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世界の自動車勢力図は「1000万台・400万台」の戦いに注目
http://diamond.jp/articles/-/120726
2017.3.10 佃 義夫:佃モビリティ総研代表 ダイヤモンド・オンライン
3月6日、米GM(ゼネラル・モーターズ)と交渉を進めていた仏PSA(旧プジョー・シトロエン)は、GMの欧州子会社独オペルと姉妹ブランドの英ボクスホール、GMフィナンシャルの欧州事業を総額22億ユーロ(約2650億円;1ユーロ=120円45銭換算)で買収することに合意したと発表した。GMは赤字が続いていた子会社のオペルとボクスホールを売却することで、全体の収益力向上に結びつける。
オペルは、ドイツの名門企業。日本でもヤナセが1992年に独VW(フォルクスワーゲン)の輸入権を剥奪された際に、オペルに切り替えて販売を拡大した経緯がある。PSAは直近の総販売台数315万台から、オペル・ボクスホールの約100万台を加えると、世界販売で430万台規模となる。これにより、欧州市場におけるシェアが16%まで上昇、仏ルノーを抜き、欧州でVWグループに次ぐ2位となる。一方、GMは欧州からの撤退により、昨年の年間世界販売台数で3位の座から転落することになりそうだ。
GMは欧州事業を担ってきたオペルの不振から売却を検討していたことに加え、英国のEU離脱で姉妹ブランドのボグスホールも売却に踏み切ったようだ。今回のGMの決断は規模よりも収益性を重視した欧州子会社の売却ということになる。一方のPSAは、同国のライバルであるルノーへの対抗も睨み、グループ力強化に向けて名門オペルを傘下に置いた動きといえよう。
■世界の自動車勢力図はビッグ3時代から
トヨタとVWの時代へ
世界の自動車勢力図を振り返ってみよう。20世紀では日本が欧米対抗に割って入る格好となったが、米ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)が世界をリードしてきた。それが21世紀に入ると、世界を襲ったリーマンショックの影響で米ビッグ3が衰退し、日本のトヨタとドイツのVWが世界覇権を争う構図に変わった。
とりわけ昨年から今年にかけて日本車の再編が進む一方で、GM、フォードの米国勢が復活し、新興テスラも台頭してきた。また、欧州市場の回復トレンドの中で、欧州勢もドイツ、フランス、さらにイタリアの自動車各社による合従連衡が加速するのではないか。
今回のPSAのオペル買収発表は、欧州での世界モーターショーの一つである「ジュネーブ国際自動車ショー」開幕(3月7日)の前日ということで注目が集まった。その国際自動車ショーでは市場回復で元気な欧州勢と、欧州市場で攻勢をかける日本勢の積極的な出展の動きが目立っている。電動化や自動運転、つながる車への将来技術の転換への対応だけでなく、世界の自動車の新たな提携や連携に向けて模索しているのだろう。
■2016年の世界販売台数ランキングで
VWが首位を奪還した理由
2016年の暦年(1〜12月)世界販売台数ランキングは次のとおりである。
ディーゼル車不正問題で苦境に陥ったかに見えた独VWだが、昨年の世界販売台数を見るとトヨタからトップを奪還していることからもわかるように、明らかに立ち直ったことを示している。これはアウディやポルシェなどグループ企業の押し上げや地元の欧州での順調な販売に加え、中国の市場で販売台数を大きく伸ばしたことが大きい。とくに昨年、中国市場における新車販売台数は2803万台(前年比13.9%増;中国汽車工業協会の発表)。このうちVWグループが販売した台数は小型車減税の恩恵も受け、過去最高の398万台(前年比12.2%増)であり、これが大きな原動力となったわけだ。
一方、4年連続で世界販売台数で首位を守り続けてきたトヨタは、ダイハツと日野を入れて1000万台を維持しながらも、中国市場で好調だったVWにトップを譲ることになった。ところが、スズキが新たにトヨタグループ入りし、かつスバルやマツダを含む緩やかな「仲間づくりを進める」(豊田章男トヨタ社長)なかで、このグループ全体で見ると世界販売台数で1600万台規模となる。
ルノー日産連合は、昨年11月、三菱自動車を傘下に置いたことで、三菱自の世界販売分を加えて「約1000万台規模のアライアンス連合となり、スケールメリットを生かしていく」と3社のトップとして統括するゴーン戦略の方向を示した。ゴーン氏の世界覇権の野望は、GMのオペル売却で図らずも世界第3位に浮上することになる。
これに対し、GMは1000万台規模にまで回復してきたが、今回の欧州撤退により、当面は規模よりも収益性を重視する経営姿勢を示した。だが一方で、ホンダと燃料電池車の米合弁会社を始動させるなど、将来を見据えて新たな合従連衡も模索している。
■「400万台クラブ」から
「1000万台クラブ」へ
「1000万台クラブ」。かつて1990年代末の世界自動車大再編では「400万台クラブ」と言われた。当時、自動車が生き残れるかどうかは、年間400万台規模の生産台数の確保が分かれ目であるというものだった。いまや世界の自動車の大転換を乗り切るには、市場拡大で年間1000万台規模に押し上げてきている。
それでも、中堅クラスの自動車各社の生き残りへの動きも加速している。世界販売台数第10位を確保しているスズキが、トヨタグループ入りを決断したのもその典型である。
また、今回のPSAの動きは様々な思惑が見えてくる。プジョー・シトロエンと言えば仏ではルノーの宿命的なライバルである。過去、しのぎを削ってきた歴史があるが、ルノーが日産を傘下に置き、ルノー日産連合として国際アライアンスを成功させたのに対し、PSAはリーマンショックや欧州債務危機による業績不振が続き、苦況に陥っていた。
しかし、欧州市場の回復トレンドとともにPSA再建の動きも進んできた。とくに2014年、ルノーでゴーンCEOの後継者と目されてきたカルロス・タバレス氏が、同社COOを更迭されてライバル社のPSAのCEOに就任したことが注目された。CEO就任とともに、中国の東風汽車がPSAに14.1%出資し、仏政府・プジョー家と同じ水準の筆頭株主となった。当時、この契約調印に習近平中国国家主席とオランド仏大統領が立ち会ったことも注目を集めた。
タバレスPSA体制としては、因縁のルノーへの対抗もあるようだが、オペル・ボグスホールを買収したことに伴い、オペルの早期再建に向けてグループブランドを強化し、欧州市場でVWに次ぐ2位を奪取した。世界販売台数はホンダやFCAに匹敵する400万台規模となり、世界7位を競うことになる。またPSAは、オペルに続いてマレーシアのプロトン買収協議を進めるなど意欲的だ。
PSAは、かつて三菱自動車との資本提携が決まりかけたこともあったが、ゴーン日産が結局、三菱自を傘下に置いた因縁がある。また、ゴーン氏は2004年にタバレス氏を日産へ呼び込んで片腕とし、その後ルノーのCOOに就任させた経緯がある。ゴーン後継から一転してルノーを更迭されたタバレスPSAが逆襲したとも受け止められる。
いずれにしても日本での三菱自動車やスズキの位置づけの変化と米クライスラーを買収し傘下に置いたフィアット(FCA)やPSAなど欧州勢の今後の動きに注視したい。さらには、中国自動車企業の海外ブランドへの出資(ボルボカーなど)への積極展開も目が離せない。
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