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ロボットへの課税 労働者に恩恵?
2017/2/28 2:00日本経済新聞 電子版
The Economist
産業革命時代の英国で、織機の普及を恐れた手工業職人が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が起こったように、米マイクロソフトがどれほど人々にパソコンを金づちでたたき壊したい気持ちにさせたとしても、同社の創業者ビル・ゲイツ氏は現代版ラッダイト(技術革新反対者)だとは思えない。そのゲイツ氏が最近、米オンラインメディア「クオーツ」のインタビューで、自動化が急速に進めば社会は混乱するのではないかとの懸念を示した。混乱回避のため、各国政府はロボットへの課税を検討すべきであり、それで自動化の進展が遅れれば、それに越したことはないという。これは興味深い考えだ。たとえ実務上不可能だとしても、自動化がもたらす多くの課題を提起するからだ。
■急速に自動化が進めば失業者が増加
遠い将来、ロボットは自分で考え、貯金もし、会計士に相談もして、我々と同じように所得税を払うようになるかもしれない。しかし、ゲイツ氏が主張しているのはそんなことではなく、導入したロボットに対し、あるいは自動化で人件費が浮いて上積みされる企業利益に対して課税せよということだ。税収は労働者の再教育に使える。授業や高齢者、病人の介護など、自動化が難しい仕事が多い教育や医療の拡充にも充てられる。
ロボット課税は労働生産性の改善を遅らせる可能性も=ロイター
ロボットの導入は高炉やコンピューターの設置と同様、設備投資になる。経済学者は通常、増産にかかわる設備には課税すべきでないと主張する。課税が投資を妨げる一方、税収は大して増えず、人々の生活は苦しくなると考えられるためだ。ゲイツ氏は、ロボット投資が石炭火力発電所の建設と少し似たところがあると主張しているようだ。生産量は増えるが、経済学者が「負の外部性」と呼ぶ社会的コストも生まれるからだ。自動化があまりに速く進めば、失業した労働者を雇用する新産業の育成が追いつかないだろう。社会的に高くつく長期失業者が増え、政府に自動化推進を妨げるような政策をとるよう圧力がかかりそうだ。ロボット課税はそうしたリスクを減らすので、試す価値は十分あるかもしれない。ちょうど高炉から排出される有害物質に課税すれば環境汚染が抑えられ、社会がよくなるのと同じだ。
ところが、現実はもっと複雑だ。ロボットを導入しても労働者を使い捨てにはせず、彼らの生産性を高められるはずだ。逆に、ロボットに課税すれば、労働者が不幸になることもあり得る。一部の労働者はロボットに仕事を奪われるかもしれないが、製品やサービスの価格が下がるので、全体としてみれば労働者の生活は向上する可能性がある。医療分野で機械化を遅らせ人間が引き続き仕事をこなすのは、社会の安定を維持するうえで有益に見える。だが、もしそれで医療費が急増し、労働者の所得の増加分が持っていかれてしまうなら、全く引き合わない。
■労働力が安価な国では生産性改善に遅れ
ゲイツ氏の提案で最も厄介な問題は、少なくとも今のところ、自動化の進捗度合いが速すぎるのではなく、遅すぎることだ。機械化は本来、生産性上昇率の向上、ひいては経済成長率の上昇として数字に表れるはずだ。米国では1990年代後半と2000年代初頭、労働生産性が急激に上昇した後、生産性の改善も経済成長率もずっとさえずにいる。
自動運転車が街を走り、倉庫が無人管理される時代が間もなくやって来るとゲイツ氏が心配するのはもっともだ。ただ、安価な労働力があふれている国では、省力化投資をする企業はほとんどないかもしれない。大勢の労働者が最低賃金でもいいから雇ってくれと列をつくっているのに、なぜ倉庫を自動化する必要があるのか。ロボットに課税すれば、労働者よりロボット関連の費用がかさむため、生産性の改善が一段と遅れる恐れがある。
自動化の勢いが実際に速まった場合でも、ロボット課税は適切ではないだろう。資本投下による機械化推進が自動化だとすると、失業者が困窮しないように、投資に伴う収入の一部を彼らに配分する必要がある。一案は、ロボットなどの自動化のための機械を多くの人が持てるようにすることだ。例えば、自動運転車をタクシーとして使い、運賃収入を所得の足しにできればいい。もう一つの方法はロボット課税による税収を再分配することだ。
■企業の市場支配力が強ければ人も機械も憂き目
だが、生産現場が自動化されるにつれ、自動化で得られる収入にも労働者賃金と同じ圧力が加わるようになる。企業が生み出した付加価値に占める労働者の取り分を示す労働分配率は、何十年も低下し続けている。原因の一つは労働力の余剰だ。ところが、数の多さでは機械も人間も変わらない。工場では複雑な装置も量産できる。同じソフトウエアを2本つくっても100万本生産しても、コストはほぼゼロだ。大型トラックの運転手には1人ずつ指示を出す必要があるが、高度な自動運転システムは際限なく複製できる。労働者同様、機械も多過ぎれば、経済成長の果実の公正な配分にあずかれないことは明らかだ。
米シカゴ大学の研究者は新たな報告書で、労働分配率はここ数十年、下がったが、ロボットなどの設備投資に向けられる資金の割合はそれ以上に大きく減ったと論じた。拡大したのは、企業が生産コストに上乗せできる利幅、すなわち企業利益だ。1月に発表された全米経済研究所(NBER)の調査報告書も、労働分配率の低下は「超有力企業」の台頭と関係があると分析している。有力企業が勝者として市場をほぼ独占する構図が色濃くなっているという。
巨額の利益をあげられるのは市場支配力が高い証しだ。市場支配力は、多くの企業などとつながるネットワーク力から生まれるのかもしれないし、優れた生産文化や政府の保護政策、あるいは別のことが影響している可能性もある。自動化の波が到来すれば、超有力企業の利益を分配する必要があるだろう。上場企業なら株式の配分で、非上場なら利益への課税強化を通して実施するのだ。ロボットは悪役に仕立てるにはうってつけだが、ゲイツ氏は課税対象を変えた方がいいかもしれない。企業の市場支配力が圧倒的なら、労働者も機械も同じように憂き目をみるからだ。
(c)2017 The Economist Newspaper Limited Feb. 25th, 2017 All rights reserved.
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO13432590X20C17A2FFB000/
JPモルガンのAI、数秒で36万時間の解析−ミス少なく休暇申請せず
Hugh Son
2017年3月2日 07:03 JST
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法律専門家チームがかつて何万時間も費やした金融取引の解析に対応
CDSやカストディー契約のような複雑な法律文書でも利用を計画
米銀JPモルガン・チェースでは、法律の専門家チームがかつて何千時間も費やした金融取引の解析を今や人工知能(AI)技術を応用した「学習する機械」が行っている。
JPモルガンでは「コントラクト・インテリジェンス(COIN)」と呼ばれるプログラムが昨年6月に稼働を開始。それ以前は商業融資の契約内容を解析する退屈でつまらない仕事に法律専門家や融資担当者が年間36万時間を費やしてきたが、COINのソフトウエアなら数秒で検証を終え、ミスも少なく休暇も申請しない。
同行はクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)やカストディー(資産管理)契約といった別の種類の複雑な法律文書にCOINの技術を活用することも計画している。将来は規制の解析やコーポレートコミュニケーションの分析に役立てる可能性もあるという。
新たなプライベート・クラウドネットワークとマシンラーニング(機械学習)への投資で可能になったCOINは、JPモルガンにとってほんの始まりにすぎない。経費とリスクを抑制し、新たな収入源を見つける狙いから同行は膨大に蓄積されるビッグデータやロボット工学、クラウドインフラを専門に扱うチームの技術拠点を最近設立した。
1月から利用が始まった「Xコネクト」という別のプログラムは、行員の電子メールを解析し、見込み客との関係が最も近く、紹介の便宜を図ってもらえる同僚を見つける支援を行っている。
JPモルガンのマット・ゼ ームス最高執行責任者(COO)は「われわれの取り組みは現実に成果を挙げつつある。これは絵に描いた餅のような代物ではない」と話している。
原題:JPMorgan Marshals an Army of Developers to Automate Finance (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-01/OM4ESB6K50XU01
ホンダ、研究所に新組織「X」 ロボット関連など担当
2017/2/28 17:09日本経済新聞 電子版
ホンダは28日、研究開発子会社の本田技術研究所が、ロボット関連など新領域の開発を担当する組織「R&DセンターX」を4月1日付で設けると発表した。二輪や四輪開発の組織と同列に位置づけるが、運営の手法を大きく変える。昨年9月には東京・赤坂に外部連携の窓口となる研究拠点を開くなど、体制を刷新して開発を加速する。
R&DセンターXはロボット関連の技術や水素などのエネルギー創出関連、モビリティーシステムの開発を担当する。製品や技術を軸としたプロジェクトごとに組織を立ち上げ、柔軟に運営する。6カ月程度でプロジェクトの結論を出すことを目指すなど、スピード感を重視する。
米スタンフォード大学で人工知能(AI)研究の権威のエドワード・ファイゲンバウム名誉教授と経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)をアドバイザーとして招き、外部の視点も採り入れる。
本田技術研究所の松本宜之社長は「研究所創設時の原点に立ち返って、エンジニアやデザイナーが自らの夢を原動力としながら、研究に没頭できるような組織運営を図りたい」と話した。
さらに昨年9月に東京・赤坂に開いた「ホンダイノベーションラボTokyo」では、R&DセンターXがカバーする新領域に加えて、AIなど自動運転やつながる車(コネクテッドカー)関連の研究を担当する。外部との連携の拠点として活用する予定で、「ベンチャー企業や大学、研究機関に加えて、アイデアを持つ個人も含めて、幅広く門戸を開放して連携したい」(松本氏)としている。
ホンダは「オープンイノベーション」を掲げ、電動化や自動運転などの先端技術を中心に、協業先を増やしている。1月に米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」で連携先を広く募ったところ、800件以上のコンタクトがあったという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HNL_Y7A220C1000000/
世界初のカーナビで「歴史的業績」 ホンダ、米学会から表彰
2017/3/2 16:33
ホンダは2日、同社が1981年に世界で初めて実用化したカーナビゲーションシステムが、米電気電子学会(IEEE)から技術分野の歴史的な業績をたたえる「IEEEマイルストーン」に認定されたことを受け、記念式典を開いた。世界中に普及したことに加え、自動運転など最先端の技術開発の礎になっている点が評価された。
ホンダが1981年に世界で初めて製品化したカーナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」
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ホンダが1981年に世界で初めて製品化したカーナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」
ホンダが81年に発売したセダン「アコード」に搭載したカーナビシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」が認定を受けた。IEEEマイルストーンは開発から25年以上たった歴史的業績を認定する。日本企業の技術で認定を受けるのは30件目で、自動車業界では初めてという。八郷隆弘社長は2日の式典で「この技術が基盤となり、今では自動運転の新たな世界を切り開こうとしている」と話した。
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、現在一般的な全地球測位システム(GPS)ではなく、走行距離や方向を測るセンサーの情報を基に、コンピューターで現在地を割り出して、地図上に表示。当時は地図データを記録する媒体の技術も十分ではなく、走行前にペンで専用の地図シートに経路を記入。このシートにブラウン管の光を透過させて、現在地や走行経路を表示していた。
カーナビは年々進化している。自動運転の基礎となるだけでなく、カーナビから得られるデータを基に、災害発生時には通行止めになっていない経路を判別できるなど、社会に幅広く貢献している。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ02HJW_S7A300C1TJC000/
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