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東芝・綱川智社長(つのだよしお/アフロ)
東芝と運命共同体、PwCあらた監査法人の「黒歴史」…安々と決算発表を許せない事情
http://biz-journal.jp/2017/02/post_18049.html
2017.02.16 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
2月14日、東芝は同日に予定していた2017年3月期第3四半期(16年4−12月)連結決算発表を、3月14日まで1カ月間を延長すると発表した。当初は2月14日正午に発表を行うはずだったが、正午を過ぎても東芝の決算短信は公表されず、その理由も明らかにされていなかった。
東芝が発表延期を正式に公表したのは、同日午後2時30分。この発表をきっかけに、それまでも下落基調をたどっていた株式市場は“東芝ショック”を受けて下げ足を速め、日経平均株価は前日比220円以上も下落して取引を終えた。
東芝は発表を延期した理由について、現在問題となっている米原発子会社ウェスチングハウス(WH)によるCB&Iストーン&ウェブスター(S&W)買収に伴う取得価格配分手続きの過程において内部統制の不備を示唆する内部通報があり、監査委員会がその内容について事実関係の調査を行った結果、さらなる調査が必要となったため、監査法人のレビューができなくなったと説明している。
7000億円を超えるとみられる損失を発生させた問題だけに、細心の注意を払ってすべての事実関係を明らかにした上でなければ、東芝は決算の公表に踏み切るべきでない。これまで隠蔽された事実をはっきりと開示する義務がある。その点では、決算発表を延期しても事実解明を進めるのは、至極当然のことだ。
東芝の監査法人は、世界的な監査法人であるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のメンバーファームである「PwCあらた監査法人」。東芝は15年に粉飾決算が発覚し、16年3月期を最後に監査法人を新日本監査法人からPwCあらたに変更した。新日本では、東芝の事件の責任を取って当時の英(はなぶさ)公一理事長が引責辞任をしている。それだけに、トヨタ自動車やソニーなど日本の代表的な大手企業の監査を行っているPwCあらたの、東芝に関する監査の責任は重い。
■PwCあらた、誕生の経緯
実はPwCあらたも“脛に傷”を持っている。あらたの前身は旧中央青山監査法人で、これは2000年に旧中央監査法人と旧青山監査法人が合併して発足した。この合併の契機になったのが、旧中央が担当していた、山一証券や足利銀行、ヤオハンといったバブル当時の損失を粉飾決算していた企業の監査だった。旧中央は単独での経営が難しくなり、旧青山との合併に追い込まれた。
その旧中央青山も、05年に「カネボウの粉飾決算事件」を引き起こす。当時のカネボウ担当の公認会計士が、同社に対して粉飾を指南していた。さらに、翌06年には当時のライブドアマーケティングの粉飾決算時に監査を担当。度重なる問題を受け、金融庁は旧中央青山に対して2カ月の監査業務停止処分を出した。
このとき、旧中央青山はPwCのメンバーファームだったが、旧中央青山の監査業務停止処分を契機に、そのPwCが旧中央青山の監査先企業の受入先として設立したのが、現在のPwCあらたなのだ。つまり、PwCあらたは粉飾決算事件の後始末のようなかたちで誕生した監査法人だ。
16年に“火中の栗を拾う”かたちで東芝の監査を引き受けたPwCあらたにとって、絶対に監査上の問題が発生することは許されない。それだけにPwCあらたは慎重に監査を行っていくことだろう。果たして、1カ月の延長で東芝は決算発表ができるのだろうか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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