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ゾンビ企業がデフレ脱却の足かせに、ロードマップなきアベノミクス
萩原ゆき、Isabel Reynolds、谷口崇子
2017年3月13日 06:11 JST
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
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• 中小企業の6割以上が利益計上できず−政府は倒産件数減を誇示
• 潜在成長率向上へ勝負はここ3年−消費増税・五輪後は困難の見方も
経営コンサルタントの瀬野正博氏は、経営目標を立てる気力もない疲れ果てた中小企業経営者がこの5年で増えたと感じている。2009年の中小企業金融円滑化法施行後、企業は融資返済の猶予(リスケ)を受けることが容易になった。「経費の削減策を示せばリスケができる」ことが常態化しており、将来投資ができない状態に陥っているという。
国内総生産(GDP)600兆円に向けた成長戦略を掲げる安倍晋三政権は今年1月、アベノミクスの成果として中小企業の倒産件数が内閣発足後3割減少したと発表した。国内企業の倒産数は7年連続で減少し、16年は8164件と16年ぶりの低水準となった。しかし、経営環境が良くなっているわけではなく、資本金1億円以下の中小企業の約67%は利益を計上できず法人税を納めていない。
20年にわたり倒産企業の分析を行ってきた帝国データバンクの藤森徹情報部長は、「倒産が減ればゴールなのか」とアベノミクスの成果として掲げることに疑問を呈する。倒産数の減少が税収増や将来の経済成長にどの程度貢献するかの議論もデータもないのは、「ロードマップなきアベノミクス」だと指摘した。
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経済協力開発機構(OECD)は昨年4月のリポートで、手厚い公的支援が経営破綻している「ゾンビ企業」を倒産させず、企業再編を遅らせていると述べた上で、「そのような支援が資源配分にひずみを生じさせ、生き残るべき企業の金融アクセスを制限し、日本の潜在成長を減じている」と指摘した。
円滑化法は、リーマンショックの影響緩和を目的に中小企業融資の返済猶予や条件変更に柔軟に応じる方針を定めた時限立法だった。しかし、金融庁は13年の期間終了後も「引き続き融資先への貸し付け条件変更や円滑な資金供給に努めること」を金融機関に求めており、実質的な延長となっている。
ゾンビ企業
都内で板金塗装業を営む60代の経営者は、リスケが受けられる限り商売を続けたいと考えている。戦後、自動車の普及期に父親が創業し、最盛期は20人近くの職人を抱えていた。今は古びた作業場に工員が1人いるのみで、複数回リスケを受けた今も利益は全く出ていない。それでも差し迫って商売を畳む必要はなく、古くからのお客さんは来てくれると事業が続けられる環境を歓迎する。
円滑化法のもと金融機関が融資条件の変更基準を緩和したため、企業は抜本的な経営改善計画を示さずともリスケを受けられる。同社長は「お金を借りて商売は続けているが、代替わりをする前に畳むつもりだ」と、利益創出にはこだわっていないと語った。
帝国データバンクによると、リスケを受けた後に倒産した企業の数は、09年の112件から13年に563件に増加した。その後は16年まで400−500件の水準で増減を繰り返しており、藤森情報部長は、為替や資源高など経営環境が変わる中、どうにか持ちこたえている企業が多いものの、「倒産リスクをため込んでいる状態だ」との見方を示した。
デフレ脱却の足かせ
国内企業の再編に詳しいSMBC日興証券の新谷祐幸執行役員は、企業が倒産できずに商売を続けることがデフレ脱却の足かせになると指摘した。リスケを受けた経営者はコストを下げても売り上げ増へ努力を重ねる。人口減少で市場が縮小する中、適正規模数以上の企業が過当競争を繰り広げ、労働力の適正配分という意味でも弊害が生じる。「大手企業は海外に活路を求められるが、地方では副作用が顕著に表れる」として、地方の疲弊にもつながるとの見方を示した。
第二次安倍内閣は、13年にまとめた日本再興戦略で中小企業の新陳代謝が必要として、当時約4.5%だった開業・廃業率を米・英国レベルの10%台に引き上げる目標を掲げていたが、14年度の開業率は4.9%、廃業率は3.7%にとどまった。16年改訂版では、達成には社会の意識改革が必要で長期的な目標となると追記。また、14年度に約86万社だった黒字企業を20年までに140万社に増やすとした。
慶応大学大学院の岸博幸教授は、「掲げた理想は正しかった」が、現実は政治家が地元企業の倒産を嫌って国会で補助金や融資の対応を求めていると指摘。その結果、生産性の低い企業が増え、人手不足が深刻化するなど地方創生の観点からも反対の方向に向かっていると述べた。
岸氏はまた、潜在成長率向上への改革は東京五輪までの3年が勝負だと言う。今はインフラ投資需要などで景気が良いが、19年10月には消費増税が予定されており、その後人口だけでなく世帯数も減少に転じる。五輪後の景気後退局面では改革は難しいとみている。処方箋としては、最低賃金の上昇を挙げ、賃金上昇のコスト増に耐えられない中小企業を廃業に誘導することで良質な雇用を生むべきだと述べた。
融資条件変更申し込み今も
岡山市に本社を置く中国銀行で融資を担当する大友雅士郎氏は、「現場ではまだ多くの企業がリスケを必要とし、経営改善策を模索している状態」だと述べた。円滑化法施行当時と比べて数は減ったものの、今も取引先の10%程度からリスケ申し込みを受けている。
同行は15年10月、地域企業の事業内容を分析し、成長可能性評価やソリューション提案を行う「リサーチ&コンサルティングセンター」を設立した。全160支店の担当者が、取引先に対して的確な経営改善を提示するための教育の役割も担う。
「昔は先輩に学ぶことで経営力を図る目を養ってきた」が、円滑化法施行後に状況が変わった。「来た人はすべてリスケしますという状態に近く、緊急性のある企業を見極めながら対応することで精いっぱいだった」と振り返り、「ひとつひとつ誠意を持って対応したいが、数字に追いついていないのが現状だった」と大友氏は語った。
金融庁が全国の地域銀行に対して行った最新の調査によると、円滑化法に基づく条件変更を受けた企業約15万社のうち53%が「経営支援等未実施」となっている。また初回のリスケから5年が経過している企業は43%に上っている。
副作用
「副作用というものは、何をやっても起きる」−−。09年に円滑化法を成立させた当時の金融担当相、亀井静香氏は今年2月、「何十万の中小企業が助かった」と同法の重要性を強調した。しかし、実質的な延長措置がとられ赤字企業がリスケを繰り返す現状については、「当時は、金を返せないのが当たり前になってはいけないという理由で時限立法にした」と述べ、こうした弊害の長期化は想定していなかったと述べた。
同法が金融機関の安易な貸し出しにつながり、地方銀行などで審査能力が低下したと指摘されていることについても、「副作用として、そういう側面はある」と認め、金融機関が「本当の意味の企業診断」をして、アドバイスをしながら貸し付けをする必要があると語った。金融庁は昨年10月に発表した金融行政方針で、金融機関に担保・保証がなくても将来性や地域での必要性などを見極めた融資姿勢をとるよう促す考えを示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-12/OLTIAI6K50XX01
イエレン議長の政策は出遅れていないのか−強い雇用が突きつける疑問
Rich Miller
2017年3月13日 05:35 JST
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イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は過去3カ月の間に2回、利上げのペースは遅れていないと主張している。これに対して、JPモルガンの米国担当チーフ・エコノミスト、マイケル・フェロリ氏は「最近の米金融当局者の発言は、利上げが雇用市場のデータからみて出遅れているのではないかと問い掛けている」と最近のリポートで指摘した。連邦準備制度の政策当局者がこうした問い掛けを何度も行うこと自体、自ら疑問を抱えていることを偽っているのかもしれないという。
イエレン議長
Photographer: Aaron P. Bernstein/Bloomberg
引き締め姿勢が不十分ではないかと問い掛けるエコノミストも増えている。特に2月の雇用統計が強かったことから、この問い掛けは新たな妥当性を帯びてくる。現在、フェデラルファンド(FF)の誘導目標レンジは0.5%ー0.75%で、コアインフレ率の1.7%を大幅に下回ることもこの議論に拍車をかける。金融当局者も、連邦準備法が定める2大目標である「最大限の雇用確保」と「物価の安定」(個人消費支出=PCE=価格指数で前年比2%上昇)の達成に近づいていることを認識している。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iNDWIes4uOtg/v2/-1x-1.png
ベレンベルク銀行の米国・アジア担当チーフエコノミスト、ミッキー・レビ−氏は「利上げが遅れ、財政政策で経済が予想以上に拡大すれば、市場はインフレの兆候に非常に敏感になる」と分析する。ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏も、財政出動と緩和的な金融政策が重なればインフレ率は今後2年以内に3%近くまで上昇すると警告する。
雇用市場の引き締まりに伴う賃金上昇がインフレにどのような効果をもたらすかについては、イエレン議長も「明確ではない」と述べている。米ディシジョン・エコノミクスのアレン・サイナイ社長兼最高経営責任者(CEO)は、今年末までに失業率は4.3%まで低下すると予測。そして、これまで投資家は金融当局者が発言通り利上げするか否かを疑問視してきたが、今後は利上げのペースが遅れていないかどうか注視することになろうと語っている。
原題:Yellen Claim Fed Isn’t Behind Curve Challenged by Robust Hiring(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-12/OMM3VO6JTSE801
Business | 2017年 03月 13日 11:33 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
企業物価、2月は前年比1%上昇 商品市況高で2年半ぶり高水準
[東京 13日 ロイター] - 日銀が13日に発表した2月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数(2015年=100.0)は前年比で1.0%上昇となり、消費税率引き上げの影響を除いたベースで2014年8月以来、2年半ぶりの高水準となった。原油など国際商品市況の持ち直しを背景に企業物価は上昇基調に転じている。
ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比1.0%上昇で、結果はこれと同水準だった。
国内企業物価は1月に同0.5%上昇と1年10カ月ぶりにプラス圏に浮上し、2月はプラス幅がさらに拡大した。2月の前月比は0.2%上昇だった。
前月比で指数の押し上げに寄与したのは化学製品や電力・都市ガス・水道、鉄鋼など。原油や鉄鉱石を中心に国際商品市況の持ち直しが続く中で、石油・石炭製品、鉄鋼などは前年比でプラス幅が拡大した。需要段階別にみても、国内需要財のうち素原材料価格は前年比41.4%と大幅に上昇し、1月の同23.0%上昇から一段と伸びが加速している。
もっとも、最終財をみると国内品は同0.3%上昇と、1月の同0.2%上昇からプラス幅が小幅拡大したものの、動きは緩慢だ。日銀では「国内需給で価格が上がっているものは引き続き少ない」(調査統計局)としており、今後は素原材料という川上の価格上昇を企業がどこまで転嫁できるかが焦点となる。
上昇品目数と下落品目数は、公表746品目のうち前年比で271品目が上昇、399品目が下落した。引き続き下落が上昇を上回っているものの、その差は128品目と1月の151品目から縮小している。
(伊藤純夫)
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Business | 2017年 03月 13日 09:56 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
機械受注1月は前月比-3.2%、製造業弱く予測下回る
[東京 13日 ロイター] - 内閣府が13日に発表した1月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比3.2%減の8379億円となった。製造業の弱さが目立ち2カ月ぶりの減少。ロイターの事前予測調査では0.5%増と予想されていたが、これを下回った。前年比では8.2%減だった。
内閣府は、機械受注の判断を、「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
なお、季節調整替えが行われたため、前月までの数値は改定された。
製造業からの受注は前月比10.8%減で4カ月ぶりの減少。非製造業は0.7%増と2カ月連続の増加と好調。
機械受注は、トランプ米大統領の就任後、企業に先行き不安もみられたものの12月の受注額は前月比2.1%増と増加していた。1月は、製造業の減少、なかでも素材系からの受注の悪化が目立った。非鉄金属や化学工業で、前月までの増加の反動が出たもよう。加工型は、はん用・生産用機械を除き全般に増加した。
他方、非製造業では金融業・保険業に加え情報サービス業からのコンピュターの受注が増加したほか、不動産業からの受注も運搬機械などが好調だった。
1─3月の受注見通しは前期比1.5%増加となっており、実現すれば3四半期連続の増加となる。設備投資が順調に回復傾向をたどっていることを示唆するが、1月がマイナスとなったことで実現は微妙だ。達成には2・3月がそれぞれ前月比4.4%増となる必要がある。
機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。設備投資の先行指標として注目されている。
*内容を追加します。
(中川泉 編集:佐々木美和)
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http://jp.reuters.com/article/machinery-orders-idJPKBN16K006
【第2回】 2017年3月13日 石野雄一
バランスシートにある資本金や内部留保のお金は、実際には、使えないってホント!?
ファイナンスってご存じですか? 「ファイナンスについて学びたい。でも、本を読んでもよくわからない……」という人は少なくありません。そこで、本連載ではファイナンス本のベストセラー著者、石野雄一氏が3月10日に出版した『まんがで身につくファイナンス』(石野雄一著、石野人衣作画、ダイヤモンド社)の中から1章と2章のまんがと解説文を抜粋して、全5回に分けてファイナンスの基本についてお届けいたします。この機会に、ぜひファイナンスのポイントを学んでみませんか?
石野雄一(いしの・ゆういち)
株式会社オントラック 代表取締役社長
ビジネス・ブレークスルー大学 非常勤講師
1991年3月上智大学理工学部卒業後、旧三菱銀行に入行し、9年間勤務した後退職。
2002年5月米国インディアナ大学ケリースクール・オブ・ビジネス(MBA課程)修了。帰国後、日産自動車株式会社入社。財務部にてキャッシュマネジメント、リスクマネジメント業務を担当。2007年2月より旧ブーズ・アレン・ハミルトンにて企業戦略立案、実行支援等に携わる。2009年5月同社を退職後、コンサルティング会社である株式会社オントラックを設立、現在に至る。企業の投資判断基準、撤退ルールの策定支援コンサルティング、財務モデリングの構築、トレーニングを実施している。
著書に『道具としてのファイナンス』(日本実業出版社)、『ざっくり分かるファイナンス』(光文社新書)がある。著者の会社が運営するサイト「ファイナンス用語辞典」をご活用ください。URL: http://ontrack.co.jp/finance-dictionary/
※次回は、3月15日(水)に掲載します。
http://diamond.jp/articles/-/120930
ドル強気派、FOMC金利予測分布図に注目−上方修正なら買いに弾み
Lananh Nguyen
2017年3月13日 10:00 JST
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• 10日の米雇用統計後のドル下落でもトレーダーらは引き続き強気
• 利上げのペースと回数占う上でFOMCのドット・プロットに関心
10日発表の2月の米雇用統計は堅調な伸びを示したが、同日のニューヨーク市場でドル相場は下落した。それでもドルの一段高を見込むトレーダーらは態度を変えていない。今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)がドル急伸を再び引き起こすと期待しているからだ。
ドル強気派は意気軒高
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
ドル強気派は15日のFOMC終了後に発表されるドット・プロット(金利予測分布図)に注目している。昨年12月に当局者らが見込んだ2017年の3回の利上げは市場にまだ十分織り込まれておらず、2月雇用統計は当局者がそれをさらに上回るペースの利上げを望むのではないかとの観測を打ち消す内容とはならなかった。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iv8NKB5vb.fQ/v2/-1x-1.png
バンク・オブ・ノバスコシアの主任外為ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は雇用統計発表後、「ドット・プロットの上振れや、こうした見方に沿った見解が示されれば、ドル相場を後押しするだろう」と指摘した。
10日のドル相場は下げて終わったものの、このところドルは上振れしていた。トランプ政権の成長促進策が迅速に実施されるとの期待は後退したが、利上げを示唆する当局者のコメントがドル相場を下支えした。
またヘッジファンドなどの大口投機家が8週間ぶりにドルの強気ポジションを拡大したこともドル相場の楽観的な先行きを示唆した。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、3月7日終了週はドル高に賭けるポジションがドル安を見込むポジションを17万2639枚上回るネットロング(買い越し)だった。
原題:Dollar Rally’s Second Wind Hinges on Fed Clues About Rate Path(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-13/OMQ67I6JIJUV01
2017年3月13日 田中泰輔
1ドル=120円超へ再始動 米利上げペースはゆっくり加速
ドル円相場は、米大統領選挙後から2カ月急騰し、次の2カ月は1ドル=110円台前半で膠着した。しかしこの調整地合いもそろそろ終わるとみる。米大統領は、2月28日の議会演説で、中間層優遇税制、法人税減税、国境税調整、インフラ投資などについて具体的な言及をしなかった。
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しかし、大統領の公約は議会共和党案と擦り合わせつつ、部分的にせよ、実現していこう。その安堵からか市場はリスクオン機運を取り戻し、FRB(米連邦準備制度理事会)は3月15日に利上げに踏み切ろうとしている。
ドル円相場の方向を規定する第一要因は米景気・金利動向である。昨年を通じて、米景気サイクルにはピーク感がにじみ出て、ドル円は100円近くからの反発力が出ないまま90円台へ下落すると判断された。しかし今年、トランプ共和党政権と共和党優位の上下両院という体制下で、財政政策による景気浮揚が期待される。
トランプ大統領の「歴史的な税制改革」には、議会との調整や法整備など実現への不確実性がまだくすぶることは確かだ。しかし、ある程度現実的な想定として、6月あたりに中間層優遇税制法案の発効、年末までに何とか法人税減税の成立(恒久措置にするには共和党51議席の上院で60票以上を必要とするが、インフラ整備計画とセットで超党派合意が可能とみる)を期待する。
問題が複雑な国境税調整は簡単には進みそうもない。それでも、既に政策期待で企業も消費者も景況心理を改善させている。政策が段階的に実現すれば、今年遅くから来年に米成長は3%超へ押し上げられよう。
FRBは、2015、16両年末、米景気は鈍かったのに、市場のリスクオンに乗じて、利上げを敢行した。今年、トランプ政権による財政政策で景気が補強されるなら、利上げテンポが速まるとの見方は自然だろう。
利上げは、今年は3月に続いて6月と9月の3回、来年は四半期ごとに計4回あると予想している。ドル円は3月利上げで115円をトライし、6月の利上げごろに115〜118円で堅調さを増し、9月の利上げごろ以降に120円台を突っ掛けるイメージである。
円高ドル安論には現段階では賛同しない。トランプ政策を悲観視するドル円下落論には、なぜそれが米政策の段階的実現より優勢だといえるのかを問いたい。米政権が人事上の問題等で運営不能になる事態も、可能性ゼロとはいえないが、それを理由に投資ポジションをつくるメーンシナリオとしては扱えない。
1993〜94年を引き合いに、米利上げ過程でドル円が下落するとの見方も、なぜ米景気サイクル前半のドル安の事例を、今年のようなサイクル後半戦に当てはめるのか、違和感がある(この点は2月13日の本欄で論じた)。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
http://diamond.jp/articles/-/120928
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