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東芝メモリの売却先、知られざる最良の選択肢 TSMC、グーグル、アマゾンが望ましいこれだけの理由
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9320
2017年4月13日 湯之上 隆 (微細加工研究所所長) WEDGE Infinity
東芝は2016年末に米原子力事業が巨額損失を出すことが発覚し、2017年3月期の決算で製造業史上最大の1兆100億円の赤字となり、6200億円の債務超過に陥った。この危機的状況を回避するために、NAND事業を切り出して東芝メモリを設立し、その新株を1.5〜2兆円で売却しようとしている。
その第1次入札が3月29日に行われた。複数の新聞や雑誌の記事を総合すると、10社以上の企業が入札した模様である。また、経済産業省が声をかけ、日本政策投資銀行や産業革新機構を中心として、東芝のNANDを必要としている企業を集め、日の丸連合を形成する動きがある(表1)。
本連載では、「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」について、10回に分けてその理由及び周辺事情を詳述する。
その際の分析の視点は、「東芝本社にとって良いかどうか」ではなく、「東芝メモリの幹部にとって良いかどうか」でもなく、「東芝メモリの技術者にとってベストな買収先はどこか?」ということである。
というのは、このような悲惨な事態を招いた東芝本体の役員には怒りを覚えるし、東芝が世界で初めてNANDを発明し、世界で初めて3次元NANDを発表したにもかかわらず、サムスン電子と比べると技術開発や量産が周回遅れになっているのは、東芝メモリの幹部に責任があると考えているからである。筆者は、東芝メモリの技術者の味方として、その買収先を考えたいのである。
筆者としては、東芝メモリの技術者のポテンシャルをうまく引き出してくれる経営者、東芝メモリのNANDビジネスを成長させてくれる経営者が存在する企業に買ってもらいたいと考えている。
筆者の主張と今後の予定
筆者の主張を簡単に述べると次のようになる。
WD、SK Hynix、マイクロンなどの競合は独占禁止法に抵触するため買収が困難である。筆者が買って欲しいと思っているTSMC、ホンハイ、紫光集団は、日本政府が持ち出してきた外為法違反で却下される可能性が高い。その外為法は、中国の3次元NAND事情を考えると無意味であるから、撤回して欲しい。メモリビジネスが何たるかを理解していない政策銀と革新機構は、この買収に手を出すべきではない。クラウドサーバーのSSD用として3次元NANDを確保したいグーグルとアマゾンが買うのは大変良いと思われる。
次回以降では、これらの結論を主張する根拠について、その背景事情を以下の順序で詳述する。
第2回 爆発する3次元NAND市場、東芝メモリが買われるワケ
本格的なビッグデータ時代が到来し、オールフラッシュサーバーが急拡大している。この基幹部品となるSSDには、3次元NANDが使われる。なぜ、2次元ではなく3次元なのか、2020年までにどのくらいの数の3次元NANDが必要とされ、どのくらいの工場がつくられつつあるかを説明する。
第3回 3次元NANDのどこが難しいのか
1987年に東芝がNANDを発明し、2007年に2次元の限界を指摘した東芝が3次元NANDを学会発表した。しかし、2016年3月に逸早く量産を開始したのはサムスン電子の中国西安工場である。東芝は周回遅れとなってしまったが、それは途轍もなく難しい3次元NANDの技術に原因があったことを説明する。
第4回 中国紫光集団傘下のXMCが突如、3次元NANDに参入を表明
2016年3月、中国紫光集団傘下のXMCが突如、3次元NANDへの参入を表明した。2次元NANDもつくったことがないXMCには無理と思っていたが、XMCと共同開発している米スパンションがサムスン電子とクロスライセンスを結んでいることなどから、XMCが3次元NANDを立ち上げるのは時間の問題であることを論じる。また、3次元NANDがなかなか立ち上がらなかった東芝は、サムスン電子の技術を盗んだSK Hynixの技術を盗んだことを明らかにする。
第5回 中国はなぜ東芝メモリを買いたいのか
世界の工場となった中国が、世界の半導体の半分以上を吸収しているが、中国の自給率は12%しかない。そこで、習近平国家主席は、半導体強化のために18兆円にのぼる中国IC基金を設立した。紫光集団は、このIC基金を盾に、世界中の半導体企業を爆買いしようとしており、また、中国国内にも巨大半導体工場を多数建設する計画を立てている。その一つがXMCであり、そこでつくる3次元NANDの開発加速と量産の垂直立上のために東芝メモリが欲しいのである。
第6回 外為法は無意味な愚作
日本政府は、中国や台湾(特に中国)に東芝メモリの技術が流出することを懸念して、外為法違反で阻止する意向を表明した。しかし、これは無意味な愚策である。というのは、第4回で詳述するように、既に中国には3次元NAND技術があるからである。むしろうなるほどカネを持っている、紫光集団に買って貰えば、東芝メモリの技術は活かされる。カネはあるけど技術がちょっと足りない紫光集団と、サムスン電子より遅れているとは言っても技術はあるがカネがない東芝メモリとは、良い補完関係になるだろう。
第7回 競合他社は候補先として不適
東芝とNANDを共同開発、製造しているWD、SK Hynix、マイクロンなどが買収候補になっているが、独禁法に抵触する可能性があるため、その審査が長引く。また、これらの企業には2兆円の資金が出せるかどうか疑問である。また、同じNANDと言っても企業ごとにつくり方は違う。したがって、競合他社が買収すると、無用な混乱を招く。日立とNECが合併したエルピーダ、日立と三菱とNECが統合されたルネサスが凋落したのは、そのせいである。
第8回 そもそも買収資金2兆円は妥当なのか
ここ数年の半導体企業のM&Aと比較してみると、東芝メモリの買収価格が2兆円というのは安すぎる。なぜ安値になっているかというと、まず、すぐにキャッシュが欲しい東芝が足元を見られているからだ。また、ここ6年ほどの東芝のNANDの売上高がほとんど成長していないことも安値の原因となっている。しかし、オールフラッシュサーバーの急速な普及を考えると、8兆円くらいで売却してもいいと考えられる。
第9回 引っ込んでいてほしい日本政策投資銀行と産業革新機構
政策銀と革新機構は、「新株の1/3を握れば重要事件の決定に拒否権を発動できる」から応札すると言っている。しかし、メモリビジネスの本質は、巨額な設備投資を、いつ、どこで行うか、という果断な決断をすることである。つまり、メモリビジネスとは、一種のバクチなのだ。ところが、「拒否権を発動するため」だけに、ボードメンバーに革新機構や政策銀から送り込まれた厚顔無恥な輩は、目の前に到来しているチャンスを「拒否権を発動して」全てを台無しにしてしまうだろう。彼らには引っ込んでいてほしい。
第10回 買収して欲しい企業はどこか?
東芝メモリの技術者のポテンシャルを存分に発揮させることができ、3次元NANDのビジネスが花開くように経営してくれるようなCEOがいる企業に買ってほしい。突然名前が挙がったブロードコムについては、現時点では判断できない。アップルに買われるとiPhone用の一部品をつくるだけの奴隷になるのでお勧めできない。その他、米ファンドが3社応札しているが、彼らは安く買って高く売ることしか考えていない。このようなマネーゲームの対象にして欲しくない。筆者の考えるベストは、「TSMC、グーグル、アマゾン」である。「ホンハイと紫光集団」も悪くない。
東芝メモリの買収先は6月には決定される見込みである。したがって、筆者は、これら10回のコラムを4〜5月の間に執筆する予定である。ただし、事態は動いており、新たな事実が発覚した場合は、執筆内容を変更する場合があるかもしれない。それについてはご容赦願いたい。
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