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不正会計問題について謝罪する、東芝の田中久雄社長(中央)、室町正志会長(左)、前田恵造副社長(右、2015年7月21日撮影、肩書はいずれも当時)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI〔AFPBB News〕
東芝をここまで転落させた“金太郎飴”経営陣 巨額損失の突如発覚で解体へ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49053
2017.2.1 湯之上 隆 JBpress
東芝の原子力事業が7000億円規模の損失を出すことが明らかになった。東芝の2017年3月期の決算は1450億円の黒字の見通しだったが、数千億円の減損損失で赤字に転落し自己資本(2016年9月時点で3632億円)も吹き飛んでしまう。つまり、このまま行くと債務超過に陥り、経営破綻の危機に瀕することになる。
そこで東芝は2月27日の取締役会で、NANDフラッシュメモリー(以下「NAND」)を主力とするメモリ事業を分社化して新会社を設立し、その株(20%弱)を売却した売却益(2000〜3000億円)で債務超過を回避する方針を可決した。
東芝には、「エネルギーシステムソリューション社」「インフラシステムソリューション社」「ストレージ&デバイスソリューション社」「インダストリアルICTソリューション社」の4つの事業部がある。原子力を含む「エネルギー」は今回発覚したように大赤字であり、公共事業性の強い「インフラ」は成長性がない。また「ICTソリューション」は事業が小さすぎる。したがって、分社化して外部資本を注入するとしたら、「ストレージ」しかない。
その「ストレージ」の中には、HDDと半導体があり、半導体の中には、NANDの他にイメージセンサ、システムLSI、個別半導体(ディスクリート)等がある。今回、分社化するのは、「ストレージ」全体ではなく、「半導体」でもなく、「NANDを主体とするメモリ」だけだった。これは、東芝および「ストレージ」の中で「金のなる木」はNAND事業しかなく、外部資本が興味を示すのはNAND事業しかないため、ある意味、当然の決断だったと言える。
しかし逆に言えば、NAND事業を分社化した東芝には、「金のなる木」はほとんどなくなり、「赤字のなる木」だけが残ったとも言える。したがって、NAND事業を分社化して、その株の売却益で一時的に債務超過を回避できたとしても、今後東芝が存続できるかどうかは、はなはだ疑問である。よって1年後には“東芝”という社名の総合電機メーカーは、消滅しているかもしれない。
しかし、それにしても理解できないのは、原子力事業で7000億円規模の巨額損失が突如、発覚したことである。東芝は、損失の規模とその経緯などの詳細は2月中旬に発表するとしているが、今回はこのような巨額損失が生み出された背景事情について考察を試みたい。さらに、東芝本体は分社化したNAND事業の新会社に介入しようとしている気配があるが、それは決してするべきではないということを最後に論じる。
■ババを掴まされた東芝
東芝の原子力事業の巨額損失が発覚するまで
まず、原子力事業で7000億円規模の巨額損失が生じた経緯を、上の図を用いて説明しよう。ことの発端は、2006年に西田厚聰社長(当時)が、米原子力大手「ウエスチングハウス」(WH)を約6000億円で買収したことに遡る。
このWH等による原子力事業の工期の問題が粉飾会計の温床となり、それが2015年4月に発覚した。粉飾正会計は、PC、テレビ、半導体にも拡大しており、同年7月、当時相談役だった西田氏を含む東芝の歴代3社長が辞任に追い込まれた。
同年10月、東芝傘下のWHが、米エンジニアリング大手「シカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン」(CB&I)から米原子力サービス会社「ストーン・アンド・ウェブスター」(S&W)を「0円」で買収した。WHとCB&Iは、2008年に契約を結び、共同で原発を4基建設していたが、仕様や納期の変更を巡って企業間で係争になっていた。そこで、WHは、CB&Iの子会社のS&Wを傘下に収めることにより、この係争を収めようとしたようだ。
ところが、買収したS&Wが今回の巨額損失の火種になった。
S&Wの当初の「のれん(資産価値)」は105億円と試算されていた。しかし、2016年12月にWHがS&Wの資産価値を再評価したところ、数千億円もの巨額損失が出ることが明らかになり、現時点では損失額が7000億円規模となった。つまり、7000億円もの負債を抱えていたS&Wを、CB&IからWHが「0円」で買ってしまったわけだ。
原因としては、(1)WHがCB&Iに騙された、(2)WHが負債を隠していた、(3)東芝(の誰かが)負債を隠していたなどの可能性が考えられる。いずれにしても、東芝は、ババを掴まされたことになる。タダほど高いものはなかったのだ。
■なぜ今まで分からなかったのか?
問題は、なぜ、7000億円もの巨額損失が突如、発覚したかということである。
東芝は、2015年に粉飾会計が明らかになったときも、WHの「のれん」に関する減損をなかなか発表しなかった。ところが日経ビジネス(2015年11月12日)にすっぱ抜かれたために、やむを得ず2015年11月17日にWHの減損3500億円を認め、2016年3月期に約2600億円の損失を計上した。
過去のこのような経緯を考えると、今回の巨額損失も、関係するどこかの部署の誰かが何かを隠していたとしか思えない。それが隠し切れなくなって、明るみに出た結果、大騒動になった、というように見える。
そして、東芝には、粉飾会計で痛い目に遭ったにもかかわらず、依然として「負の情報を隠す風土がある」のではないか。
2008年〜2015年にかけてエネルギー、テレビ、PC、半導体で行われていた粉飾会計では、上司から達成不可能な目標を「チャレンジ」の掛け声とともに命令され、通常の方法では実現できないために、様々な非合法的な方法で「チャレンジ」を実現しようとして、粉飾がなされた。
このとき、「チャレンジ」の命令のもとに行われた粉飾会計の背景には、東芝には「上司に逆らうことができない風土がある」ことが指摘された。
現在の東芝には、かつての「チャレンジ」のような無茶な命令はなくなったかもしれないが、「「上司に逆らうことができない風土」は依然として蔓延しており、「(赤字のような)負の情報を報告すると上司につるし上げられる」ために、「負の情報を隠す風土」が醸成されているのではないか。
■志賀会長は敵前逃亡するな
東芝のホームページをみると、取締役が4人、社外取締役が5人、合計9人いる。また執行役としては、代表執行役社長1人、代表執行役会長1人、代表執行役副社長2人、代表執行役専務2人、代表役専務3人、執行役上席常務11人、執行役常務14人、合計34人もいる。
9人の取締役と34人の執行役がいて、原子力事業で7000億円規模の損失が出るという大不祥事が、本当に、12月末まで分からなかったのか? だとしたら、全員、経営の責任を果たしておらず、経営幹部でいる意味はまるでない。これまでの役員報酬を2年前まで遡って一括返済し、全員、辞めてもらいたい。当然、退職金などは、びた一文ももらう権利はない。
ただし、辞める前に落とし前はつけてもらいたい。NAND事業を分社化し、新会社を立ち上げ、その株の売却益で東芝の債務超過を回避させる。ここまでは、きっちりと仕事をするべきである。
また、東芝の原子力部門を統括しており、一時はWHの社長を務めていた志賀重範会長が辞任すると報じられているが、志賀会長の責任は極めて重大だ。WHを含めた原子力の責任者がこのタイミングで辞任するというのは、敵前逃亡に等しい。今、辞任を認めてはならない。責任者としてこの後始末をきちんと行い、説明責任を果たし、その上で辞めていただきたい。当然、退職金はゼロだ。
■東芝の社長は金太郎飴か
東芝の綱川智社長は、1月27日の記者会見で「原子力をエネルギー事業の中で最注力としてきたが、この位置づけを変えていく」と説明したが、「今さら何を言っているんだ」と思う。
2005年に社長に就任した西田厚聰氏が、「原子力と半導体」を東芝の基幹事業とする方針を打ち出した。そして、2006年には、米WHを6000憶円で買収した。集中と選択により、「原子力と半導体」を基幹事業とする。この経営方針に問題はない。
ところが、2011年3月11日に東日本大震災が起き、福島原発が大事故を起こした。その結果、日本だけでなく、世界の原発推進ムードは一気にしぼんでいった。にもかかわらず、東芝は、現時点に至るまで、「2030年までに原発を65基新設する」という方針を一切変更していない。これは、常識的にいって、理解しがたいことである。
外的環境は常に変化し続ける。経営とは、その変化に対応して、自社が生き残ることができるように、戦略を決め、それを実行させることである。なぜ、東芝は、福島原発事故が起きても、「原発65基新設」の目標を変えようとしないのか?
よほど東芝の経営陣は頭が悪いのかとも思うが、原因は違うところにありそうだ。そもそも、原子力事業を東芝の基幹事業にするということは、15代社長の西田氏が決定したことである。それが、16代社長の佐々木則夫氏、17代社長の田中久雄氏、18代社長の室町正志氏に引き継がれ、そして、19代社長の綱川氏もその方針を踏襲したということだ。
なぜ、歴代社長がまるで金太郎飴のように、時代にそぐわない「原発65基新設」の目標を、経営方針に掲げ続けてきたのか? それは、本来なら会社の経営方針を決める権限を持つはずの社長にその権限がなく、社長の上に、会長や相談役などのお目付け役がわんさおり、彼らが経営方針に介入してくるからではないか。
実際、綱川社長の上には、原子力を統括している志賀会長がいる。この状況で綱川社長は、志賀会長を差し置いて「原発65基新設の目標は改めましょう」とは言えないだろう。
また、2015年に粉飾会計が発覚した頃は、13代社長の西室泰三氏が、浜松町の本社に重役室を持って「スーパーリーダー」として君臨していた。そして、田中、佐々木、西田の歴代3社長が退任した後の社長を室町氏に指名したのは、西室氏である。つまり、代表権も何もない肩書は相談役の西室氏が、社長の人事権を握っていたということである。
現在、西室氏のようなスーパーリーダーはいないかもしれないが、社長の経営方針に介入してくる相談役は、まだ多数いるのではないか。また、相談役が在籍している限り、社長が彼らの目を気にして、思い切った経営判断ができない可能性もある。東芝が今回の難局を乗り切るには、まず第一に、社長が本来持っているべき権限を行使できるようにする必要がある(嗚呼、なんて程度の低い幼稚な提言なんだ!)。
■東芝はNAND事業に介入するな
筆者は、東芝の粉飾会計が発覚した頃から、NAND事業は分社化して外部の出資をあおぐべきだと主張してきた。というのは、NANDが競争力を維持・向上するには、巨額投資を継続しなければならない。ところが、東芝内部には、今回明らかになった原子力事業を始め、赤字体質の事業が多数ある。その結果、NANDが稼いだキャッシュを赤字部門が食いつぶしてしまう可能性が高い。今回は、まさにそれが現実になったわけだ。これは、NAND事業にとって、極めて不幸なことと言わざるを得ない。だから、今回のNAND事業の分社化は、本来そうあるべきだったことが、やっと叶ったということである。
ただし、心配なこともある。NAND事業を分社化しても、東芝本体がその新会社に介入しようとする気配が窺えることである。
まず、東芝は、新会社の株は20%未満しか売却しないと言っている。新会社を東芝傘下に置いてコントロールしたいという思惑があるように思われる。
さらに気になるのは、ストレージ&デバイスソリューション社の「半導体研究開発センター」は分社化の対象には含めないと言っていることだ。
そもそも、研究開発部門と生産部門との間には“壁”がある。日本企業の中の典型的なヒエラルキーとして、研究所は開発センターより上位にあり、開発センターは工場より上位にある、という思想がある。このようなヒエラルキーは、仕事を進める上で大きな軋轢となり摩擦を生じさせる。
同じ会社の中でも、このような軋轢や摩擦があるにもかかわらず、東芝の場合は、研究開発センターとNAND事業(つまり工場)が別会社になる。その結果、軋轢や摩擦は、より一層大きくなり、“壁”が高くなるのは明らかだ。
なぜ、こんな非効率なことを行うのか理解に苦しむ。想像するに、「研究開発センターが工場より上位に位置する」というヒエラルキーを意図的に意識し、「研究開発結果がなければNANDが生産できないだろう」という考えで、NAND事業の新会社の経営に介入し、コントロールしたい思惑があるのかもしれない。
東芝は、半導体研究開発センターを含めてNAND事業を分社化するべきである。そして、新会社は独立し、東芝がその経営に介入するべきではないと考える。
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