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トランプ政権が導入へ動く「国境調整」とは何か
ニュースを斬る
矛盾多く日本企業への影響は非常に大きい
2017年2月19日(日)
今村 卓
(写真:ロイター/アフロ)
トランプ政権が月内にも発表するとみられる約30年ぶりの抜本的な税制改革。その目玉は法人税改革であり、焦点は下院共和党が導入を提唱している「国境調整」である。下院共和党案は、法人税の最高税率を現在の35%から20%に引き下げた上で、輸出で得た収益は課税を免除する一方、輸入は費用からの控除を認めないという「国境調整」を新設する。輸入には20%の法人税がそのまま課税される仕組みになる。
トランプ大統領は、一時は中国に45%、メキシコに35%など米国の二国間の貿易赤字が大きい国に対して高関税を適用する「国境税」を主張し、下院共和党案は「複雑すぎる」と批判的だった。だが、その後に大統領側近がトランプ氏は「国境調整」に乗り気になっていると述べ、同氏も自ら2月10日の日米首脳会談後の記者会見で「インセンティブに基づく(Incentive-based)」税制にする方針と語った。近くトランプ政権が、「国境調整」を盛り込んだ法人税制改革が発表する可能性は高そうだ。
今後の審議に耐えられない下院共和党の「国境調整」案
しかし筆者には、いくらトランプ政権が下院共和党案の「国境調整」を支持しても、同案がこのまま今後の議会、特に上院での審議に耐えられるとは思えない。そもそも同案が昨年6月、オバマ前政権下で、大統領選ではトランプ候補の当選の可能性は低いとみられていた頃に発表された、おそらく誰も成立の可能性が高いとは思っていなかったからこそ、野心的に作られたプランである。だからこそ、トランプ氏の「国境税」よりは税率が低いとはいえ、「国境調整」の輸入にいきなり20%もの課税強化という十分に激変な措置が盛り込まれているのである。これでは耐えられないと思った輸入依存度が高い米国の大手小売業は、「国境調整」に反対の声を上げ、上下両院の議員へのロビー活動の攻勢を強めている。
これに対して「国境調整」を理論面で支えるシンクタンクや経済学者は、「国境調整」を導入すればドル高が進むことは確実だから、輸入企業も仕入コストが低下するので、税負担は大して増えないと説得している。一部の試算では25%のドル高になるという。だが、この論理に矛を収める輸入企業は皆無だろう。長期的にみればドル高が進む可能性は高いだろうが、「国境調整」の実施からすぐにドル高になる保証などないからだ。
為替相場は過去の変動の激しさが示すように、税・財政の変化以上に、金融政策や米国と海外の景気のずれなど多様な要因が影響を与える。輸入企業にとっては、輸入への20%もの課税強化の後、ドル高が進むまで時間を要するのなら、税負担の大幅な増加から逃れられず、小売価格に転嫁せざるを得なくなる。それなら「国境調整」の意図に従って、調達を輸入から国内調達に切り換えればよいだろうといわれても、限界がある。例えば、ドル高がすぐに発生しなければ、輸入依存度が高いガソリンは小売価格が13%も上昇し、家計の年間負担は400ドル近く増えるという試算がある。皮肉にも、トランプ政権の税制改革によって、トランプ氏の支持基盤である白人労働者階級はかえって生活が苦しくなるという事態が生じかねないのだ。
逆にドル高が速やかに発生すれば、別の問題が生じる。ボーイングやゼネラル・エレクトリック(GE)など輸出の多い米国企業25社は「国境調整」を支持する団体(America Made Coalition)を結成した。だが、その輸出は、ドル高が進めば、法人税減免で得た価格競争力は瞬時に消える。結局、マクロで輸出と輸入を対象にした「国境調整」は長い目でみれば米国経済に中立的ということであり、これに異論を唱える経済学者はいないだろう。しかし、トランプ大統領はおそらく違う。ドルが高すぎると騒ぎ立て始めるかもしれない。
このような下院共和党案の「国境調整」がもたらしうる様々な混乱や矛盾が明らかになれば、議会では共和党議員であっても「国境調整」に胡散臭さを感じ、それを支持すれば自らの再選が脅かされかねないと感知する議員が増えて、可決が難しくなる。現に、上院共和党では、先週から「国境調整」への反対が強まりかねない雰囲気が強まってきて、共和党の下院指導部が慌てて説得に走り回る事態になっている。しかし、説得の根拠がドル高ぐらいしかないのなら、支持に回る上院議員の数は限られるだろう。それでもトランプ政権と共和党の上下両院指導部が、「国境調整」を実現しようとすれば、エネルギーなど輸入品の一部を「国境調整」の対象から外すなどの譲歩が必要になる。
廃案か大幅修正もあり得る、成立でも今年秋以降か
しかし、この議会の共和党内部での大掛かりな調整が必要になれば、「国境調整」を含めた抜本的な税制改革の成立は、今年の秋以降、年末など相当先になるだろう。それは、今のライアン下院議長など下院指導部のこれまでの根回しのなさ、当面の議会はオバマケアの廃止・置換を優先し、税制改革は夏以降というライアン氏の審議日程の組み立て方をみても、明らかである。しかも、トランプ政権も、ようやく担当閣僚のムニューチン財務長官が就任したばかりで関係する政府高官が揃わず、トランプ政権独自の「国境調整」の具体的な提案は当面、望むべくもない。トランプ大統領も、「国境調整」を取り上げてツイートすることは多々あるだろうが、リーダーシップを発揮する機会はおそらくないだろう。現時点では、月内に示されるトランプ政権の税制改革案でも、「国境調整」は下院共和党案の受け入れが示される程度とみる。
その後、来月から夏にかけても、「国境調整」は共和党内でも意見が分かれ、産業界も輸出企業と輸入企業による支持と反対に二分され、最終的に断念に追い込まれるのか、輸入の例外品目を認めるなど譲歩があるのか、非常に不透明な状態が続くだろう。それでも、トランプ政権も議会共和党も、「国境調整」を早期に断念することはないだろう。国境調整で見込む税収が10年間で1兆2000億ドルと非常に大きく、これがなければ財政赤字の拡大を抑えて法人税の大幅な税率引き下げを実施することは困難だからだ。「国境調整」が実施されれば、そのスケールの縮小があっても、米国への輸出が多い日本企業への影響は非常に大きいと思われるだけに、今後のトランプ政権、上下両院からの声と審議状況を注意深く追い続ける必要があろう。
日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。
このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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それでも市場は「トランプ信仰」唱え続ける−不支持と投資決定は別物
Brian Chappatta、Oliver Renick
2017年2月20日 06:20 JST
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マネーの流れを追え。ワシントンでは使い古された言い回しだ。
今のウォール街でマネーの流れを追うとすれば、ホワイトハウスが陥っている混乱にもかかわらず、金融市場がなぜこうなっているのか理解に苦しむだろう。
ロシアの介入やマイケル・フリン氏の辞任、トランプ大統領のツイッター投稿、CNN報道にもかかわらず、株式市場はドナルド・トランプ米大統領の下で次から次へと最高値を更新した。確かに最初の1カ月、政権運営はトラブルに見舞われた(大統領本人は16日に、「整備の行き届いた機械のように運営されている」と主張しているが)。それでも相場は上昇している。大統領就任早々の市場としては、リンドン・ジョンソン大統領以来で最高のパフォーマンスだ。
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株価収益率や強気相場の長期化などさまざまな要素を挙げて、株価はこれ以上は上昇しない、トランプ波乱に市場は屈する、そうなるはずだとの悲観論もある。経済に活気があるのはホワイトハウスでふんぞりかえっている男ではなく、何年にもわたる金融緩和のおかげだという主張は説得力があるだろう。株式相場というのは右肩上がりが普通だ、何を今さらと言われるかもしれない。
しかし投資家に話を聞くと、違う言葉が返ってくる。今は何年かに1度しか訪れない絶好の買い場だと。
「8年間の悪夢からようやく目を覚ましたような気分だ」と、シュルツ・アセット・マネジメントを創立したジョージ・シュルツ最高投資責任者(CIO)は語る。同氏はトランプ大統領について、「好き嫌いは別として、これまでにやると決めたことはやり通してきた男だ。ビジネスマンとして成功しており、意欲的な計画を練っているようだ」と称賛した。
アニマル・スピリット
S&P500種株価指数は昨年11月の大統領選挙以降、10%近く上昇し、オバマ前政権下で始まった強気相場は今年3月で9年目に入る。2月16日の終値は、金融危機が深刻化する前の2007年10月に付けた高値を50%上回っている。
政治的な支持・不支持はともあれ、トランプ氏はその存在だけで経済にアニマルスピリットを吹き込んだ。そもそもその経済は、ほとんどの指標において順調だった。トランプ効果がさらに株価を押し上げる兆候なのか、あるいは投資家がいずれ劇的な転落を迎える兆候なのか。
ウェルズ・ファーゴ・プライベートバンク(カリフォルニア州ランチサンタフェ)のエリック・デービッドソン最高投資責任者(CIO)は、「顧客から寄せられるコメントの90%以上は最近まで、うまく行かなくなるはずはないだろう、という類いのものだ」と話す。「かつて投資家は自分の影に怯えてたが、今ではずっと楽観的になっている」と述べた。
トランプ政権とロシアのつながりや、移民政策への非難が渦巻いているが、投資家は結局のところ、気にしていないようだ。少なくとも投資の決定は左右されない。
「先行きは不透明で心配だとの声は多い」と、プレミア・プランニング・グループ(ペンシルベニア州フェニックスビル)のマネジングパートナー、フランク・ヘネシー氏は話す。「しかしそう言う人がどのように投資するかは、まったく違う話を物語っている」と述べた。
原題:‘In Trump We Trust’ Is Market Mantra as Chaos Besets White House(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-19/OLIXA36VDKHT01
- 反ユーロ掲げるポピュリズム台頭、ソブリン債めぐる懸念かきたてる 英小売3カ月連続減、ポンド安で トランプと電話会議ダメ 軽毛 2017/2/20 07:34:21
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