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ふるさと納税急増の大問題、返礼品競争だけではない
http://diamond.jp/articles/-/120727
2017.3.10 森信茂樹:中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 ダイヤモンド・オンライン
ふるさと納税への批判が一斉に起き始めている。その理由としては、本来の趣旨と離れた返礼品の過熱競争が起きて、東京都だけではなく、北海道函館市など地方の中堅都市の中にも税収減となる自治体が出てきていることや、増収になる自治体も返礼品への支出を差し引くと増収は半分程度にしかならないことなどが挙げられる。
寄付を受けるのは返礼品の“豪華さ”ではなく自治体の政策で競うように変えるべきだ、というような提言(「朝日新聞」社説2月27日)もなされている。だが問題はそれだけなのか。
■7年で20 倍以上に膨らむ
「ふるさと」に「寄付」の狙いは?
ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)をした場合に、寄付額のうち2000円を超える部分について、所得税と住民税から全額が控除される制度だ(所得などに応じて一定の上限はある)。 そもそもこの制度の趣旨を考えると、「ふるさと」と「寄付」という2つのキーワードが出てくる。
総務省の「ふるさと納税研究会報告書」(07年10月)によると、この制度の趣旨は、「自分が生まれ教育を受けたが、その後は都会に出て働くことになったので、ふるさとの自治体には納税ができない。そこでお世話になったふるさとに、自分の意思で寄付ができる制度を作りたい」というものである。
背景にあるのは、たとえば東京と沖縄にある、人口一人当たりの3倍弱という地方自治体間の税収格差を、何とかしたいという考え方だ。
◆地方間の税収格差
平成28年版地方財政白書
これを是正する制度としては、国庫支出金(補助金)と、国税収入の一定割合を財政基盤の弱い自治体に振り向ける地方交付税交付金の2つがあるのだが、前者はひも付きで、後者だけでは格差是正は十分ではないと自治体は感じている。
しかし、国(中央政府)を通してではなく豊かな自治体からそうでない自治体への直接的な税金の移譲(これを水平的調整という)は、地方税の原則から言って、容易には取りがたい。
地方税は、住民の「受益」と「負担」のセットという考え方のもとで、「負担」するのは、自治体のサービスを「受益」している(応益税という)からで、水平的調整を行うと、「受益」のないところに「負担」が生じることになり、この原則から外れてしまうからだ。
そこで、住民個人の意思で「寄付」した、ということにすれば、実質的な水平調整が可能になるのではないか、ということでできたのが、ふるさと納税である。おそらく、わが国の寄付文化から考えて、大々的な税金の移譲は生じないだろう、という思惑もあったのだと思う。
しかし返礼品狂騒曲と称されるように、ふるさと納税の寄付額は、1653億円(15年度)で、制度の始まった08年度の20倍以上に膨れ上がった。冒頭のように、東京都以外の自治体の中にも、税収減が生じ始めたのである。
■「おいしい」制度の裏側
国や富裕自治体が支える
ふるさと納税急増の秘密を解き明かすとこうなる。
A市の住民の甲さんが、B町に10万円寄付をした場合を考えてみよう。甲さんは、適用下限額である2000円を差し引いた9万8000円が減税という形で、国(所得税減税)とA市(住民税減税)から受け取る(事後的に返って来る)のである。よほど高額な寄付をする場合を除いて、持ち出しは2000円である。
急増の理由は、「ふるさと」とは無関係の、魅力的な返礼品を出す自治体に「寄付」が集まったことに加えて、寄付をすれば自腹を切るのは2000円でよく税の控除も大きいので、ただ同然で品物やサービスを受け取ることができる制度となったことである。
高所得者ほど税の控除の上限が高くなるので、より高価なもの・サービスが入手できるという「逆進性」の問題もある。
つまり、キーワードである「ふるさと」も「寄付」も全く関係のない「欠陥制度」となっている。
では、そんな「おいしい」制度は、だれの負担で成り立っているのか。ふるさと納税のシステムを見れば、それが国と他の自治体であることは一目瞭然だ。
上記のA市の住民甲さんが、B町に10万円寄付をした場合を考えてみよう。 A市の住民税の税収は減るが、交付税交付団体である場合(わが国では東京都などを一部の団体を除きほとんどの自治体が交付団体)、減収になった部分の4分の3が、地方交付税で補てんされる仕組みとなっている。交付税の財源は、所得税、法人税、消費税、酒税など国の税収である。
つまり、この制度のスポンサーは、国と東京都のような財源が豊かで交付税を受けていない自治体であるということである。
■行き過ぎた税の控除
寄付税制並みの自己負担に
筆者は、このような行き過ぎたふるさと納税制度は即刻改めるべきだと思っている。その際には、「ふるさと」と「寄付」の2つのキーワードに沿って見直すべきだ。しかし残念ながら、寄付者の「ふるさと」がどこか、ということを正確に調べることは、番号(マイナンバー)を使ってもできない。
したがって、見直しは「寄付」のところである。ふるさと納税は、2000円の負担でそれ以上の返礼品をもらっており、「寄付」とは別物である。「寄付」というのは、自腹を切る、ということである。
現在、日本には、ふるさと納税以外に、通常の、つまり欧米でも導入されている寄付税制が完備している。
その内容は、寄付金額から2000円を引いて、それを(一定の限度内で)所得から控除できるという仕組みである。
また、特定公益増進法人や認定NPO法人に対して寄付する場合には、寄付金額から2000円を差し引いた残りに50%を乗じて(所得税からは40%、住民税部分は10%)税を控除するかどちらかを選択できることになっている。
つまり、10万円寄付すると、国・自治体から5万円が返ってくる。わかりやすく言うと、個人が5万円寄付すると、国・地方が残りの5万円は負担してくれる(マッチングしてくれる)という趣旨である。
ふるさと納税も、この寄付税制と同じレベルに戻すことを考えるべきだろう。返礼品の比率を抑えることも必要だが、ふるさとに「寄付」するのなら、せめて半分ぐらいは自腹を切りなさい、ということである。
(中央大学法科大学院教授・東京財団上席研究員 森信茂樹)
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