理なんかをやらされる。『なんで俺なんだよ。もっとほかに来るべき奴がいるだろ』と嘆いていました」(前出・中堅社員)
同社を取材すると、コーポレートコミュニケーションの担当者は、
「サポートチームは、各部署への適正な要員配置と生産性向上のため導入したもの。後方部門の社員が、繁忙期に店頭営業の応援に入る機会が増えており、これを抑制したり、外部委託を止めて営業周辺業務を専任化・内製化したりするためです。従業員の雇用確保を大原則としています」
と「追い出し部屋」を否定した。
突然降格を告げられ、閑職に回される――この状況に、社員であれば誰もが不安を抱くだろうが、中でもとくに戦々恐々としているのが、大西前社長と親しくしていた社員たちだという。
3月の中旬に発表された役員以上の幹部人事では、大西氏と近かった幹部が露骨に会社の中枢から遠ざけられ、大粛清の様相を呈していた。伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店の店長が交代させられるなど、オセロの黒と白が裏返るように、大西色が排除されていった。
「幹部の粛清人事は本当に露骨でえげつない。こうした人事の後で、『追い出し部屋』の件が持ち上がったので、社内では『大西派』の社員がそこに行かされているのではないか、という見方も出ています。
三越伊勢丹の部長職は、一般的な会社と同様、役員のすぐ下に位置する役職で、同期入社のうち1割ほどしかなれません。そんな出世コースを歩んでいた社員が、いきなり管理職の身分を奪われ、販売応援をする部署に飛ばされるんですから、『どんな役職の人間も容赦はしない』というメッセージにも受け取れます。
せっかく出世しても、ついていた上司を間違えただけで左遷かと思うと、やるせないですよ」(同社の幹部社員)
コストカットが加速することは、クーデターの時点で不可避だったと言える。そもそも大西氏はなかなか人員削減をできないタイプだった。大西氏に複数回インタビュー経験がある、ファッションジャーナリストの南充浩氏が言う。
「大西さんは、三越と伊勢丹の合併時にバックオフィスの人間が増えすぎてしまったことはよく認識しており、減らさなければならないと考えていました。しかし温厚なタイプの大西さんは結局、人員削減には踏み切れずにいた。
むしろ、旅行会社を買うなど新規事業に力を入れることで、百貨店の売り上げをカバーしようとする意識が強かったのです」
社内は大混乱
その大西氏を追い落とした杉江社長は、3月に行った就任会見の際、大西社長との違いをこう強調していた。
「大西社長は、第一に成長投資を進めて、その上で構造改革を進めようとしてきました。私は構造改革を優先し、その成果を原資にして成長分野に投資するつもりです」
つまり、構造改革=人員削減・コストカットこそが、新体制の最重要課題。人を減らさなければ、新体制に変わった意味がない。その意味で、杉江社長は、公約通りに経営を進めている。
だが、当然のことながら、社内では急激なリストラ策に対して不満の声が漏れている。
「伊勢丹の新宿本店の近くには、『事務館』と言われる賃貸のオフィスが点在していますが、コストカットのためにこのオフィスの一部を返すことになった。だから、どの部署も人数がキャパシティを超えていて、会議室なんてギュウギュウのすし詰め状態です。
しかも、社長の交代騒ぎのせいで、人事異動が混乱し、仕事を誰がやるか決まっていない。『この仕事を誰がやるのか』という本来なら不要な会議を、延々と2時間もやっている光景が会社の各所で見られる。社長交代は混乱を増しただけとの声も上がっています」(前出・中堅社員)
4月1日、杉江社長は、各部署に設置されたモニターを通じて、恒例となっている新年度の社長あいさつを行い、「お客様のニーズにこたえるべく、社内の風通しよく、頑張りましょう」と述べた。
だが、当然ながら、「社員の士気はまったくあがらなかった」(前出・中堅社員)という。
「週刊現代」2017年4月22日号より
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