2017年3月20日(月) ヤマト運輸 夜9時100件もの未配達 増員求めても会社が罵倒 宅配の長時間労働 どうなる 宅配最大手のヤマト運輸(本社・東京都中央区)は、労働基準法に違反する長時間労働で労働基準監督署の是正勧告を受け、「是正」の取り組みをアピールしています。しかし、未払い残業代請求事件や過労自殺損害賠償事件など解決していない問題がまだまだあります。(田代正則) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-20/2017032013_01_1.jpg (写真)三六協定違反の申告があったヤマト運輸の営業センター(画像を一部加工)=横浜市 未払い残業代で労働審判 支払い出し渋る会社 神奈川 神奈川県では、トラック運転者2人が神奈川労連に労働相談し、それぞれ約190万円の未払い残業代をヤマトに請求しています。会社が支払いを大幅に低い金額にとどめる主張をしたため、労働審判で争っています。 「夜9時になっても、100件の未配達が残っていることもあった。いくらやっても終わらず、頭が壊れるんじゃないかと思うほどのストレスでした」。Aさん(35)は、こう振り返ります。 2013年にヤマトがインターネット通販アマゾンの荷物を引き受け、配達が1日200件に及ぶことも。順調なペースでも1件の配達に3分。200件は10時間以上を要します。さらに、多いときには再配達が4割にのぼる日もあります。 ヤマトの労使間で残業時間の上限を決めた「三六協定」では月95時間までです。しかし、協定違反が繰り返され、100時間オーバーの月も2年で4〜5回ありました。 ヤマトには、労働時間を実際より短く記録するサービス残業のからくりがありました。 ヤマトでは、トラック運転者に所持させた集配業務端末「ポータブルポス」の起動時間だけを労働時間とカウントします。実際の労働時間と毎日1〜2時間かい離し、1カ月で30時間以上となることもありました。 同じ未払い残業代を請求しているBさん(39)は、労働者個人ではサービス残業を拒否できないと訴えます。「自分だけ長時間働くのをやめれば、その分、同僚たちの負担が増えることになる」。ヤマトは、労働者の仲間意識を利用し、長時間労働を仕向けていました。 2人は労基署に申告し、サービス残業や三六協定違反の是正勧告を勝ち取りました。このためヤマトは、全社で未払い残業代調査をしています。Bさんは「私たちへの残業代計算と同じように、低い金額になっていないでしょうか」と心配します。 過労自殺損害賠償 月178時間残業、うつに 仙台市 仙台市では、過労自殺損害賠償裁判が争われています。14年6月21日、仙台市内のエリア支店長の男性=当時(47)=が過労自殺しました。 遺族の訴えによると、男性は同年3月16日にドライバー事故が多発していたエリアに、支店長として赴任。異動直後から事故の報告書作成や再発防止策に追われ長時間勤務が続きました。人員不足解消の増員要請は会社に無視され続け、逆に罵声を浴びせられました。夜通し作成した再発防止策の書面を目の前で破り捨てられるパワハラを受けました。4月中旬には体調を崩し、精神的にも変調をきたすようになりました。 亡くなるまでの男性の残業時間は、3月16日〜31日(16日間)が127・5時間、4月が114時間、5月が182・5時間でした。仙台労基署は15年6月4日、男性のうつ病発症前1カ月に178時間の残業があったとして、労災認定しました。 男性の遺族は昨年5月10日、仙台地裁に提訴し、ヤマトと当時の上司に対して総額8581万9728円の損害賠償を求めています。 ○……○ 大企業による違法な長時間労働に対して、厚労省は社名公表、過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)の調査、書類送検などの措置をとるようになっています。 最近になって、未払い残業調査やタイムカードの適正化などの手をうちはじめたヤマト。係争中の事件についても、当事者と向き合って解決できるか注目されます。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-20/2017032013_01_1.html 2017年3月20日(月) きょうの潮流 飛脚が列島をめぐるようになったのは、江戸期に入ってからでした。制度やネットワークの形成とともに扱う荷物も増え、多様化。社会の成り立ちに深くかかわっていきます▽需要に合わせて飛脚もさまざま。定期便は並便、急送は早便、超特急便は仕立便という具合です。東海道をリレー方式で走った仕立便は江戸と京阪を最も短くて4日で結び、そのぶん料金もはね上がったそうです(巻島隆著『江戸の飛脚』)▽時は移り現代の飛脚ともいえる宅配ドライバーたちが運ぶ荷物は、年間37億個にも達しているといいます。急成長をつづけるネット通販と利用者の増大を背景に、この20年間で急増しています▽速くて安い。市場の拡大は激しい競争を生んでいます。時間指定や再配達。手厚いサービスの一方で現場は忙しくなるばかり。しわ寄せがかかるドライバーは一つの荷物を数分のペースで運ばなければならないほど。長時間労働にもつながり、心身の不調を訴える労働者が増えつづけています▽宅配大手のヤマト運輸は今春闘でサービスの一部見直しなどを労使で合意しました。しかし、ドライバーの激務改善や慢性化する人手不足の解消につながるかどうかは不透明です。同社は残業代の未払いで追及されています▽時代は変わって流通手段も格段に進歩しながら、働く人々への負担はどれだけ減ってきたのか。それでもまだ政府は過労死ラインまで働かせようとしています。まるで労働者だけを社会の発展から取り残そうとするように。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-20/2017032001_06_0.html
|