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低金利で保険料が大幅UP、支払い総額が保険金額を上回る例も
http://diamond.jp/articles/-/117587
2017年2月13日 週刊ダイヤモンド編集部
日本銀行によるマイナス金利政策の導入など、長引く長期金利の低下を反映して、今年4月から標準利率が大幅に引き下げられる。その結果、貯蓄性の高い終身保険や学資保険、年金保険などを中心に、保険料の大幅値上げとなるが、そこには各社各様の販売戦略が透けて見える。(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)
「支払った保険料の総額が、保険金額を超えるなんて、もう終身保険とはいえないよね……」。ある生命保険会社の幹部は、こう嘆く。
それも無理はない。通常、終身保険といえば、支払う保険料よりも大きな保障(保険金)が得られるもの。だが今、生保業界では、そうした常識が覆るような事態が起こっているのだ。理由は、かつてない低金利にある──。
今年4月、長引く低金利を反映して、平準払い商品の「標準利率」が、1.00%から0.25%に引き下げられる。標準利率とは、将来の保険金支払いに備えてためる責任準備金を計算する際の利回りのことで、10年物国債の過去3年の金利などを基に決められる。
つまり、標準利率が下がるということは、契約者が支払った保険料のうち、責任準備金に回す資金を増やさねばならないということだ。保険料の中には、責任準備金以外に、生保のもうけや販売手数料などの事業費が含まれている。これらを削る余力がなければ、保険料を計算する際に使用する「予定利率」を引き下げて、保険料を値上げするしか手はない。
影響が大きいのが、保障が一生涯続く終身保険や、学資保険、年金保険といった貯蓄型の保険だ。
無論、保険料を値上げすれば、新契約の獲得に響くことは言うまでもない。ましてや、保険ショップに代表される乗り合い代理店の拡大などによって、保険商品はすぐさま比較される時代だ。そのため生保各社は、他社の動向に敏感にならざるを得ない。
そうした中、生保各社が新たに設定した予定利率が、徐々に明らかになってきた。それをまとめたものが、下の表だ。これは2月6日時点のものであり、全てを網羅しているとはいえないが、大まかな方向性は見て取れる。
■保険金額を上回る保険料も出現
貯蓄型保険の限界
現行の予定利率は、1.15〜1.50%の範囲にあるが、新しい予定利率は、0.20〜0.85%と大幅に引き下げられている。ここでのポイントは大きく二つある。
一つ目のポイントは、先述した通り、予定利率の引き下げによって、保険料がどれくらい値上げされるかという点だ。先の表の終身保険の比較を見ていただきたい。
最も予定利率が低いのが日本生命保険の0.40%で、最も高いのが、東京海上日動あんしん生命保険の0.75%。事業費を削ったり、商品改定を組み合わせていたりするため一概には言えないが、あんしん生命の値上げ率は20.0%と、他社よりも低めの水準だ。
もっとも、最安なのは、保険料の安さに定評のあるオリックス生命保険。あんしん生命より要介護時の支払い要件が厳しいなど保障の違いはあるが、値上げ率は18.2%と断トツに低い。
一方、群を抜いて値上げ率が高いのが、メットライフ生命の58.8%だ。保険料は、9340円から1万4830円へと5490円もアップし、支払総額では約200万円もの大幅増。500万円の保障を買うのに、約534万円を支払うといういびつな保険料体系に姿を変えることになる。
この保険は「つづけトク終身」という別名で知られており、2015年度の新契約件数が10万件を超える同社の看板商品。それだけに、「売る気がないのか……」と各生保がいぶかしむほどだ。
本来ならば、徐々に改定を重ね、今回の標準利率の引き下げに備えるはずだが、旧アリコジャパンを米メットライフが買収して以降の混乱がいまだ尾を引き、「そうしたことに経営陣が気付いていない」(メットライフ幹部)という。
もっとも、メットライフはこれを機に、運用が苦しく魅力に乏しい円建て商品から、外貨建て商品にシフトしたいという狙いもある。これが、二つ目のポイントだ。
各生保の改定後の予定利率の差には“意図”があり、したたかな販売戦略が込められている。
例えば、日本生命は、学資保険の予定利率を0.85%と高い水準にとどめ、終身保険や医療保障などは同0.40%に引き下げている。これは、比較的販売しやすく、“ドアノック商品”と呼ばれる学資保険を突破口にして営業をかけ、その後に販売する終身保険や医療保障などで収益を確保する、というものだ。
無論、保険料は販売戦略の要であり、何ら問題はない。だが、ここまで予定利率が下がると、貯蓄型保険としては限界に近い。かといって外貨建てには為替リスクがあるため、万人向けではない。
改定前に駆け込むのもありだが、死亡率の低下を受けて、早ければ18年春に標準生命表の改定も予定されており、また保険料の改定が起こり得る。これまで以上に慎重になるべきだろう。
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