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韓国政財界の腐敗問題は日本にとっても無視できないリスクだ
http://diamond.jp/articles/-/119499
2017年2月28日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■財閥中心、輸出牽引型
成長の果てに
2月17日、韓国最大の財閥サムスングループの事実上の経営トップ、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が逮捕された。容疑はグループ企業の合併に関する便宜を政府に求めたこと、朴槿恵(パク・クネ)大統領の知人である崔順実(チェ・スンシル)被告への贈賄などだ。
これまで、韓国経済はサムスンを筆頭とする10の財閥グループに支配されてきた。背景には、パク大統領の父親、故・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が、経済成長率を高めるために財閥企業を優遇したことがある。
それ以降、政府は財閥企業に独占取引権を付与したり、優先的に事業の許認可を出したりして積極的に財閥の経営を支え、財閥企業を中心に輸出牽引型の経済体制を作り上げてきた。中でも、サムスンはGDPの約2割を占める大黒柱として、韓国の政治・経済に大きな存在感を示してきた。
その結果、歴代の大統領や政府関係者が、大手の財閥企業と癒着することにもつながった。実際、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領以降、財閥企業から不正に資金を受け取るなどして摘発された大統領経験者は多い。韓国社会は一部の権力者と財閥が富み、その他の国民は経済成長の恩恵を享受し難い、不平等感の強い構造が出来上がったともいえる。
そうした経緯を踏まえると、韓国は崔順実被告の国政介入の原因を究明し、大統領を中心とした政権中枢と民間企業の癒着を断つ取り組みを進めることが必要だ。癒着の解明を進めながら、韓国は、中長期的な視点で民主主義を基盤とした政治を確立し、公平に所得を再分配できる経済体制を再構築するべきだ。
改革を進めることができないと、韓国の国力が低下し、朝鮮半島情勢を巡る緊張感が高まる恐れがある。韓国の政治と経済の動向は、国際社会にとっても無視できないリスク要因になりつつある。
■利権を一人占めする財閥
癒着の実態解明で出てくるものは?
昨年10月下旬、朴槿恵大統領の友人である崔順実が、大統領の演説草稿などの機密文書を発表前に入手していた政治スキャンダルが発覚した。これを受けて、大統領の知人が国政に介入し、韓国政府の意思決定に影響を与えていたとの疑惑が高まった。
それ以降、朴大統領の側近らが更迭され、大統領の退陣を求める大規模デモが繰り返された。こうして大統領支持率は史上最低に落ち込み、韓国の政治は大きな混乱に陥った。
政治スキャンダルへの捜査が進む中、サムスンが崔順実母娘の設立した会社に資金を供出していたことも発覚した。サムスンは大統領に近い崔被告に便宜を図ることで、見返りとして財閥経営への配慮を取り付けようとしていたのである。
その他、ロッテやSKグループにも家宅捜索が入るなど、崔順実被告の国政介入は財閥企業をも巻き込んだ、前代未聞のスキャンダルであったことが明らかになってきた。
12月に入ると韓国の国会は財閥トップらに対する聴聞会を開き、一連の政治スキャンダルの真相究明を進めた。この中で韓国経済団体のトップから「政府からの要請は断れない」と政府と企業の癒着を認める発言が出るなど、聴聞会は多くの国民が自国の政治、経済の実態を知る重要な機会になった。
特別検察官の捜査チームは、贈賄容疑などを理由にサムスン電子の李在鎔副会長の逮捕状を請求したが、ソウルの中央地裁は証拠隠滅などの恐れが低いことなどを理由に請求を棄却した。
そして2月17日、一転して再請求された逮捕状が発付された。この背景には様々な理由が考えられるが、地裁は韓国経済の利権を独り占めしてきた財閥企業への批判に配慮したのではないか。今回の逮捕を受けて、財閥グループと一部権力者の癒着の実態が明らかにされていくことは、韓国が抱える政治、経済の課題を解決していくために不可欠だ。
■10大財閥がGDPの7割占める
不平等感強い社会構造
長い間、韓国経済は財閥グループに支配され、大企業寡占型の経済体制が続いてきた。韓国経済における財閥企業の存在感がいかに大きいか、象徴的な数字をあげよう。大手10財閥の売上は、韓国のGDPの70%程度に達する。
また、韓国企業全体の純利益の40%程度が10大財閥のものといわれている。サムスン財閥の中核企業、サムスン電子の売上高はGDPの20%程度に達する。製造業に焦点を絞ると、サムスン電子と現代自動車は、製造業の総売上額の20%程度を占めている。
サムスンのスマートフォン、現代の自動車の売上が伸び悩むと、経済成長にはかなりの影響が出やすい。韓国経済イコール、サムスンの経営動向と言い換えても過言ではないのだ。
こうした財閥依存の経済構造の中で、歴代の大統領と財閥の創業一族が癒着し、不正行為が繰り返されてきた。財閥トップらが逮捕されたことはこれまでにもあったが、特赦を受け不正の追及は進んでこなかった。
また、財閥偏重の経済政策が進んだ結果、内需の拡大に欠かせない中小企業の育成も進んでいない。ウォン安が進み財閥企業の輸出が増加する場合は景気も押し上げられるが、リーマンショック後のように輸出が落ち込み財閥企業の業績が伸び悩むと、韓国経済は失速しやすい。最近でも朴大統領の弾劾などの政治的混乱や社会心理の悪化から消費が伸び悩み、不動産市場の過熱抑制策が一段と経済を圧迫している。
このように韓国経済にはかなり明確な歪みが存在する。一部の富める者が富み、それ以外の国民は経済成長の果実を享受することが難しい。今回の政治スキャンダルを受けて、多くの国民が財閥を批判し、目先の経済的な恩恵を求め始めている。今年前半にも大統領選挙が実施される可能性がある中、各候補者はそうした民衆の不満を汲み取り、支持を獲得しようとしている。
■民衆の不満、ポピュリズム政治に
公平な所得再分配の体制作りが重要
今後、韓国が国力を引き上げていくためには、政治と経済を改革し、公平に所得が再分配される体制を作るべきだ。しかし、それは口で言うほど容易なことではない。これまでの既得権益を失う層からは大きな反対が出るだろう。社会全体に軋轢が生じることも避けられない。
また、現在、韓国の政治、経済、軍事のリーダーである朴槿恵大統領は、弾劾訴追案の成立を受け、事実上、無力化している。構造改革を進める指導力を持ったリーダーの不在に加え、国内では世論の不満に呼応して、ポピュリズム政治が進みやすくなっている。
政治が不安定な状況下、大統領の独裁的な権限を分散し、民主化を進めることは容易ではない。その状況が続くと経済界からの要請が根強い、急激なウォン安などに対応するための日韓の通貨スワップ協議など、韓国経済に必要な取り組みを議論することすらままならない。それに加え、韓国ではわが国を上回るペースで少子高齢化が進行している。中長期的な視点で経済の実力=潜在成長率を引き上げることが可能かは不透明だ。
元々、朝鮮半島は、世界の安全保障にとって極めて重要な地政学的ポジションを占めている。朝鮮半島は、米国と中国、そして、ロシアの勢力争いのエネルギーがぶつかり合う地点だ。その意味では、中国やロシアのエネルギーを食い止める韓国の役割は決して小さくはない。
仮に韓国の政治混乱が続き経済の低迷が続くようだと、韓国の防波堤としての役割が低下し、朝鮮半島の情勢はさらに緊迫することも懸念される。トランプ政権と中国の関係が悪化し、それに伴って北朝鮮と韓国間の緊張レベルが上がる恐れもある。
そうしたリスクを考えると、韓国はいびつな経済構造を変えるとともに、民主化を進めて国力を高めることが重要だ。韓国の政治・経済の安定が実現できるかどうかは、今後の世界にとって無視できないリスク要因になりつつある。
わが国としても、韓国の混乱は“対岸の火事”では済まされない。思い切った構造改革を進めて経済回復を図り、経済外交を通してアジア各国との連携を強化することが必要不可欠になる。
(信州大学教授 真壁昭夫)
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